学習ストラテジー使用は,学習スタイルと深く関連しており,学習者は,通常,自らの学習スタイルを直接的に反映するストラテジーを用いることを過去の研究が示している。例えば,包括的な学習者は,推測,走り読み等の全体的なストラテジーを選択し,一方,分析的な学習者は,対照分析,規則学習等のストラテジーを用いる傾向が強い。学習者のストラテジー選択に影響を与える他の要因としては,学習意欲,性別,年令,課題の性質,学習者の文化的背景が挙げられる。例えば,より意欲的な学習者ほど,また,男性より女性ほど,より多くのストラテジーを使用すること,また,アジア人学習者は丸暗記ストラテジーを好む傾向が強いことが明らかになっている。学習ストラテジー研究の第2言語教育への示唆として,ダイアリー法等の自己報告的内観を通じて,学習者に自らの使用する学習ストラテジーに対する認識を高めさせること,並びに,ストラテジー・トレーニングを通常の教室内学習活動にとり入れ,様々な学習ストラテジーの使用法に関する明示的な指示を学習者に与えることが有用である。将来の研究が日本人学習者の使用する学習ストラテジーの探求に向けられることが,大いに期待される。
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