本研究の目的は,(1)INS(Interpersonal Negotiation Strategy)モデルを用いて,保護者との対人葛藤場面における生徒の問題解決能力を把握すること,(2)得られた知見を基に,中学校家庭分野「家族関係」を題材にした問題解決的な学習の指導指針を得ることである。結果として,次の3 点を明らかにした。(1)「(a)問題の定義」のステップにおける評定結果が他のステップに比べて低い。(2)どのステップにおいても最も高い発達レベルに関する記述が確認できなかった。(3)対人志向スタイルとして,「従う」「譲歩する」「説得する」のいずれかのスタイルをとる傾向にあり,「協調的スタイル」は確認できなかった。さらに,次の指導指針を明らかにした。問題を定義するための方法や意義について理解させること。自分自身の対人志向スタイルを把握した上で,多様なスタイルがあることを理解すること。今後は,この指導指針を基盤として,実践の開発と効果の検証を行う。
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