日本教科教育学会誌
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20 巻, 2 号
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  • 森山 潤, 斉藤 道子
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    技術科教育の実践的研究を体系化するためには,これまでに行われてきた教育研究の現状を分析し,その動向を把握する必要がある。本研究では,国立教育研究所に構築されている文献情報データベースCENTERの書誌情報を用いて,技術科教育に関連する教育研究所・センター刊行論文のキーワード解析処理を行った。その結果,これらの実践研究を構成する用語の出現頻度を明らかにすると共に,学習指導要領の領域別及び研究領域別に研究の動向を把握することができた。その傾向は以下の通りである。(1)技術科教育に関連する実践研究の主要な関心は,中学校技術科の教授・学習過程にある。(2)実践研究者の考える技術科教育の学力観は,現行の学習指導要領や教育課程に限定されたものとは限らない。(3)実践研究の研究件数は,学習指導要領に基づく指導領域間で,極端な格差を生じている。(4)安全教育,思考過程,技能習熟,学習評価などに関わる実践研究は,現状では十分とはいえない。これらの結果は,技術科教育における実践研究の体系化及び文献情報システムの構築に向けた基礎的資料として有用だと思われる。
  • 中村 公子, 林 靖子
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 9-17
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    平成6年度からの高校家庭科の男女共学化に伴い,家庭科教育は小・中・高校とも性別にとらわれない教科として,家庭生活の質的向上と共生を目標とした教育に向かって歩み出した。中でも食物領域の教育内容は児童・生徒の最も興味関心の高い領域で,身近な領域となっているため,児童・生徒に効果的,着実かつ的確な教育内容を定着させる事が望ましく,そのためには如何なる視点が必要であるのかを明確にしなければならない。そこで男女共学の教育内容の定着しているアメリカの教科書を検討して,日本の教科書と比較した。日本とアメリカの教科書の特徴が明らかとなったため,家庭科の教師は日本の教科書の特徴を的確に把握して理解する必要がある。そして不十分な内容を補足しつつ,児童・生徒の発達段階ごとに必要な意義の深い内容を,広い視野に立って指導しなければならないことが結論づけられた。
  • 本村 猛能, 内桶 誠二
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 19-30
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    中学校及び高等学校における情報に関する教科では,コンピュータ実習の教育課程とその評価の問題において,特に情意面に留意した指導法が問題とされている。本研究では,中学校技術科情報技術基礎と高等学校の情報教育の領域を主な対象として,生徒における情意領域の評価を中心にした調査を行い,ファジイ分析(ファジイ測度とメンバーシップ関数)を用いた分析を行った。また同時にクラスター分析と因子分析による評価を比較検討した。その結果,生徒の学力向上が人間的接触・実技指導・理論的指導といった具体的な教師の教科指導力に影響されていることが判った。またファジイ分析と,クラスター分析,因子分析を併用した結果では,学力の定着と意欲,興味・関心という情意面が教師の指導力と共に深く関係していることがより明確にされた。
  • 池崎 喜美恵
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    高等学校家庭科教科書を分析対象として,国際理解教育に関する記述内容について検討し,家庭科教育における国際理解教育について提言した。1.『高等学校学習指導要領家庭編』では,国際化社会の変化に対応する家庭科の教科観は明確には記述されていない。しかし,家族,経済面,食糧事情,住まい方などに世界へ目を向けるよう配慮されている。2.高等学校家庭科の教科書では,「国際」「世界」「地球」などのキーワードや国名が多く掲載されている教科書もあるが,概して質的にも量的にも国際化に対する記述は不足している。3.世界の衣・食・住生活に関する学習は,児童・生徒にとって各国の生活史や生活文化について理解を深め,自国の生活文化の見直しにもつながる。外国との関わりに関心をもたせたり,グローバルな視座にたって指導していくことは,今後の家庭科教育の方向性を示すことになる。4.新鮮な外国の事情や生活の有り様などの情報を与えてくれるのが帰国子女であり,帰国子女が体得した国際性を生かしていく努力と特性の活用こそが,家庭科教育における国際理解教育の端緒といえる。
  • 野村 幸治, 中山 裕一郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    80年代から90年代にかけて中国の学校教育は大きな変化を遂げた。芸術教育の面でも,1986年に美育が国家の教育方針の中に正式に位置づくことにより音楽教育を含む芸術教科が教育全体の中に重要な意味を持つようになる。本論文は,80年代から現在に至る中国の音楽教育をめぐる教育全体の動向を踏まえながら,音楽教科書(小学校)の分析を中心に中国の音楽教育の現在について考察を試みたものである。資料は論文及び最新の音楽教科書そして日本の「学習指導要領」に相当する「教学大綱」などである。音楽教科書に見られる特徴としては次のような点が挙げられるだろう。(1)社会主義賛美を謳った政治的内容を持つ教材は相変わらず多い。しかし,教材自体の芸術性自体についても重視する方向性が生まれている。(2)民族音楽の学習(とくに少数民族の音楽)を基礎に,アジア圏,さらにヨーロッパなど世界各地の音楽へ同心円的に学習内容を広げ,子どもたちが多様な音楽文化に触れられるよう工夫されている。(3)遊びの要素や即興性を楽しむ教材・学習活動が増えている。(4)踊りなど,身体の動きを伴った音楽的活動がふんだんに取り入れられている。これらから,社会主義体制の堅持をはかりつつ,美的教育を重視し,音楽学習と生活的なものとの接点を足場に,包括的に音楽学習を捉えようとする中国の音楽教育に対する基本的姿勢が理解される。政治形態も異なり,「型」から入った内容のものもある。しかし,特徴中,特に(2)(3)(4)の点については,日本の音楽教育も学ぶべき内容を多分に含んでいるのではないだろうか。
  • 中間 美砂子, 伊藤 圭子
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    技術・家庭科家庭系列(仮称)担当中学校教員のカリキュラム改善についての意見をはあくし,そのうえで,技術・家庭科(家庭系列)カリキュラムについての検討を行うこととした。調査対象は,全国の中学校技術・家庭科研究会会員家庭系列(仮称)担当者各県5名ずつ計245名である。回収数は110票で,回収率は44.9%であった。その結果,(1)教科構造については,技術科と家庭科の分離を希望する意見が24.5%みられ,その理由として,前・後期にわける履修形態,履修時間の減少などがあげられている。(2)領域の設定については,選択制を廃止するという意見が,(3)家庭生活領域については,その内容を改善するという意見が,(4)技能の育成については,時間数不足を指摘する意見が多くみられ,これらのことが,(5)小・中・高の一貫性を妨げる原因となっていることが明らかとなった。
  • 小西 史子
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    献立学習は栄養学,食品学,調理学などの知識を基礎として,嗜好性,経済性,能率,色彩,配膳形式等の多様な条件を総合していく能力が必要とされる。そのために,その学習指導は比較的困難であり,その学習内容の定着には長い年月と反復学習を要する。従って,献立学習は小学校から始められ,中学,高校と一貫して指導される。これまでに筆者らは小,中,高等学校家庭科の食物領域の指導に一貫して利用でき,その指導を容易にする教具やコンピューターソフトを開発してきた。本研究では開発したソフトを用いる献立学習指導が,献立構成能力にどのような効果をもたらすのか検討した。高校2年生女子をコンピューターを用いてソフトを直接利用する群(パソコン群),ソフトによる栄養グラフを利用し,作成した資料を使用する群(資料群)及び従来通りの教科書と成分表を利用する群(対照群)に分けて指導を行い,事前テストと事後テストによって学習指導の効果を調べた。そのテストは朝食と昼食の献立を写真で示し,それらを食べた日の夕食の献立を作成させるもので,作成された献立を7項目(栄養,季節感,味の変化,調理法の変化,色彩,配膳,組み合わせ)の観点から評価した。その結果,次のような知見が得られた。1)事前,事後テストに作成された献立を栄養の観点から比較すると,事後テストにおいてパソコン群,資料群では有意に得点が上昇し,対照群に比しても有意に高くなった。とりわけパソコン群の得点は,資料群よりも有意に高く,しかも事後テストの得点が事前テストに比べて上昇した人数は,対照群に比して有意に多いことがわかっこ。2)季節感,味の変化,調理法の変化,色彩,配膳,組み合わせの観点から評価した事後テストの得点については,本ソフトを用いる学習指導のきわだった効果はみられなかった。以上の結果から本ソフトを用いる学習指導は,栄養的にバランスのよい献立を構成する能力の養成に効果的であり,特に本ソフトを起動させたコンピューターを生徒に使用させる指導はより効果的であることが明らかになった。しかしながら,季節感や色の組み合わせなどの栄養以外の評価観点に対応することはできなかった。従ってこれを補うためには,視覚的教具の利用を付加することが効果的であることが示唆された。
  • 多ゝ納 道子, 西野 祥子
    原稿種別: 本文
    1997 年 20 巻 2 号 p. 65-79
    発行日: 1997/09/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本報では,現在小・中規模校が大部分を占め,将来的にはさらに学校規模の縮小が予測される島根県における技術・家庭科の実態と担当教員の家庭科観を明らかにし,さらに男女共学の履修方法をすすめるための課題を把握することを目的としている。調査結果として,次のようなことが明らかになっている。依然として,島根県では技術・家庭科の担当教員は無免許者が多く,特にその傾向は小規模校の教員に顕著にみられる。大部分の男女生徒は,家庭生活,食物,木材加工,電気および情報基礎の領域を共に学習している。大部分の技術・家庭科教員は,男女共学の履修方法において男女生徒達が熱心に学習していることを認めている。さらに,技術・家庭科の男女共学を定着させるには,施設・設備の改善や小規模校においても免許所有者が担当するということが求められる。
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