日本教科教育学会誌
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36 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 宇都宮 明子
    2013 年 36 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,ドイツ歴史授業実践の分析を通して,その歴史授業実践が依拠する歴史教育論の変容を考察し,ドイツ構築主義歴史教育論を解明することを目的とする。  歴史授業実践の分析から3つの歴史教育論が明らかとなった。第1が,「個性化」を構成原理とする伝統的な歴史教育論である。第2が,「多展望性」に基づき,歴史の関与者への追体験を通して歴史解釈を考察・検証する科学的な歴史教育論である。第3が,「歴史的意味形成」に基づく構築主義歴史教育論である。  全体の考察から,ドイツにおける歴史教育論の変容は,「多展望性」の原理を仲介としており,構築主義歴史教育論が多様な史資料を関連づけて語りを再構築するものであることを結論づけている。
  • ― EPA を手がかりとして ―
    服部 一秀
    2013 年 36 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー
    本稿では, ドイツのKMK( 各州文部大臣会議) による歴史科のEPA(Einheitliche Prüfungsanforderungen in der Abiturprüfung)を取りあげ,論述課題であるアビトゥーア試験課題の構成の論理と根拠を探ることにより,同国の後期中等教育における歴史学力像について考察した。EPA では,様々な題材に応じて歴史の構成に取り組めること,史料の解釈,歴史叙述の検討,歴史叙述の形成を通して,諸領域の能力を投入して歴史の構成にあたれること,既有の認識や方法を再生・再現するだけでなく適用・応用して論じ,歴史の構成を自ら遂行できることが重んじられている。歴史授業は歴史構成の遂行機会としてとらえられ,試験課題は歴史構成の新たな遂行機会として構想され,歴史学力とは歴史構成力と考えられているといえる。
  • 鈴木 千春, 永田 智子
    2013 年 36 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー
    今次の学習指導要領の新規事項となった,小学校家庭科ガイダンスの授業に活用できるデジタル絵本教材を開発し,実践を通して有効性を検証した。ガイダンスの授業では「2学年間の学習内容を知る」ことが目標の1つになる。教材はイメージを伝達することに効果的とする絵本をデジタル化し,具体的な学習内容を動画や静止画で提示するリンクを貼りつけた構造とした。試作教材を評価修正した本教材を小学校32校で活用してもらい,教員用調査と児童用調査から考察した。教員は「説明がしやすい」「操作がしやすい」など教材の使用感について9割以上が肯定的回答をし,概ね使いやすい教材であることが示唆された。児童は家庭科の学習に興味・関心を高めると共に,「食」と「衣」に偏る傾向があった家庭科の学習イメージを広げることができたなど,学習内容の理解を促す教材として有効であることが示された。
  • 大和 祐子, 玉岡 賀津雄, 初 相娟
    2013 年 36 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,中国人日本語学習者の日本語のテキストの読みの効率性に日本語の語彙・文法能力がどのように影響するかを検討した。大学で日本語を専攻する中国人日本語学習者127名に対して,日本語の語彙テスト,文法テストおよび日本語のテキストの句を基準とする単位の自己制御読み課題を行った。まず,語彙と文法のテストの得点で日本語学習者を上位群・中位群・下位群の3グループに分けた。次に,各群のテキストのオンラインでの個々の句を中心としたまとまりの読み時間を語彙と文法の能力で分けた双方の上位・中位・下位のグループで比較した。その結果,次の3点が明らかになった。第1に,読みの迅速さには,文法能力よりも語彙能力の影響が多くの箇所で見られた。読みの迅速さに語彙能力の影響が強く影響していることがわかった。第2に,語彙能力の影響が単独で見られる句と連続して見られる句があり,後者は文の構造が複雑な箇所であった。第3に,文法能力の影響は限定的で,テキストの読みにおいて述部など文の構造が複雑な箇所や次に繋がる意味的展開の箇所で影響していることが分かった。
  • ― 「創作的読み方教授」の創造 ―
    神谷 キヨ子
    2013 年 36 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー
    大正自由教育のもと,秋田喜三郎1)は,国語教育界に新風を吹き込んだ。1910年代の国語教育界は,明治期の国漢学者の教授の系統をひく文字・語句等の「形式を重視」する派と新しい教育学者の系統の「内容を重視」する派の二潮流が存在していた。秋田は,両派の長所を止揚した「折衷主義」2)の創造に成功し,「読み方教授」の本質に立った教授法「創作的読み方教授」を1919年に樹立する3)。「創作的読み方教授」では,児童の「自学自習」を中心に据え,児童の文章の意味理解には,「作者」を「想定」することで確実に,深く理解することが出来るとした「作者想定」法を提案した。「自学」という方法論と「作者想定」という内容論を持って,秋田は1920年に滋賀県師範学校附属小学校(以下,「滋賀附小」と略す)から奈良女子高等師範学校附属小学校(以下,「奈良女附小」と略す)に赴任する。秋田は,奈良女附小で木下竹次4)の指導理念である創造的自律的「学習法」と自身の「自学主義」,「作者想定」の「創作的読み方教授」の実践を摺り合わせ,自己の授業実践を再構築し,「創作的読み方教授」を深化・発展させていく。本論文の目的は,滋賀附小時代の秋田の実践「創作的読方教授」が木下との邂逅によって,いかに深化・発展していったかといった変容の過程を明らかにすることにある。
  • ― 現職教員と小学校教員を目指す学生の課題認識から ―
    松宮 奈賀子
    2013 年 36 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,現職教員と小学校教員養成課程で学ぶ大学生の外国語活動を指導することへの不安や課題意識をもとに,教員養成課程における授業でどのような不安軽減のための取組みが可能かを検討する。先行研究の整理によって,現職教員の多くが英語力の不足を課題と捉えているが,英語力向上を目的とした研修はあまり行われておらず,ニーズとの乖離が見られることが分かった。また,2010年度から2012年度に外国語活動に関する演習科目を履修した学生329名への調査から,学生もまた,多くが英語力を不安視していることが明らかになった。この英語力への不安感を軽減するための取組みとして,外国語活動の授業場面を意識した継続的なスピーチ活動を大学の授業で行うことを一案として提案する。
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