日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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44 巻, 4 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 藤澤 健幸, 五十嵐 夕介, 渡邉 正樹
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 44 巻 4 号 p. 1-11
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学校の柔道授業における傷害を防止する学習の効果について検証することを目的とした。方法は,傷害を防止する学習を行った生徒を教育群,学習を行わなかった生徒を対照群とし,2群の学習効果を比較した。検証のため,①質問紙(安全行動,事故対応力,柔道の逃避的感情,受け身技能),②前回り受け身の評価,③教育群による危険予測・回避の学習記録を用いた。主な結果を以下に示した。 ① 二元配置分散分析から,両群においてすべての項目で主効果がみられ,安全行動の交互作用が教育群でみられた(p < .05)。 ② 前回り受け身の難しかった点の計量テキスト分析では,対照群では頭や肩の語がみられたが,教育群ではみられなかった。 ③ 生徒は前回り受け身の回る際の肩や頭が畳に着きそうになる場面を予測し,計量テキスト分析では,肩や頭の語が危険回避でみられた。  従って本研究は,柔道授業において,傷害の防止につながる生徒の思考力,判断力,表現力等を向上させることが示唆された。
  • 今井 茂樹, 佐藤 善人
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 44 巻 4 号 p. 13-25
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,「テニピン」の学習経験が,小学校体育の攻守一体ネット型ゲームにおける用具操作の技能習得に与える影響について検討することを目的とする。具体的には,今井(2013)が開発した「テニピン」のルールに基づいて,柄の付いたラケットを活用した「ラケットテニピン」の実践を行い,「テニピン」を経験しているクラスと経験していないクラスのゲーム中における4回返球成功率の比較検討を通して,用具操作の技能習得に与える影響を検討した。その結果,「テニピン」の学習経験は,学習意欲を喚起するとともに,学習の転移が起こり,ラリーを続けるための用具操作の技能を習得しやすい可能性が示された。一方,「テニピン」を経験していないと,児童にとって用具操作は,難しいという印象のまま単元を終えたと予測された。これらの結果から,はじめから用具を持たせてゲームを行うことは,難しいと言えることが本研究によって示唆された。しかしながら,「 テニピン」 のようなゲームを経験していれば, 小学校段階において用具操作を伴う攻守一体ネット型ゲームを実施できる可能性も同時に示された。
  • 香川 七海
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 44 巻 4 号 p. 27-41
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,数学者・遠山啓による知的障害児教育論の内実を,東京都立八王子養護学校における教科教育実践に即して明らかにすることにある。今日,遠山の事績は,戦後教育界に多大な影響を与えたものと評価されている。先行研究では,教育界における遠山の事績は算数・数学教育分野に特化して語られることが多い。ただ,1960年代末から,彼は八王子養護学校における教育実践に関与し,障害児を対象とする教科体系の創出に貢献していた。本稿では,遠山の知的障害児教育論の検討を通して,①知的障害児を対象に,算数・数学教育分野の教科教育内容を足場として,1968年から1972年頃までの間に“原数学”の構想が形成されたこと。②1970年代前半以降,障害児固有の論理を構築するというよりも,青少年全般の問題として能力主義批判が語られたこと。③知的障害児教育の知見は統合教育を志向するものであったこと。以上の論点を明らかにした。
  • 藤井 志保, 伊藤 圭子
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 44 巻 4 号 p. 43-53
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学校家庭科におけるケアリング教育の授業モデルを実践し,それをケアする人とケアされる人の双方向から分析することによって,中学生のケアリング生成過程を検討することを目的とする。研究方法は,ノディングズが提唱した4つの方法(モデリング,対話,実践,確証)を援用して,中学生と高齢者とのかかわりをとり入れた家庭科の授業を開発した。そして,授業後に,授業に参加した中学生と高齢者を対象に質問紙調査を実施した。その結果,家庭科の授業における高齢者との交流会を通した中学生のケアリング生成過程が明らかになった。そして,その過程において,中学生は高齢者とのケアリングを意識化することによって,高齢者からのケアに気付き,自分を振り返り,課題を生起することができた。一方で,中学生だけでは気づけないケアリングも存在することが明らかになった。今後の課題として,教師の果たす役割の再検討,自己へのケアリングサイクルの検討,生活の中にあるケアリングを体験できる場面の検討が提起された。
  • 柴山 慧, 佐賀野 健, 齊藤 一彦
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 44 巻 4 号 p. 55-68
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,現在の高等専門学校(高専)における体育授業の現状と課題を,日本全国の高専体育教員への質問紙調査から明らかにすることを目的とした。その結果は,以下の3点にまとめることができる。(1)高専における体育授業は,高専が抱える高等学校でも大学でもないという制度的特徴,学校や学生の現状を基に設計されており,モデルコアカリキュラム(MCC)や学習指導要領の影響は限定的である。(2)主に大学院を修了した体育教員が,新規性やオリジナリティ,研究という要素を基に授業を工夫し,学生の運動やスポーツへの愛好性や社会的スキルの育成をねらった授業,教員の専門性を生かした授業を高専ならではの特色ある授業と認識している。また,女性教員の割合が少数であることが継続的課題となっている。そして,今後,MCC に対する体育教員の理解が進めば,学生の創造性を育成することを目的とした体育授業が,より一層実施されていく可能性も考えられる。
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