日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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2 巻, 1-2 号
(1・2)
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 森 一夫
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 1-6
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    本報の目的は,子どもの生命観の発達段階を明らかにして,理科指導計画の設計への視点に役立てようとする点にある。子どもは,まず擬人化的生命観に始まって生気論的生命観,そして機械論的生命観を経てシステム的生命観に至ることがわかってきた。本研究で明らかにされた生命観の発達過程が,指導計画を設計する上での一種の"ものさし"として機能することを期待するものである。
  • 井口 尚之
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 7-13
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    幼児期から小学校低学年にかけて,急速に語彙は広がってくるのであるが,今日のように子どもの育つ環境条件が変化してきたとき,習得語彙に片寄りか起こっているのではないだろうかと考えた。それを見るための基本語彙は現在どのようになっているかについて考察した。とくに,自然の事物・現象について,認識を深めていく語彙についてみると,すでにまとめられたものに,いくつかの問題点が存在することを見いだした。それについて考えをのべた。
  • 丹下 一郎
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 15-24
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    人は身体を有する知・情・意の統合体である。その統合体を人格とよぶ。言語はその人格の表象であり,言語活動とは人格の表現または人と人との間の意思疎通としてのそれら表象の操作である。言語能力とは表象としての言語記号を操作できる能力を意味する。この言語能力の本質は,母国語の場合も外国語の場合も同じである。従って外国語としての英語を教科として教授し学習する目標の1つは,表象としての英語を操作できる能力の基礎を養うことである。それを実現する方法のうち本稿では2つのみとりあげる。1つは質問の技術により生徒の知的思考力を刺激し発展させること。他は劇的表現を通して生徒の知的要素と感情的要素を体験的に言語技能と結びつけることである。しかし,どのような方法も修練に堪えぬく意識的努力なしには効果は望めない。従って持久力は外国語としての英語を学ぶ日本人にとって英語能力の欠くべからざる1部をなすと言えよう。
  • 長澤 武
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 25-31
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    現代の日本においても,教育は重要な社会問題の1つである。それは内容,方法,制度などの多くの分野におよびさまざまな側面を持っているが,とりわけ内容については大きな関心がよせられている。このような情勢の中で現在とりくまれているものの1つに総合的なカリキュラムの開発がある。理科の教育内容の総合化についても,これまでさまざまな角度からこころみられてきているが,いずれも流動する社会と教育とのかかわりについて考慮されておらず,成功したとはいえない。この研究は,人間の存在というところに常に立ちかえりながら,自然と人間とのかかわりを理解するための教育活動を構成しようとするものである。留意した点は次の2つである。(1)社会科学と自然科学の境界領域の教材化(2)生徒の主体的学習の場の構成と授業方法の改革
  • 樋口 大良
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 33-40
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    子どもたちが,"わかった"というのは,どういう状態の時かを調べるために抽出児(N君)にワイヤレスマイクを取り付け,授業中に何を考え,何をし,だれとかかわったかを記録した。それを整理していくうちに,次のようなことがわかってきた。1.子どもたちは,学習して得たものを,映像として記録する。2.何かを質問された時は,頭の中に映像を思いうかべて,その映像と比較して判断する。3.従って,映像を詳しく覚えておればおるほど,ていねいな説明ができる。だから,理解の深さと,映像の細かさは,同じことを意味すると思われる。4.映像の細かさは,学習中,何人かの仲間とかかわりあう中で作られていく。本稿は,このうちの1,2,3について報告する。
  • 佐伯 卓也
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 41-46
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    算数・数学への態度についての研究が必要とされているにもかかわらず,我が国の現状ではその研究は貧弱であるといわざるを得ない。諸外国とりわけアメリカでは1950年頃からこの研究にとりくまれ,1970年代に入り活発化している。これら諸先行研究の一応のレビューを試み,研究例として筆者の得た,メーキャップ問題テストに敏感なSD尺度の研究例を示し,さらに今後の算数・数学への態度の研究のための手がかりを論ずる。
  • 松本 勝信
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 47-53
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    本研究は児童生徒の自然認識の解析をとおして,理科教育の具備すべき条件を明らかにしようとする研究の一部を担うものである。本実験は男子大学生6人を被験者とし,対象認知時の経験の想起・記述・説明の各段階における眼球運動をEOGを用いて分析した。その結果,(1)対象認知操作に方向性のある説明の段階とその前段階である想起・記述とでは,前者に伴なう飛躍眼球運動の方が後者のそれよりも有意に高まる,(2)説明の段階においても,記述的要素の強い場面と説明的要素の強い場面とでは,後者に伴なう眼球運動の方が前者のそれよりも有意に高まる,(3)記述の段階においても,その記述の方向性の有無により飛躍眼球運動量も異なり,方向性の有る場合の方が有意に高まるの3点が得られた。これらのことから,飛躍眼球運動の出現頻度は,対象と経験との関係づけ・意味づけの度合いおよびその方向性の有無と対応するものと考えることができる。
  • 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 55-61
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,教師に射影されている子どもの学習活動の実態像をアンケート調査の手法により解明していく研究の一端を担う。これまでの研究により,子どもの学習活動の実態像をとらえる軸として五つの軸を既に抽出している。五つの軸とは,それぞれ論理,表現,行動,構成力,意欲,という軸である。今回は,これら五つの各軸に対して下位カテゴリーを設定していくための準備段階として,まず,五つの軸の相互関係を調べた。このために用いた解析手法は,数量化理論第三類であった。その結果,論理と表現,および行動と意欲がそれぞれ近い距離でクラスターを形成した。したがって,上述の五つの各軸に対して下位カテゴリーを設定していくとき,次のカテゴリーを新たに付加する必要がある。それらは,論理と表現とを包含するカテゴリー,および行動と意欲を包含するカテゴリーである。
  • 坂本 和文
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 63-70
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    運動学習における知覚-運動行動は,もし運動情報がまとまりのある系列情報として組織化されるならば,組織的運動行動へと発展するものと考えられる。本実験は,バレーボール運動の運動技術とそれらに関わる言語教示の系列的組織化をテストするために,実際のバレーボール授業において,試験的に適用することによって行なってきた。その結果は次の通りである。1.授業における各々の生徒は,レシーブ-トス行動の系列的な順序性を獲得することによって,二方向からのレシーブ-トス-アタック行動の構成要素の組織化を比較的容易に達成することができた。この方法によれば,各々の生徒の系列行動の保持率が高く,そして運動情報の記憶量が増大するということが言える。2.一方,どの生徒もレシーブ-トス行動の系列的な順序性を十分獲得できないような場合においては,学生は二方向からのレシーブ-トス-アタック行動を容易に遂行することができなかった。しかし,二方向からのレシーブ-トス-アタック行動は,もしボールがネットの近くへトスされ,しかもさらにトスされたボールがネットより高いならば,成功的に遂行されるということか明らかになった。
  • 和田 敏一
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 71-76
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    抽象と具象との深いかかわり合いをもつのが,教育心理学である。両者は,本来,相補的な関係にありながら,機能的には相反する力をもっている。すなわち分析と総合,没価値と価値,などの言葉で示される。したがって抽象から具象への道は,単純な一本道とは言えない。教育心理学における教育への関与は,このような理論と実践の間を,先づ,認識することから始まると言わねばならない。本小論は,教育心理学が当面している課題について,一つの理論的考察(問題提起)を試みたものである。
  • 盛政 貞人
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 77-84
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    種々の教材・教具の学習の媒体としての使用と学習効果との関係についての,数回にわたる実験授業の成績を総合的に考察して,教科書によれば,言葉が正確に,かつ,容易に記憶され,また,言葉による概念や理論の把握・記憶-記号的把握-がよくなり,スライドやOHPなどによれば,映像的な把握・記憶-映像的把握-がよくなり,実物観察によれば,具象的,実体・実態的,全体的な把握・記憶-具体的把握-がよくなり,実習によれば,操作的な把握・記憶-行動的把握-がよくなる,などの傾向が見いだされた。このように,「教材・教具-学習の媒体-がもつ情報に相応する内容や性質などが学習(あるいは,認知)され易い傾向」を,「情報の受容型学習(あるいは,認知)の優勢傾向」と呼ぶこととしている。ここに,このような研究成績について報告いたしたい。
  • 中谷 雄治, 藤川 泰之
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 85-99
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    これまで,筆者等は,理科の指導において,視聴覚機器を導入したより効果的な情報の与え方に関する研究を進めてきた。本稿に於ては,液体の微量体積の測定-管端と水滴-に関する指導の場面で,視聴覚機器の導入による適正な情報の与え方を志向する研究に於て,その研究の過程・効果などについて述べる。
  • 佐藤 一男
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 101-104
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    技術教育や理科教育の教材内容として,電気の領域があるが,電磁気に関する基礎的原理を理解し,その知識をより一層定着させる方法として,電磁力及び電磁誘導について,右ねじの規則を拡張して指導する方法を考えた。従来は,フレミングの2つの法則が用いられていたが,その適用に当って左手と右手の使い分けに混乱を生じ易い欠点がある。そこで,フレミングの2法則に代えて,右ねじの規則を使った新しい指導法を試みた。
  • 毛利 亮太郎
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 105-110
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    現行の中学校技術科における栽培分野の教育内容は,余りにも環境調節に重点をおきすぎている。私は,環境調節は単なる一つの技術であるにすぎないと考え,栽培技術の基本的なものを客観的に精選し重複をさけて,次の順序に配列することを提案した。1.栽培計画,2.生育条件と栽培の関係,3.労働手段,4.栽培方法,5.栽培と安全,6.栽培における測定,7.栽培と生活。
  • 榊 武庸
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 111-116
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    教育の実践の場である授業は,教師と子どものコミュニケーションの成立を基礎としている。したがってこの両者の間には,コミュニケートされる情報を含んだ教材というものがなければならない。そしてこの教材の組織-何をどういう順序で学習していくかということは,教育の理念並びに子どもの考え方により規定されるべきである。そこでまず,教育理念の母体となる人間における文化の役割を明らかにし人間の認識活動との関係を明らかにしなければならない。本稿は,自然を教授・学習活動の対象とし,人間の育成をはかる教育活動の立場から,子どもの自然を対象にした認識活動を母体とし,自然を統一的に理解していくための教材の組織を,水を媒介にしておこなうものである。
  • 小寺 照久
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 117-122
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    今日の美術・工芸の授業は多様であり,それぞれの特性が含まれている。基本的には,感性的な把握(感受・発想)から,本質的な把握(表現・計画・制作)へ,そして,現実的な把握(鑑賞・使用・評価)へと進められる。これが,従来の領域的な分類に固執して,絵画・デザイン・彫刻などと規定するならば,現代造形作品に見られるような,綜合的な芸術要素が要求された場合,大変苦しいものになってくる。他面で,これらのことがらを考慮において,一つの材料,技法といったものをテーゼした場合,生徒のそれに示す反応は,経験のあるもの,ないものによって大きな変化が見られる。本稿はこうした現状をふまえた上での教材研究である。
  • 村上 枝彦
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 123-132
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    Investigatng Science with ChildrenはNSTA(合衆国理科教育連合体)がNASAのもとにプロジェクトチームを作り,初等教育における理科教育の進歩のために編さんされたもので,1. Living Thing, 2. The Earth, 3. Atoms and Molecules, 4. Motion, 5. Energy in Waves, 6. Spaceの全6冊からなり,それぞれA-4版90〜100ページのものである。本論文はその即成の基本理念を紹介するとともに,特に化学と関係の深いAtoms and Moleculesにある64の単元(実験例)から各章ごとに1単元を選び,4単元について紹介する。
  • 小山 裕
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 133-135
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    Up to this time a psycho-physiological indication corresponding to a subject's cognition has been sought for. From the object which the subject is watching and the speech and behavior in which he express his feeling as the result we have drawn deduction on his cognition, and pride to follow the relation between the cognition and the psycho-physiological response. At present, in order to know the object the subject is watching, the record of the shifting visual recognition by the method of corneal reflection is in use. But this method only shows which way the eyes are looking, and it is impossible for us to find out whether he is in visual recognition or not. By our experiment, examining by the indication of EMG the tension of muscles near the eyeballs which is supposed to be caused only when he is watching some- thing, we tried to find out if there is such recognition as above mentioned. The average ampliture per second of EMG at the time of visual recognition indicated a smaller value than at the time of unvisual recognition. From the fact, however, that the amplitude at the time of unvisual recognition for the two difficult themes indicated a large value, the examination of the theme and the amplitude of EMG, etc., has come to needed.
  • 高木 佐加枝
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 137-142
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    「綜合教育」という用語は耳なれない言葉で,むしろ「合科教育」とか,「合科学習」といった方がピント来るかも知れないが,私が東京高等師範学校附属小学校に在勤した昭和4年から19年まで1年生を3回担任して研究したのは,合科教育という名称を用いず,綜合教育という名称を用いた。この理由については本論で述べたいと思う。明治の初,学校制度ができてから今日まで百余年の年月を経たが,終始一貫わが国での公教育は社会・国語・算数・理科……といった分科教育であったので,この中にあって学校教育のあるべき姿をわれわれの先輩が研究して来た合科教育なり綜合教育について究明していくことは,本学会の使命の一つであると考える。
  • 益地 勝志
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 143-148
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    子供は生まれながらにしてある知力をもち,それによって人間の一生が決まるとすると教育の力は,どれ程子供にかかわっているのだろうかということになる。幼児が,母親の歌を聞いて上手にうたう。ピアノを上手にひく,または父親が自動車好きのため自動車に関する知識を多く持っているとすると,これらのことをもって遺伝だと考えることが多い。学校で学習をすすめている教師自身もそう思い,教育の力のはかなさを感ずることがあるしかし本当に知能はそのようなものであろうか。毎日の学習をすすめたとき,授業がはじまると同時に,はやく理解する子供と,理解のおそい子供の両端に分かれるのである。このような実際場面に出会うほど,知力は教え込まなければおくれると感ずることがある。
  • 中谷 健三
    原稿種別: 本文
    1977 年2 巻1-2 号 p. 149-154
    発行日: 1977/10/31
    公開日: 2018/01/07
    ジャーナル フリー
    個性・創造性尊重の精神は,西洋近代の人間中心思想から生み出され,戦後の美術教育を支えてきた優れた根本的指導理念でもあるが,児童生徒の人間性を培い,円満な人格形成を押し進めてゆく上で,果してこの理念の重視だけで充分であるのかどうかについて,私は実践を通して疑念を抱き,改めて様々の立場から考察を加えた。その結果,私は,個性・創造性尊重の教育の長所をわきまえ,生かしつつ,新たに人類の未来を志向する観点に立って,各人が自ら生きる意味や価値を問いかけ,物事を深く思い回らしてゆけるように育てる立場や,大自然(万物)を愛し,それとの一体感を味わえるように育てる立場を,現行の美術科教育の中に導入し,結び合わせてはどうかと考え,各教材を通して実践を試みてきた。今回,それら考察結果を述べ,新たな理念及び指導方法の導入を提起するに至った理由を明らかにする。
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