日本教科教育学会誌
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36 巻, 4 号
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  • ― 効果的な英語リーディング指導の順序 ―
    本岡 直子
    2014 年 36 巻 4 号 p. 1-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    近年,外国語教育に関してCEFR をはじめとした多くのCan-Do リストが発表されている。英語リーディングの技能において「要点をとらえる,概要をとらえる」という能力はどのリストでも取り上げられ,英語リーディングにおいては必要な能力であることが示されている。それ故,現状を明らかにする必要がある。本研究においては,高校生が「概要をとらえる」ことに関して,どのような能力や特性を持っているか調査した。その結果,主題を把握するより,トピックセンテンスを把握するほうが難しい作業であること,また,パラグラフ内でどこに示されているかという,主題やトピックセンテンスの場所により,その把握する力が影響を受けることが明らかになった。これらの結果を踏まえ,効果的な英語リーディング指導の順序を提案する。
  • ― 椎名誠「ふろ場の散髪」・内田百閒「冥途」との比較を通して ―
    中野 登志美
    2014 年 36 巻 4 号 p. 11-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    江國香織の「草之丞の話」は高等学校の教科書教材に収録されている作品である。指導書では「語り手」に着目することで読みを深めていく学習を目標にしているが,具体的な指導案は記載されていない。そこで本研究では江國香織「草之丞の話」を椎名誠「ふろ場の散髪」,内田百閒「冥途」と比べ読みをする学習指導を想定し,綿密な教材分析を行うこととした。比べ読みを行うことで語りや作品構造に着目させて学習者の読みを深めていくことを目指すのである。さらに,語りの信憑性を問う読み方の指導は,学習者の批評する力の育成に繋がっているということも論じている。「草之丞の話」は学習者の読みを深め,そして学習者の批評する力が育成される教材的価値を有しているのである。
  • ― 中国華東地域の日本語学習者を例に ―
    張 婧禕, 玉岡 賀津雄, 早川 杏子
    2014 年 36 巻 4 号 p. 23-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,中国人日本語学習者の和製英語の理解に,英語および日本語の語彙知識が,どのように影響しているかを検討した。そのために,歴史的に中国の国際的な経済活動の拠点である中国華東地域(上海周辺)に住む日本語学習者99名を対象に,和製英語の理解テスト,英語および日本語の語彙テストを実施した。英語と日本語の語彙テストの下位尺度をもとに,和製英語の既知度および理解度を予測する重回帰分析を行った。その結果,英語の名詞の知識が,和製英語の既知度を阻害する方向で有意に影響していた。また,英語の動詞の知識は和製英語の理解度に対して促進的に,また英語の形容詞の知識は阻害的に影響した。日本語の知識は,和製英語の既知度および理解度にまったく影響しなかった。さらに,28語の和製英語を階層的クラスタ分析した結果,3つの分類を得た。そして,これらの分類に従って和製英語の特徴を考察した。
  • ― 開発プロセスとその成果 ―
    林 未和子
    2014 年 36 巻 4 号 p. 33-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,全米の家庭科教師教育者の専門学会であるNATEFACS が開発した家庭科教師のためのナショナルスタンダードに注目し,開発プロセスとその成果を明らかにすることを目的としたものである。本研究を通して,以下のような知見を見出すことができた。① NATEFACS が中心となり,関連学会が議論を重ね,広く関係者の意見を反映した上で,共通認識に至っている。② スタンダード実施・普及のための理論的根拠を明示し,教師教育研究の進展に寄与することを目的としている。③家庭科教師教育プログラム・カリキュラムの開発と評価への指針を提供している。④教職専門性スタンダード,州の教師教育スタンダードとも連関し,質保証に配慮している。⑤将来的な教師の職能成長を視野に入れ,新任教師の資質能力の向上をめざしている。 米国の家庭科教師のためのナショナルスタンダードは,全米に通用するコアとなる本質的な能力を示しており,家庭科教師に必要な能力を分析・同定する手続きと論理は,今日の教師に求められる能力を明確化し,その到達度を確認するための1つのモデルとして,有意義な視点を含んでいる。
  • ― FOSS の学習プログラムを手がかりとして ―
    白數 哲久, 小川 哲男
    2014 年 36 巻 4 号 p. 47-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,科学的リテラシー育成の観点から「科学的探究」学習における授業デザインの在り方を検討することである。そのため,米国の理科教育プログラムFull Option ScienceSystem の「空気」と「風」に関わる学習プログラムを参考に授業実践を行い,子どもの科学的概念の構築の道筋を探り,「科学的探究」を基盤とした「空気」と「風」の学習をつなぐ授業デザインについて考察を行った。その結果,次の2点が明らかとなった。・ FOSS の「空気」に関わる学習プログラムには,〈自由な探索〉,〈直接体験〉,〈データ収集→結果の整理→結論の導出〉,〈概念を強化するための補足の経験〉という4つの段階から成る学習サイクルが存在する。・〈 空気の存在〉,〈空気の抵抗〉,〈空気の圧力〉に関わる科学的概念が,〈風は空気の動き〉であるという科学的概念の構築に向けた意識化を促進する。
  • ― 小学校理科における学習指導法の考案―
    川﨑 弘作, 松浦 拓也
    2014 年 36 巻 4 号 p. 59-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,科学の文脈における主張あるいは結論が妥当か否かを評価する能力(「主張の評価」)を育成するための学習指導法を考案し,その効果を実証することを目的とした。本能力育成のために考案した学習指導法では,問題解決学習における実験を行う前に,「実験方法」及び「結果の予想」が適切か否かを振り返らせる学習活動を取り入れるとともに,「足場かけ」の考え方に基づき,主張や結論が妥当か否かを評価する際の思考の仕方に着目した学習活動時の教師の声かけやワークシートの工夫等も併せて行った。そして,考案した学習指導法の効果を検証するために,小学校第5学年の児童88名を対象に,単元「電磁石のはたらき」において授業実践を行った。その結果,学習指導法適用前に比べ学習指導法適用後の方が評価問題の合計得点の平均値が有意に高いという結果を得た。このことから,考案した学習指導法は,「主張の評価」の育成に効果があることが明らかになった。
  • ― 行政教員研修経験が中堅国語科教師の学習に及ぼす影響を中心に ―
    丸山 範高
    2014 年 36 巻 4 号 p. 69-82
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,複数の中堅高校国語科教師に共通する授業実践知の構築過程を,行政教員研修と関連づけながら解明した。研究の方法としてM-GTA を採用し,教師たちの語りを,実践の文脈を重視しながら分析した。教師たちは,教材文のことば相互の関係把握につまずく学習者が主体的かつ適切に教材世界に関われるよう,教員研修経験を指導過程の構築のために取り込み,実践知の構築を図る。そしてさらに,築き上げた実践知の相対化を志すことで,その実践知の実践性の向上に努めている。教員研修は,中長期的に教師の学習過程全体にわたる支援をなし得ていないという限界はある。だが一方で,指導過程の構築という教師の学習を駆動する,教員研修の成果を組み込みつつ個々の教師固有の授業実践知を結実させる,という意義も見出される。
  • 深澤 清治
    2014 年 36 巻 4 号 p. 83-86
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,日本教科教育学会が,3カ年計画の研究交流プロジェクトの中で,平成25年度プロジェクトとして企画した「東アジアにおける教科教育学研究と教員養成」と題したシンポジウムでの発表および議論の概略をまとめることである。本企画のねらいは,本学会が,教育研究における国際化の思潮の高まりを受けて,世界的レベルの教科教育研究水準において学校教育,とりわけ教科教育の研究と実践に関して会員や教育・研究者が考察し,議論・検討する機会を提供するものであった。過去2年間のプロジェクトに引き続き,幅広い情報を得て教科教育学のあり方を検討するため,我が国を含む3カ国(日本,中国,韓国)で教科教育学研究や教員養成に携わっている研究者による日本語での発表,質疑応答を通して,相互の共通点と相違点が明らかにするとともに,これからの教科教育研究や教員養成に求められる方向について示唆を得ることができた。
  • 陳 月蘭
    2014 年 36 巻 4 号 p. 87-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究はアンケートやインタビュー,教育実習観察を通して,数学公費師範生の知識・能力・指導力の現状を分析した。数学教員の育成に適するカリキュラムの改善について提言する。
  • ― 教科教育学と教師教育 ―
    池野 範男
    2014 年 36 巻 4 号 p. 95-102
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,日本の教科教育学の特質を明らかにし,その独自性を解明することである。その特質・独自性は,①教科教育学は,教育学の一領域であるが,教科教育実践という独自な対象をもった教育研究である,②理論と実践,研究と提案を往還し,教科教育実践の改善・改革を目指すものである,③欧米のように,研究者と実践者に区別せず,両方の役割,任務を果たし,教育実践の提案,改善・改革を通して,教科教育の教科論,カリキュラム論,単元論,授業論,評価論を構築している,④教科教育学は教員養成教育を研究の一領域としてもつが,日本の場合には,教員養成教育とは別に,教師教育として位置づけ,制度上の「教員養成」から離れないと,その任務と役割を果たすことができない,という点にある。
  • 岡本 弥彦
    2014 年 36 巻 4 号 p. 103-106
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    学校におけるESD の定着と充実を目的に進められた国立教育政策研究所(2012)の研究では,「ESD の学習指導過程を構想し展開するために必要な枠組み」が提案され,持続可能な社会づくりを捉えるための6つの構成概念,ESD の視点に立った学習指導で重視される7つの能力・態度,授業設計・改善での留意事項として3つの「つながり」が例示された。また,その枠組みを活用した実践例からは,教科等の学習とESD との関係が明確になり,ねらいの明確な授業が設計・実践できるようになったなどの成果が報告された。今後,ESD においても指導と評価の一体化を図り,児童生徒の学習状況を適確に捉え,授業を評価・改善していくことが課題である。
  • 松本 和子
    2014 年 36 巻 4 号 p. 107-110
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    岡山市立第一藤田小学校では,地域に愛着を持ち,地域のために活動できる児童の育成をめざして,地域の人をはじめとした様々な立場の人々と共に,ESD の実践に取り組んでいる。交流の質や学習を深めるために,国立教育政策研究所のESD の報告書に示された「コミュニケーションを行う力」と「つながりを尊重する態度」に注目し,国語科や他教科で習得した「書くこと」「話すこと・聞くこと」という言語の力を生かした学習活動を進めている。本シンポジウムでは,こうした言語活動を通して,人・もの・社会・自然が児童の中でつながっていくということを,実践例によって紹介する。
  • ― ESD 関連カレンダーを活用して ―
    勇谷 美奈子, 藤井 浩樹
    2014 年 36 巻 4 号 p. 111-114
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    広島県福山市立駅家西小学校は,総合的な学習の時間と教科をつなぐことに注目し,ESDの実践を進めている。ESD の教育課程では,「環境」「多文化・国際理解」「人権・平和」の3つの領域を設定し,低・中・高学年で子どもにつけたい力を整理している。また,各教科・領域等に含まれるESD の教育内容を一覧にし,内容同士のつながりの理由を明示した「ESD 関連カレンダー」を作成している。ESD の授業では,つながりをキーワードとした授業づくりの視点(自分と学びとのつながり,内容のつながり,自分と他者とのつながり)を掲げ,授業の内容や方法に視点を反映させている。実践の結果,子どもの自己肯定感が高まった。この成果に,自律心や責任意識が身についたことが関係していると考えられた。
  • ― 他教科との協同授業の面白さと難しさについて ―
    平松 敦史, 宮本 浩治
    2014 年 36 巻 4 号 p. 115-118
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,広島大学附属高等学校における「ESD の授業づくり」と「ESD の内容開発」の検証を通じて,ESD を視点とした学校カリキュラムの編成の具体と教科教育の役割について検討した。教科の学びを大切にしながら,教科で学んだことを統合し,問題解決の方向性を模索するという教科中心の学びが,広島大学附属高等学校のESD 学習の特色であった。教科の固有性を大切にしつつ,教科がつながることにより,子どもの思考を深めること,「ESD の内容開発」を行う中で,教科の固有性や教科の特色を再発見できたことは成果の一つであった。質的に深い教科学習の継続と,教科と教科の連携の中でこそ,「ESD 学習」はより豊かなものになるという確信を得ることができた。
  • 浅井 孝司
    2014 年 36 巻 4 号 p. 119-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    学習指導要領の中にESD(持続可能な開発のための教育)の視点が取り入れられたことにより,ESD 推進に果たす教科教育の役割が重要となり,教科と教科をつなぐ,いわゆる教科間の連携が不可欠となってきた。また,ESD を推進することにより,教科によって得られた知識を実践に生かすことがより求められるようになっている。
  • ― ESD実践の類型化が教科教育に示唆するもの ―
    中本 和彦
    2014 年 36 巻 4 号 p. 121-124
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本教科教育学会第39回全国大会シンポジウム「ESD を視点とする学校カリキュラムの創造と教科教育の役割」で紹介・報告された実践などを具体的に取り上げながら,学校現場にみられるESD の取り組みについての類型化をソーントンのゲートキーピング論を視点として試みる。そしてその類型化を通して教科教育の役割についての示唆を得ることを目的とする。 ゲートキーピングを視点としたESD 実践の類型化から,ESD で取り扱う諸問題を手段化し,解決に向けて問い続けることこそ,未来へとつながる持続可能な開かれた教育ではないか,という教科教育の役割についての示唆を得た。
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