献立学習は栄養学,食品学,調理学などの知識を基礎として,嗜好性,経済性,能率,色彩,配膳形式等の多様な条件を総合していく能力が必要とされる。そのために,その学習指導は比較的困難であり,その学習内容の定着には長い年月と反復学習を要する。従って,献立学習は小学校から始められ,中学,高校と一貫して指導される。これまでに筆者らは小,中,高等学校家庭科の食物領域の指導に一貫して利用でき,その指導を容易にする教具やコンピューターソフトを開発してきた。本研究では開発したソフトを用いる献立学習指導が,献立構成能力にどのような効果をもたらすのか検討した。高校2年生女子をコンピューターを用いてソフトを直接利用する群(パソコン群),ソフトによる栄養グラフを利用し,作成した資料を使用する群(資料群)及び従来通りの教科書と成分表を利用する群(対照群)に分けて指導を行い,事前テストと事後テストによって学習指導の効果を調べた。そのテストは朝食と昼食の献立を写真で示し,それらを食べた日の夕食の献立を作成させるもので,作成された献立を7項目(栄養,季節感,味の変化,調理法の変化,色彩,配膳,組み合わせ)の観点から評価した。その結果,次のような知見が得られた。1)事前,事後テストに作成された献立を栄養の観点から比較すると,事後テストにおいてパソコン群,資料群では有意に得点が上昇し,対照群に比しても有意に高くなった。とりわけパソコン群の得点は,資料群よりも有意に高く,しかも事後テストの得点が事前テストに比べて上昇した人数は,対照群に比して有意に多いことがわかっこ。2)季節感,味の変化,調理法の変化,色彩,配膳,組み合わせの観点から評価した事後テストの得点については,本ソフトを用いる学習指導のきわだった効果はみられなかった。以上の結果から本ソフトを用いる学習指導は,栄養的にバランスのよい献立を構成する能力の養成に効果的であり,特に本ソフトを起動させたコンピューターを生徒に使用させる指導はより効果的であることが明らかになった。しかしながら,季節感や色の組み合わせなどの栄養以外の評価観点に対応することはできなかった。従ってこれを補うためには,視覚的教具の利用を付加することが効果的であることが示唆された。
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