日本教科教育学会誌
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8 巻, 3-4 号
(3・4)
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 木村 温美, 田中 淳子
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 129-136
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    わが国の家庭科教育における消費者教育は如何に位置づけられているかを明らかにし,さらに今後への示唆を得る目的で,米国の家庭科における消費者教育の調査を行ない。併せてわが国との比較を行なった。その結果次の如き知見を得た。(1)米国の家庭科における消費者教育には,家庭科内の1領域型・家庭経営領域内含有型・家庭経営との1領域2分型・消費者教育主導型の4類型がみられた。(2)米国家庭科における消費者教育の到達目標は,意思決定・経済的,人間的自立・金銭管理・家庭経営などに強調点がみられるが,州により範囲・程度に相違がある。(3)到達目標の領域別日米比較では,米国は各領域に平均的に分布し,日本は家庭管理と食物領域とて80%を超える片寄りがあった。(4)到達達目標の認識領域水準をブルームの分類学に依って比較すると,米国では低水準に片寄る州,高水準まで分布する州と州により相違があった。日本の到達目標は低水準片寄り型であった。
  • 平 一弘
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 137-141
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    学問の使命はそれなりに社会に寄与しなければならない。教科教育学の大いなる目的は,教科のカリキュラムを未来に向かって編成することでもある。これからの教育の差し迫った課題は人間のための教育というより人間存在のための教育実践がその主なるテーマである。これらのために小学校理科教育が実践しなければならないその視点は,人間を含めた新しい自然観の確立である。この自然観確立のために,既存の階層的自然像に対応するフィードバックシステムの新しい自然像をここに提示した。これは自然現象の相補性といった概念に特徴ずけられ,来たるべき"Ecological Society"に対応する自然観と考えた。またこれらの理念を実践する方法論は1900年代のアメリカで台頭した"Nature-study"運動の中に存在し,これらを基に新しいカリキュラムを確立する時,低学年児童に対しては直接,間接経験の重視,高学年においてはサイクル,バランス,系列,対応といった視点で単元を構成すべきと考え,今後のその具体策をここに提示した。
  • 八木 正一, 出口 誉子, 三国 和子, 山中 文
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 143-149
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    これまでの音楽科教育においては,その具体的事実である授業をどのように構成するかという点がほとんどかえりみられなかったと考えられる。その原因は,子どもによる楽曲再表現活動=授業だと固定的にとらえられてきたこと,楽曲を歌ったり演奏したりという体験そのものが第一義であると考えられてきたことにあろう。音楽科の授業構成,指導過程構成を展望するにあたっては,(1)何を教えるべきか,(2)それらを子どもが習得できるように,どのように指導過程を組織するか,といった問題への実践的なとりくみが重要となってこよう。本稿は,楽曲を教えるという伝統的な形ではなく,ひとつの音楽的概念としての「拍子」を教えるという立場からの試案を提示したものである。「拍子」を子どもたちに獲得させるために,さまざまな教材や活動を組織する教材構成の視点から授業プランを作成した。本稿が音楽科における教育内容と客観的な授業構成を展望するうえでのひとつの糸口になればと考えている。
  • オエネイン アデデュテ モボラ
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 151-157
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    最初に科学的能力について述べると,子どもの科学的能力は次の2つの観点でとらえることができる。1):科学の内容についての能力2):科学的な行動を行う能力(科学的思考の態度)さらに,科学的概念の発達については,科学的概念は科学的知識の重要な単位としてとらえることができる。これは対象を認識していく際に大切な役割を果たすものである。科学的知識の発達は,科学者が自然現象を説明する中で科学的概念を作り変えていくことによって起こる。また,理科教授プログラムについても言及した。理科教授プログラムの発達は,最低限の科学の構造を考慮されながらピアジエ,ガニエ,オーズベル等の心理的な理論に大きく影響を受けてきた。最後に,総合的学習経験について述べる。統合的な学習経験は,生徒が科学的概念を自分のものとし,いつでも,自由に思考に使えるように助ける。そして,統合的な学習経験では,生徒の学習到達度,教師の科学的能力,教授用語の水準,理科カリキュラム教材という4つの条件について考慮することが必要である。科学概念を教授する際には,概念のタイプと内容の水準について配慮しなければならない。
  • 川上 昭吾
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 31-46
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
  • 平 一弘
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 159-164
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    大学のカリキュラムはその大学の目的とその大学の中心的学問の構造によって決定される。理科教員養成においてその学問とは理科教育学であり,その構造決定に理科教授・学習理論の歴史的変遷をここに辿った。その結果,理科教育学は科学認識論を前提に成立し,その認識論は理科教育の基礎構造的位置を占めた。1900年代の経験学習の時代においてBacon流の帰納法的認識論が,1960年代の発見学習の時代においてPopper流の演繹的認識論が,更に最近においてKuhn流のParadigm理論によって理科教育研究は決定的に支配されている。この理科教育学の層構造的特徴は理科教員養成のカリキュラム編成において,ある重要な視点を与える。すなわち科学史,科学認識論,科学基礎論といった授業課目が日本の教員養成大学でもっと重視されなければならない。これは最近の理科教育学に対する学問的疑問(理科教育学の認識論は何か)に対する回答でもある。
  • 梅野 圭史, 辻野 昭
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 165-171
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校2学年担任の女性教師(61名)とその教師の下で授業を受ける児童(2,361名)を対象に,著者らが作成した低学年児童用の態度尺度を指標として経験年数という教師のもつ条件が体育授業に対する児童の態度にどのような影響を及ぼすものかについて検討したものである。児童の態度得点は,経験年数30年頃まで漸増する傾向にあったが,それ以降では著しい得点の低下を示した。かかる傾向は,「身体活動に対するよろこび」尺度よりも「授業内容に対する評価」尺度に強く現出し,「評価」尺度においては男・女児童ともに有意な条件差が認められた。他方,項目点の場合では,技能の伸びの自覚に関わる「深い感動」項目や,子どもの理解や学習集団の組織・運用などに関わる「仲間との協力」,「男女意識」,「みんなのよろこび」の3項目に有意な条件差が認められた。以上の結果から,教師の経験年数の増加に伴なう低学年児童における態度得点の変化様相は,主として教師の教授活動の向上過程を反映したものと考えられ,とくに経験年数30年頃までの得点の上昇は,運動低位者の立場に立って児童一人ひとりを認めていく授業展開の深まりを示唆するように推察された。
  • 縫部 義憲
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 173-178
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    パーソナリティーは,外からの力によって変えることは不可能に近く,内部の力によってすら甚だ困難である。本研究においては,自己像の明確化への欲求の充足と英語による伝達能力(communicative competence)の向上との関連を理論的・実証的に明らかにする。
  • 湊 三郎, 鎌田 次男
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 179-183
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,(1)算数・数学に対する態度を測定する用具MSDからいくつかの項目を選び,Osgoodの意味における態度を測定するSD型用具を開発し,(2)これとMSD,あるいは既に開発されている簡易的測定用具MSD-Eとの間の関係を明らかにすることであった。小学校6年児童281名の被験者から得た資料を用い,因子的妥当性のもとで4項目をもつ測定用具MSD-Aを開発した。MSD-AはMSDおよびMSD-Eと高い相関があった。
  • 平 一弘, 吉岡 一男
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 185-190
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    科学はその学問における固有の構造と特質を有する。この固有の構造を無視し,また理解なくして子供の学習は成立しない。氷河期論という概念の科学史的考察から,地学分野の学習はいかにあるべきかここにあるモデルを提供した。結果として,この分野の歴史的発達は3つの知識形成の段階によって特徴づけられる。もし教材を歴史的に配列し,これらの段階を教育心理学者による学習理論の根本仮定と対比するとき,Gagneのそれは小学校低学年から高学年にかけて,Piagetのそれは小学校高学年から中学校低学年にかけて,Ausubelのそれは中学校高学年にかけて優位と考える。それ故学習理論の教育現場での利用は,その知識の構造的特質によって決定されるべきである。
  • 入江 和夫, 山本 紀久子
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 191-196
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    高等学校理科の中で,化学ぎらいは,多数いるといわれている。その原因の一つとして,内容が非体系的でわかりにくいことがあげられている。実際に教科書に書かれている有機化学実験で,反応終了の確認法は,視覚的にわかりにくく,実験結果がはっきりしないことが多い。この問題を改善するため,本研究は,有機化学実験で,容易に,視覚的に反応終了が確認できるTLCを使って授業実践を行い(実験群),教科書を参考にした授業の学級(統制群)と比較して,学習効果を調べた。結果:線結び授業分析表において,実験群は,「確かめてくれたことが」「あったので」や「確かめてくれたことが」「わかった」「満足だった」など好ましい項目で有意に多く反応した。また,自由記述法においても,実験群は「他にも応用したい」など統制群に比べ意欲的な意見が出た。この結果から,TLCを用いた授業において明らかに学習効果が高まり,教具として,TLCが充分利用できることがわかった。
  • 丹治 一義, 碇 寛, 村松 剛一, 土屋 滋
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 197-203
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    理科教育では,子どもたちに基礎的な科学的概念を無理なく理解させるために,認識上のつまづきをとりあげ,これを克服させる授業過程の研究が行われてきた。しかし,更に一歩踏み込んで,つまづきの原因となっている子どもの学力観,学習観については,かならずしも十分に研究されていない。情報化社会の子どもは,何でも実際に経験するよりも,まずそれに関する情報を集め,勉強はよい結果を得る技術と心得ているという。我々は,この視点に立って理科の授業を通して実態をとらえた。フリーカード法で,理科の教師から適切な課題を導き出し,ついで,この課題を克服させる授業を実践し,分析記録と生徒の自己評価を関連づけた。その結果,生徒は,(1)自分の観点を事象に照らして吟味する姿勢に乏しいが,(2)論理のための論理操作ができれば満足する。また,(3)自分では意味がわからなくてもモデル操作は正しくできるなど,子どもの学習観の一端が明らかになったので,報告する。
  • 八木 正一, 出口 誉子, 三国 和子, 山中 文
    原稿種別: 本文
    1983 年 8 巻 3-4 号 p. 205-210
    発行日: 1983/12/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,拍子を教育内容として教材を組織した指導過程の例を,具体的な授業プランの形で提示するものである。本プランの理論的背景については前稿(同タイトルその1)を参照いただきたい。われわれの作成したプラン「拍子のおはなし」の前半部分は,「拍のおはなし」として前稿で提示しておいた。本稿でのプランは,拍の理解をふまえて,拍子をさまざまな角度から学習するためのものである。「授業書」的方法を参考にし,プリントによって授業を進める形態をとっている。これまでの固別的,現象的な拍子の指導とは異なり,その生成過程にまでさかのぼりながら,拍子を総合的に学習させようとするものである。問題やおはなし,音楽活動を客観的に組織することによって,熱心な教師であればだれにでも実践できる授業プランをめざした。音楽科における授業や指導過程をとらえかえすうえでの一視点になればと考えている。
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