日本教科教育学会誌
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16 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 菊地 るみ子, 山石 健次, 影山 みか, 舟橋 久子
    原稿種別: 本文
    1994 年16 巻4 号 p. 127-132
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本報では,小学校から高等学校までの家庭科教育において,障害者や障害に関する記述内容の現状分析と10年前との比較検討を,教科書と学習指導要領ならびに指導書,指導要領解説について行った。その結果,小・中学校の家庭科に関する学習指導要領,指導書においては,1977年と1989年改訂時ともに障害者に対する記述がなかった。また,現行の教科書でも障害者に関する記述は,ほとんど見られなかった。高等学校の現行教科書では,13冊中4冊が障害者や障害について「積極的」に記載しており,採択数からみると半数の教科書が積極的な位置づけをしている。これを10年前の教科書と比べると,障害者問題に対する取り組みは,格段に進歩した様子が窺えた。しかし,高等学校の学習指導要領や指導要領解説は,1978年改訂時とほぼ同様であり,障害者問題での取り組みの遅れが認められた。
  • 多々納 道子
    原稿種別: 本文
    1994 年16 巻4 号 p. 133-142
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本報では,家庭科を担当していない教員の指導実態と意識を調査し,家庭科指導上の問題点を論じた。結果として,次のようなことが明らかになった。5,6年の学級担任の中で,家庭科を担当している男子教員は極めて少数であった。これまでに,家庭科を担当したことのある男子教員は,わずかであった。したがって,家庭科の担当には,性別役割意識が強く働いていた。かなり多くの教員が,今後家庭科は担任教員あるいは専科教員によって担当されるのが望ましいと考えていた。男子教員は被服領域を指導しにくいとし,家族と住居はむしろ指導しやすいとしていた。家庭科を担当していない男子教員においても,家庭科の教育的価値を理解していた。今後の家庭科担当の希望は,伝統的な性別役割意識を持つ教員と民主的な役割意識を持つものとの間で有意差が認められた。
  • 松本 伸示
    原稿種別: 本文
    1994 年16 巻4 号 p. 143-153
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,教師の理科教育観を解明する1つの方法として階層分析法AHPを取り上げ実践した結果について報告するものである。 AHPはシステム工学の領域で研究が進められ,システマティックにファジイ状況下での意志決定を支援する方法として注目を集めている。本研究では理科教育観を理科教育を決定する様々な要因間のプライオリティーの総和と捉え,要因相互の階層構造を1つのシステムと見なし,AHPを適用した理科教育観解析法を開発した。そして,この方法を使って教員養成系学生と小学校教師について理科教育観を解析し,その特徴を明らかにするとともに,理科の教員養成にそれらのデータを活用した実践を行った。
  • 松岡 重信, 山下 理子, 沖原 謙
    原稿種別: 本文
    1994 年16 巻4 号 p. 155-163
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    先報(1991)では,『生涯スポーツ』概念の形成課程を吟味することと,その概念の実質的イメージについて検討した。そして,それらの作業に基づいて,生涯スポーツ概念と学校体育の機能との関係を問題にした。議論の結果,生涯スポーツや生涯体育の概念が活発に議論されて学校の機能・役割との関係も議論された割合には生涯スポーツの実態もイメージも余り明確でなく,従って両者の関係も曖昧モコとしていることが明らかになった。そして,生涯スポーツ運動に連動する形で,中等教育学校で<習熟度別授業>や<選択制履修授業(以下「選択制」と略す)>を積極的に位置づけようとする働きが,理論的にも実質的にも相当不可解なものと理解された。さらに,こうした実態もイメージも不明確な状況でありながら,それでいて体育の教科内容や教科課程にかかわる問題意識は一般にさほど高くない。少なくとも,日本体育学会や日本教科教育学会でみる限り,こうした学校内外の体育・スポーツの将来構想にかかわる問題意識をもつテーマは,一部シンポジウム等を除けば最近の5年間ほとんど設定されていない事実も認められる。そこで,生涯スポーツに関連させようとする学校体育の趨勢,即ち代表的には選択制の導入等は今日的に,かつ将来的にはいかなる意味をもち,学校教育にどのような影響をおよぼすかについて,改めて予測的に検討したい。その際,スポーツや運動は,<国民的教養>あるいは<国民的権利>とさえ把握されようとしてきた思想や社会的運動そして歴史・伝統に,学校体育が現実にどうかかわっていけるのかという視点を軸としたい。
  • 山崎 貞登, 新原 浩一郎, 遠矢 守
    原稿種別: 本文
    1994 年16 巻4 号 p. 165-171
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,鹿児島県内における中学生のニワトリイメージ描画力の実態を明らかにするとともに,自宅におけるニワトリ飼育・飼養経験や生産物の活用に関する認識とは独自性が強いことを明らかにすることである。県内5中学校の1〜3年生総計482名(男子292名,女子190名)を研究対象とした。対象者にはニワトリのイメージ描画を5分間課した。課題終了後,研究対象者の自宅におけるニワトリの飼育経験や飼養経験とともに,ニワトリの卵や肉に対する食概念,養鶏生産に対する概念との関連を調査するために,対象者に質問紙の記入を求めた。本研究の主な結果を以下に示す。(1)描画課題の分析結果対象者の多くは「鶏冠」「くちばし」「足数」を正しく描いたが,「爪」「腿」の正答は低率であった。大半の生徒は,「バランス」のとれたニワトリを描くことができなかった。(2)因子分析の結果ニワトリのイメージ描画得点と,ニワトリの卵や肉に対する食概念,養鶏生産に対する概念とは,別因子として抽出され,相互の独自性が明らかになった。
  • 福富 和博, 木村 正治
    原稿種別: 本文
    1994 年16 巻4 号 p. 173-184
    発行日: 1994/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    エイズは,今や社会問題であり,中学生にとっても無関心ではいられない事態になりつつある。そこで,中学生のエイズの知識及びHIV感染者に対する意識の実態を明らかにすると共に,その実態を元に授業を実践することで,中学校のエイズに関する指導の目標は何におくべきか,および授業実践はどうあるべきかを検討し,エイズに関する授業実践の有効性について評価することを目標とした。エイズ教育の課題を「エイズ感染予防」「HIV感染者との共生」と捉え,中学2年生を対象に3コマの授業実践をした。授業の効果をみるために,対象である2年生を授業実践を行うグループと,授業を行わないグループに分けた。両グループともに文化祭で他学年が演じたエイズ差別に関する劇を観賞させた。授業の実践前と実践後のエイズに関する知識や意識の調査と,授業中の学習シートおよび授業後の感想文から評価を試みた。さらに,VTRによる授業分析を行い以下の結果を得た。1.生徒は,AIDS・HIV感染者に対して偏見を持っており,その原因は偏った知識からくるところが大きい。2.中学生の感染予防教育は,セックスによる感染予防も必要であるが,血液による感染予防を主体にするのが実態に即している。3.生徒はエイズ患者・HIV感染を者を避ける傾向を示し,HIVの特性・感染経路の学習だけでその意識を変容させるのは困難である。4.共生教育では,患者・感染者の視聴覚教材により深い理解が得られ意識の変容を可能にさせる。5.中学校のエイズ教育は発達段階から,感染予防教育よりも共生教育に力点がおかれるべきである。
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