日本教科教育学会誌
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18 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 松本 和子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 111-118
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    学習ストラテジー使用は,学習スタイルと深く関連しており,学習者は,通常,自らの学習スタイルを直接的に反映するストラテジーを用いることを過去の研究が示している。例えば,包括的な学習者は,推測,走り読み等の全体的なストラテジーを選択し,一方,分析的な学習者は,対照分析,規則学習等のストラテジーを用いる傾向が強い。学習者のストラテジー選択に影響を与える他の要因としては,学習意欲,性別,年令,課題の性質,学習者の文化的背景が挙げられる。例えば,より意欲的な学習者ほど,また,男性より女性ほど,より多くのストラテジーを使用すること,また,アジア人学習者は丸暗記ストラテジーを好む傾向が強いことが明らかになっている。学習ストラテジー研究の第2言語教育への示唆として,ダイアリー法等の自己報告的内観を通じて,学習者に自らの使用する学習ストラテジーに対する認識を高めさせること,並びに,ストラテジー・トレーニングを通常の教室内学習活動にとり入れ,様々な学習ストラテジーの使用法に関する明示的な指示を学習者に与えることが有用である。将来の研究が日本人学習者の使用する学習ストラテジーの探求に向けられることが,大いに期待される。
  • 森 尚子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 119-126
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は家庭科における科学の目的,目標,性格,構想について検討し,アメリカの中等学校段階における科学としての家庭科の成立過程について明らかにすることを目的とする。家庭科は全米教育協会の『ホームエコノミックスの再編成』により,最善のタイプの家庭と家族生活を確保し,維持することを助ける教科として構想された。その目標の一つは家庭のよき構成員に生徒を育てること,もう一つは女子生徒に職業前教育を教えることであった。家庭科における科学とは,家庭生活に科学を応用すること,生活の科学化であり,また,生活を科学的に思考することであった。これが当時の家庭科教育の特質であると考察される。
  • 多ゝ納 道子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 127-137
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本報では,現在小・中規模校が大部分を占め,将来においてはさらに学校規模の縮小が予測されている島根県の技術・家庭科担当教員の指導実態と意識を明らかにし,男女共学の技術・家庭科を推進するための課題を把握することを目的としている。調査結果として,つぎのようなことが明らかとなっている。技術・家庭科担当教員には,無免許者が多く,特にその傾向は,小規模校の教員に顕著である。小規模校の教員は,技術・家庭科のほかに,1〜2の教科を担当しているのが一般的である。技術・家庭科の免許所有者と無免許者では,男女共学による担当希望に差異が認められ,免許所有者の方がより強く希望している。また,男女共学による指導経験のない教員は,男女の生徒の学習能力により大きな差異があると理解している。その傾向は,技術系列担当教員に明確に認められる。伝統的な性別役割意識をもつ教員と民主的な考えをもつ教員では,家庭科観が異なっている。これらの結果からみて,島根県の教育環境の特徴としてあげられる小・中規模校においても免許所有者が技術・家庭科を担当することが重要であるといえる。
  • 高森 壽, 松山 容子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 139-149
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    前報において,家庭科教育の成果が日常生活における環境保全・省資源行動と結びついている可能性を示唆した。家庭科教育の中でも被服教育は男女の学習体験にとくに差がある。そこで,衣生活行動(衣服の購買行動,衣服購入時の選択基準など)の実態について調査し,前報の結果が被服教育と衣生活行動との間にもみられるか否かを明らかにするとともに,環境教育における被服教育の必要性について検討した。調査対象者は,前報と同じ,熊本大学に在籍する学生,男子学生131名,女子学生192名,計323名である。衣服の購買行動および購入時の選択基準ともに性差が多く認められ,女子の方が結果的に環境保全・省資源につながる行動をとっており,小・中・高等学校における被服教育の成果と判断した。特に,男子の場合,衣服の手入れや取り扱いなど衣服の管理と関係が深い選択基準の重視度が低かった。その理由として,男子学生の衣生活に関する学習体験が少ないことに加えて,日常生活における生活体験が少ないことも理由のひとつであると考えられ,教育学部においては,とくに男子学生の教育に重点をおく必要があることが示唆された。また,衣服の購入にあたって廃棄のことまで思い至る者は男女ともに少ないことから,衣服の購入からその廃棄までを一連の衣生活行動として指導する必要があると考えられる。
  • 笹野 恵理子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 151-160
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論では,音楽教育研究における「授業研究」について,認識論の視点から検討した。具体的には,「現象学」の立場を手掛かりに,それにおいて提起された認識論上の問題の検討を通して,音楽教育研究における「授業研究」に現象学的認識論が持つ意味を明らかにした。本論における私の主張は,次の二点である。第一に,研究者は,自己の自明視している研究枠組みや授業観を自覚的に相対化し,反省的に思考していく必要がある。そのためには,「授業研究」における現象学的思考が有効であるということである。そして第二に,これまで最小のインプットで最大のアウトプットを創出する効率主義的な技術論として展開されてきた「授業研究」からの離脱を音楽教育研究において主張したい。
  • 谷島 弘仁
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 161-169
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,生物教材に対する興味・関心と,クラスにおける諸要因との関連について検討することである。350人の中学校1年生が,生物教材への興味・関心や,理科における能力認知,理科への態度,クラスへの適応,および自尊感情から構成される質問紙に回答した。各項目には高い信頼性が認められた。第一に,生徒の生物教材への興味・関心,理科における能力認知,理科への態度の間の関連について考察された。第二に,クラス環境(クラスへの適応)および生徒の性格特性(自尊感情)→理科への態度→生物教材への興味・関心→理科についての能力認知の4つの水準から構成される探索的モデルの妥当性がパス解析の結果示された。最後に,本パス・モデルに基づく理科の授業実践が生徒の生物教材への興味・関心や,理科における「関心・意欲・態度」の評価に貢献する可能性か考察された。
  • 藤井 美知子, 高本 明美
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻3 号 p. 171-176
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    情報処理教育におけるプログラミングの学習において,学習者がプログラミング言語を理解し,プログラムを作成できるまでを総合的に支援が行える環境を構築している。現在までに開発を行った支援は,主にプログラミング言語の文法知識の定着を助けることを目的とした支援である。プログラミング学習においては,プログラミング言語理解の支援とともに,アルゴリズム理解の支援が必要である。そこで,学習者によるプログラミング過程の違い,プログラミング過程と学習効果の関係について調査を行った。また,類似の問題の学習がプログラミングの過程に与える影響についても調査を行い,初心者のプログラム作成におけるアルゴリズム理解の過程を中心に分析した。今回の調査より,プログラミングの学習過程には,システマティクな,トップダウンの考え方が必要であり,さらに,間違った知識や理解の曖昧な部分に対しては,適切な助言および支援を与えることにより学習が継続でき,学習者は正しい結果を得ることが明かとなった。
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