日本教科教育学会誌
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32 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 田中 讓, 後藤 幸弘
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 1-10
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,高学年児童を対象に,サッカーの授業において,学びとり方を目標にした課題解決的学習が,技術や体力を高めることを目標にした系統的な学習と同等以上に運動量を確保できることを明らかにしたものである。集団的技能の学習が中心となる第4〜7時の授業を比較した結果,課題解決的学習の方が,系統的学習よりも心拍数は高値を示した。また,心情調査の「精一杯の運動」「ワザや力の伸び」「新しい発見」の好意的反応比率は,課題解決的学習では授業の経過に伴い高くなる傾向を示し,記述内容も,多様で具体的なものに変化していることが認められた。
  • 柏木 賀津子
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 11-20
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の一つ目の目的は,小学校外国語活動に向けて配布された『英語ノート』を活用した授業で扱われる目標表現や,先生の英語の語りに使われる動詞フレーズの量を予測し分析することである、『英語ノート』の分析の結果,コーパスでもよく使われる動詞(do, go, have, like, make, play, sayなど)が頻度順の上位に見られた。これらの動詞は文の核であり,他者とのやりとりで大切な働きを持つと考えられる。一方では,コーパスに比べるとあまり使われない動詞(get, give know, take, thinkなど)も見られた。二つ目の目的は,頻度順の上位となった動詞フレーズについて,『英語ノート』での音声形式と意味を繋ぐ言語使用場面(context)を分析し,そこではどのように子どもの認知的な学びが期待されるのかを考察することである。その結果,動詞フレーズのtoken frequencyだけでなく,type frequencyも見られる場面では,子どもの認知的な学びがより期待されると考える。英語活動で子どもが触れる動詞フレーズは,子どもにとって,ひとかたまりの固有の表現(chunk)であり,音声から気づく動詞の軸語スキーマ(例:kick X, throw X)への認知的な学びになると考える。
  • 川崎 弘作, 寺本 貴啓, 松浦 拓也, 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 21-30
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    PISA2006における科学的リテラシーの「科学的能力」では,先行研究における一般的な科学的思考力の捉え方のみでなく,「問題の区別」と「他者の主張の評価」という能力が新たに育成目標として設定されている。このため,本研究ではこれら2点を含む「科学的能力」に着目し,この「科学的能力」から本研究における科学的思考力を規定し,規定した科学的思考力を評価する評価問題を開発することを目的として行った。本研究では,科学的思考力を,前述の能力2点を含む5つの下位能力から規定し,その下位能力に対応するよう評価問題を作成した。そして,小学校第6学年を対象にした調査をもとに,妥当性の検討を行い,5つの下位能力に対応する評価問題を計14問開発できたと判断した。
  • 清道 亜都子
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 31-40
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,作文を書いてから一定期間後に推敲すると,書いた直後に推敲するよりも,高校生の作文の質が高まるか,について検討することである,実践1では,高校1年生27名が,作文を書いてから1日後と1ヶ月後に推敲を行った,その結果,1日後の推敲では総文字数や作文の評価にほぼ変化がなかったが,1ヶ月後の推敲では大幅に向上し,内容に関する推敲も多く見られた。また,その効果は,作文の評価が低い者においても確認できた。実践2では,高校3年生30名(うち28名は書くことが苦手と自己評価した者)が1ヶ月後の推敲を行い,総文字数や内容の評価に向上が見られた。以上より,作文を書いてから一定期間後に推敲すると,書いた直後に推敲するよりも高校生の作文の質が高まること,さらに,一定期間後の推敲は,書くことが苦手な者にも有効な指導法であることが示された。
  • 李 貞姫
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 41-50
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,新たな社会科授業分析の枠組みを構築し提案することで,社会科授業分析方法を改革することにある。従来より韓国と日本の社会科授業研究において問題とされていたことは,社会科授業改善の主な視点が教師の側に偏っていたこと,社会科授業改善のための研究が理論的側面が強く,実践的側面の考慮が不十分であること,子ども側の研究が授業改善から距離があること,社会科授業をより詳細に分析するフレームワークがないことなどである。これらの問題を克服するため,本稿では新たな社会科授業分析の枠組みとして「授業のホリスティック分析」を構築し,その方法や意義を探る。「授業のホリスティック分析」の意義としては,第一に,教師側と子ども側からの分析を統合し総合を図ったこと,第二に,実証的・客観的分析ができること,第三に,現場の社会科授業改善に有効な枠組みであること,第四に,教師自らの授業改善に活用できる点などである。
  • 谷田 親彦, 安藤 明伸, 竹野 英敏
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 51-58
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,技術教育の理念として設定された「技術教育の内容」と「技術的素養」を評価・検証することを目的として,技術教育を学習する大学生の視野から分析を行った。技術教育の指導者を目指す大学生123名が考える「技術教育の内容」と「技術的素養」の重要性について調査を行い,その構造や関連性を検討した。その結果,「技術教育の内容」は,「評価・活用」「手順・設計」「社会・安全」「材料・生物」「情報処理・利用」及び「製作・制作」の下位構造を有し,「社会・安全」の重要度が最も高く示されていた。また,「技術的素養」は,「社会的活動の能力」「技術的活動の能力」及び「評価的活動の能力」から構成されていた。さらに,「技術的素養」の育成に影響力のある内容として「評価・活用」が示された。その一方で,「情報処理・利用」の内容は「技術的素養」との関連性が乏しく,「技術教育の内容」として再検討する必要性が示唆された。
  • 簗瀬 歩, 加藤 渡, 角田 和代, 市野 聖治
    原稿種別: 本文
    2010 年32 巻4 号 p. 59-68
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    教科体育における学習者の外発的動機づけは,自律性の強さによって多段階に分類され,内在化という現象によって変容していくと考えられた。そして,自律性の強い段階ほど学習成果が高いこと,教師の有効な支援によって,自律性の変容が促進されることが仮定され,これらの検証が試みられた。その結果,以下の知見を得た。(1)学習者の外発的動機づけは,他律的調整,同一視的調整,統合的調整の3段階で認知される。(2)それらは,自律性の強い段階ほど,学習成果の獲得に対して貢献する。(3)教師の指導行動は,自律性の支援,関係性の支援,有能さの支援に細分化され,教師による統制は,有能さの支援と同次元で対極的な指導行動と認知された。(4)自律性の変容に対しては,自律性の支援が最も有効であり,関係性の支援と有能さの支援は,自律性が芽生えた以降にこれを補助する。逆に,統制がこれを抑制する。
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