本稿の目的は今日的な算数・数学教育を通して獲得すべきNumber Sense とその在り方を明らかにすることであった。そのために,Number Sense の先行研究を批判的に考察し,結果として2点が挙げられた:Number Sense の邦訳として数感覚が用いられているが,その意味においては感覚と直観の意味が混在している点,Number Sense を捉える上で数と演算という算数・数学的な内容のみに焦点が当てられ,社会の変化による今日性からの考察が十分に為されているとは言い難い点。本稿では,Number Sense の邦訳として数直観を用いた。その後,福田(2016)の問題設定モデリングと吉川(2011)のユングのタイプモデルに基づき,数直観と数論理の往還モデルを提示した。そして,論理的思考の獲得のために数直観の獲得が必要であるだけでなく,その逆(数直観の獲得のために,論理的思考の獲得が必要であること)もまた然りであることを示唆した。