日本教科教育学会誌
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43 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ナショナル・カリキュラムにおける初等・中等体育カリキュラムに着目して
    久我 アレキサンデル, 丸山 真司
    2020 年 43 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はペルーのナショナル・カリキュラムにおける初等・中等体育カリキュラムの教科内容編成にみられる特徴および課題を明らかにすることである。分析対象はペルーの学習指導要領にあたるナショナル・カリキュラム(DCN)とした。その結果,体育の教科内容は主にコンピテンシー論に基づいて編成されていることが明らかとなり,内容(領域)編成においては文脈依存的な学力観に依拠しつつ,体育固有の文脈(学習領域)として①身体・健康領域②運動技能領域③他者理解・社会性領域の3領域で編成されていることが特徴的であった。一方で,内容編成論が明瞭でなく,目標と内容が逆転して記述されるなどの理論的矛盾や,発展性(シーケンス)が単線的であるなどの課題が明らかとなった。
  • 阪本 秀典, 石井 雅幸, 雲財 寛, 稲田 結美, 角屋 重樹
    2020 年 43 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    理科においては,問題解決の能力を問題解決の過程を通して育成することが求められている。そして,問題解決過程の連関性をもたせた指導の保障が子どもの問題解決の能力の育成に不可欠であると指摘されている。そこで,小学校教師を対象に,連関性をもたせた指導が行われているかを明らかにするために,連関性のある指導とない指導の指導頻度を問う質問紙を開発し,実施した。その結果,問題解決の各過程内で完結した連関性のない指導と比較すると,問題解決の各過程を連関させた指導は行われていないことが明らかとなった。教師は連関性のない,ノートを書かせる,観察・実験の技能指導,発表をさせるなどの具体的な子どもの活動に関わる指導を頻繁に行っていることが明らかとなった。
  • 生活科の学習指導場面を窓口にして
    安藤 哲也
    2020 年 43 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    本稿では,幼小の学びの連続性に着目した学習指導を行う際に,小学校の教師が志向する意識の内実を明らかにするため,仮説に基づく授業実践の参与観察と,教師の振り返りを基に,授業実践前後の教師の意識に焦点を当てて分析・考察した。その結果,幼小の学びの連続性に着目することで,小1担任の意識には,①子どもの見取りと支援,②保育者との連携について新たな志向が生じていた。①では主に,時間軸に幼児期を位置付けて子どもの学びを連続的に理解しようとする意識,無自覚に発揮する幼児期の教育での学びを意図的に見取ろうとする意識,幼児期の教育での学びを自覚し発揮できるような支援を大切にする意識が見出された。②では主に,子どもの学びをつなぐためには指導の引き継ぎを超えた情報交換が必要であるとの意識,授業を参観した保育者の見取りを基に話し合うことで学びの連続性を支えることができるようになるとの意識が見出された。
  • INS モデルを用いた問題解決能力の実態把握を通して
    村田 晋太朗, 永田 智子, 小林 裕子
    2020 年 43 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,(1)INS(Interpersonal Negotiation Strategy)モデルを用いて,保護者との対人葛藤場面における生徒の問題解決能力を把握すること,(2)得られた知見を基に,中学校家庭分野「家族関係」を題材にした問題解決的な学習の指導指針を得ることである。結果として,次の3 点を明らかにした。(1)「(a)問題の定義」のステップにおける評定結果が他のステップに比べて低い。(2)どのステップにおいても最も高い発達レベルに関する記述が確認できなかった。(3)対人志向スタイルとして,「従う」「譲歩する」「説得する」のいずれかのスタイルをとる傾向にあり,「協調的スタイル」は確認できなかった。さらに,次の指導指針を明らかにした。問題を定義するための方法や意義について理解させること。自分自身の対人志向スタイルを把握した上で,多様なスタイルがあることを理解すること。今後は,この指導指針を基盤として,実践の開発と効果の検証を行う。
  • 辻 勇介
    2020 年 43 巻 1 号 p. 43-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,音楽科教育における知識の獲得に相当する〈知る〉について考察し,その独自性を明らかにすることである。というのも,音楽は不可視であるにもかかわらず,学習者が何かを新しく「知っている」と言えるとき,そのように言えるまでには独自のあり方があるように思われるからである。「いわゆる知識」の獲得とは異なる点があるかどうか,音楽美学・美的経験の視点から検討し,音楽科教育における〈知る〉について提示する手順をとった。その結果,〈知る〉について,1)洞察によって感情の本質を知る事態がある,2)音楽の構成要素を曖昧にとらえるときから「知っている」という証言がありうる,3)音楽の構成要素の知覚を通した反応における洞察が〈知る〉の実質である,ということが明らかとなった。
  • 成績水準との関連に着目して
    内海 志典
    2020 年 43 巻 1 号 p. 57-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,高等学校化学における実社会・実生活の関連を重視した指導を導入した授業実践において,生徒の化学や科学への態度に対する効果について,成績水準との関連に着目して検討した。その結果,科学的な考えや科学的概念を中心として系統的に学習を展開する授業と比較すると,成績の下位群の生徒については,化学への興味・関心と,化学の学習に対する自信の低下を抑制する効果,及びより多様な学習方略を用いて学習をうまく進めることと,科学に対する将来志向的な動機づけを改善する効果がみられた。さらに,生徒の科学的な考えや科学的概念の獲得に対して一定の効果があることから,比較的長期間にわたる実社会・実生活との関連を重視した指導は,下位群の生徒の態度に影響を与え,生徒の学習を促進させる効果があることが示唆された。
  • 池永 和樹, 川崎 弘作, 中村 大輝
    2020 年 43 巻 1 号 p. 71-81
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学校理科における地球領域固有の仮説設定能力に関する学習者の実態を把握することである。この目的の達成のため,まず,理科教育学及び科学哲学の知見を基に,地球領域固有の仮説設定能力の構成について検討した。その結果,地球領域固有の仮説設定能力として,「Ⅰ.過去に起こった事象や広範な空間で起こった事象を想定する推論」と,「Ⅱ.発想した事象を基にした示唆的な仮説を複数発想し,その中から尤もらしい仮説を選択する推論」を発揮することの2点が導出された。次に,地球領域において仮説を設定する際,学習者はこのような領域固有の仮説設定能力を発揮できているかという観点から実態調査を行った。その結果,地球領域において仮説を設定する際,前述の2種類の推論を十分に発揮できておらず,地球領域固有の仮説設定能力を十分に育成されていない実態が示唆された。
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