日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
Print ISSN : 0288-0334
ISSN-L : 0288-0334
14 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 後藤 恒允
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 159-165
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,作文指導論構築の基礎として,言語表現の本質と機能を考察することにある。このため,本稿では,コミュニケーションにおける言語諸機能に注目し,それらを有機的に構造的に関連させて論じた。殊に,ソシュールの言語学をも援用しつつ,言語表現が単なる伝達のためのものではなく,現実を二次的な価値体系として秩序化するものであることについて力説した。しかも,ソシュール言語学で論じきれなかった,表現主体と表現対象との関係について,現象学を援用して考察した。また,言語表現において創造的想像力が一層重視されねばならないことを提唱した。以上を一つの試みとして提案することにしたい。
  • 橋本 健夫
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 167-173
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    理科学習における「直接経験」は,問題発見の場と知識や技能の総合の場という二つの大きな機能を持つと考えられるが,合理創造の精神の育成という理科の目標達成のためにはもちろんのこと後者の機能が充分に発揮されなければならない。そこで後者の機能がどのように理科学習で活用されてきたかを調べるバロメーターとして花壇を取り上げ,長崎市とその近郊の小学校を対象にして,その運営方法などの推移を2回の調査で明らかにした。その結果,植物の栽培は活性化の方向には進んでおらず,理科学習にも充分活用されていなかった。この原因を探ると共に,次のような改善が必要ではないかと考えた。(1)従来の単元とは別に,「作る」・「育てる」ことを目標にした単元を編成すること。(2)それらの単元は一年間にわたるものとし,他教科との連携も可能にすること。(3)教員養成段階のカリキュラムにこの視点を組み込むこと。
  • 福田 隆真, 福岡 千賀
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 175-181
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    平成元年度の学習指導要領の改訂において,小学校図画工作科では造形遊びが4年生まで拡大された。造形遊びは従来までの美術教育の作品主義的な内容からの転換を計るために,前回の教育課程の改訂で導入された分野である。それは造形の素材に親しみ,遊びを通して自由な発想を育むものであり,結果としての作品よりも造形活動そのものを重視する考え方である。これらの造形活動では,いわゆる構成的な造形方法がとられる傾向にある。そこで本稿は造形遊びと構成の関係について述べ,その位置づけを行うものである。構成の造形方法は端的に言えば,非再現的方法である。造形遊びは造形素材と遊びのルールや目的に合わせながら非再現的な方法で造形表現を行うものであり,そうした活動を通して造形的な感覚,発想力,構想力,計画力などを育て,絵画,彫刻,工芸,デザインなどの分野と有機的に関連するものである。また,造形の基礎的内容を学習する構成学習と造形遊びは無様式という点で共通点を有している。従って造形遊びや構成の教材は表現形式として自由に開かれており,普遍的,一般的内容であるがゆえに,他の分野の特殊的内容と対峙しながら相互関連を持っていると考えられる。
  • 濱田 真由美
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 183-193
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    一口に問題解決活動といってもそれは教科によって内容や性格を異にするものであり,各々の教科の立場から教科としての問題解決にかかわるエッセンスを明らかにする必要がある。そこで本論では,音楽科の立場から,音楽学習における問題解決活動の特質について検討を行った。まず(1)問題の設立,(2)問題追究の過程,(3)問題の解決の3点を中心に音楽学習における問題解決活動を検討した後,次のような四つの問題解決のパターンに類型化し,各々実践事例から分析した。I 学習者の中から出てきた疑問点や問題意識をもとに音楽的事実の立証や発見をおこなっていくタイプII 学習者の中から出てきた疑問点や問題意識をもとに音楽表現の向上,充実や作品の完成をめざすタイプIII 教師が提示した課題をもとに音楽的事実の立証や発見をおこなっていくタイプIV 教師が提示した課題をもとに音楽表現の向上,充実や作品の完成をめざすタイプその結果,音楽学習における問題解決としては,音楽的事実の立証,発見にみられるような,学習者があらかじめ決められた到達点にむかっていく問題解決と,演奏の向上や作品の完成にみられるような,学習者が自ら到達点を定めていく問題解決とがあった。また,特に後者が音楽科として注目すべき問題解決と考えられた。
  • 島田 彰夫
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 195-200
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    家庭科における食教育は栄養,食品,調理の3つに大別される。食物についての教育は詳細にわたっているが,ヒト(Homo sapiens)の生物学的条件については,あまり考慮されていない。歯の形態,消化酵素の年齢や人種による違いなどのヒトの食性に関わる諸条件は健康の確保に重要な意味を持っているが,食の文化的な意味だけが強調され,ヒトの生物学的条件は忘れられている。筆者は補乳動物の食性の比較,地域の食生活に影響を与える自然環境要因,日本人の食生活の推移などについて検討を行った。1960年代から明らかにされてきているセヴンスデーアドヴェンティストや他のヴェジダリアンの癌,心疾患のリスクが低いことは,彼らの食生活がヒトの食性に近いためと考えられ,これらの事実とヒトの生物学的条件が,健康の視点から家庭科の食教育において考慮されるべきものと考える。
  • 赤堀 侃司, 小野 博
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 201-207
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    社会の国際化に伴い,近年日本に滞在する外国人子弟が日本の小中学校で学ぶ数が増加しつつある。そこで母国語の他に,第二言語としての日本語教育(JSL : Japanese as a Second Language)の重要性が求められてきた。我が国は単一民族,単一言語,単一文化の国であるために,このような言語教育の経験に乏しいが,アメリカ,カナダ等の多民族国家においては,第二言語としての英語教育(ESL : English as a Second Language)の経験が豊富である。そこで本研究は,これらの国で実施されているESL教育の実地調査に基づいて,その教育理念,内容,方法,課題等について報告し,日本語教育のあり方について考察しているものである。特に,ESL教育の理念や課題は長い経験から得られたものであり,これからの日本語教育の上に,貴重な助言となると思われる。
  • 杉山 晴信
    原稿種別: 本文
    1990 年 14 巻 4 号 p. 209-214
    発行日: 1990/10/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    国際商取引を促進・遂行する媒介となる商業英語には,文法的な正しさはもとより,「表現効果」を高めるための文体への配慮が必要とされる。本稿では,このような商業英語の特質に鑑み,指導者が学習者に指導すべき文体上の要点を,(1)文の長さ,(2)文の形式,および(3)文の構造という,3つの側面から検討した。(1)に関しては,Readability(読みやすさ)を実現する文体について考え,その関連から,語彙の選択の問題にも言及した。(2)に関しては,形式的分類による文のタイプごとに,You-Attitude(先方本位の文章態度)を実現する文体について考察した。(3)に関しては,構造的分類による文のタイプによって,4通りの標準的なパラグラフ構成法を紹介し,その各々につき文体上の長所・短所を指摘した。以上の考察を通じ,商業英語の指導者が行うべき文体指導の一端を系統立てて示唆した。
feedback
Top