日本教科教育学会誌
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31 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 小池 守
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 1-8
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,電流電圧測定に使用されるクランプメータが磁石学習に使用できるか検証することにある。磁石と電磁石の示す磁束密度と,クランプメータで測定した直流電流値の間に相関関係が得られたことから,磁石の磁束密度をクランプメータで測定できることを示した。また,磁石の磁極からの距離と磁束密度との関係も測定できることを示した。長野県の公立中学校2学生を対象に,クランプメータを用いて,磁石の磁束密度測定実験を実施した結果,全生徒がクランプメータを使って磁束密度を測定できた。また,授業後の感想から,生徒は実験を通して,正しい磁石認識が得られたことに満足していた。さらに,クランプメータを磁石学習に役立つ教材と考えていた。
  • 大曲 美佐子, 長井 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 9-18
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,家庭科教育において,「死に関する授業」を通して自分と家族について考える小中5ヵ年間の一貫学習プログラムの開発である。「死に関する授業」とは,「死に関する学習」と「セルフェスティーム形成の学習」とを意味する。「死に関する学習」では,三人称の死,二人称の死,一人称の死を受容していく学習教材を発達段階に応じて開発した。更に,新たな試みとして,死を受容する心を育てるスキルの習得に「セルフェスティーム形成の学習」を導入した試案を作成した。これらの学習は,子どもたちの「生きることの意味」への問いかけや,「自己実現(たましいをつくる)」に影響を与えるものと考える。
  • 西原 貴之
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 19-28
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    言語形式の焦点化(focus on form)の手段として文学教材の活用が注目されてきている。しかし,言語形式への焦点化はもともと日常的なコミュニケーションを想定しているため,文学教材を用いることによって従来型の方法との相違点が出てくることが予想される。これまでの研究では,言語形式の焦点化と文学教材の読解の共通点のみに議論が集中し,それらの相違点については考察されてこなかった。本論文では英語詩に着目し,英語詩を取りまく詩のコミュニケーションの性質が言語形式の焦点化にどのような特徴をもたらすのかを議論する。具体的には,(1)意味理解はゆっくりと平行的に進む,(2)学習者は有標的言語表現の言語形式に注意を向ける,(3)意味面と言語形式面のマッピングには弱い推意と有標的言語形式が関わる,(4)言語形式への注意による意味理解の妨げは奨励されるべきものである,という特徴を指摘する。
  • 大杉 貴康, 出村 慎一, 藤谷 かおる, 山下 秋二, 宗倉 啓, 南 雅樹, 北林 保
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 29-38
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,体育授業に対する生徒の価値態度の構成要因について,因子構造,因子間の関連性,および性差の観点から検討することであった。調査項目は,内容妥当性および理論的妥当性により有効と判断された6要因50項目を設定した。中学校・高等学校生徒1,866名を対象に調査し,データの検証を行い生徒1,444 (約77.4%)名の有効な回答を得た。その結果,生徒の価値態度の構成要因の因子構造は「仲間(チームワーク)」因子を加えた7因子(「意欲」,「楽しさ」,「仲間(チームワーク)」,「まもる」,「学ぶ(わかる)」,「協力」,「できる」)から構成されていた。また,抽出および解釈された因子相互に,有意な関連性が多く認められた。さらに。「意欲」,「楽しさ」,「仲間(チームワーク)」,「まもる」,および「協力」因子で性差が認められ,男子は女子よりも「意欲」および「楽しさ」因子を,女子は男子よりも「仲間(チームワーク)」。「まもる」および「協力」因子を体育授業で重要視していると推察された。
  • 平野 真
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 39-45
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    2003年に実施したOECD生徒の学習到達度調査(PISA)において,文部科学省(2006)の発表で「読解力」の低下が指摘された(以下PISA型読解力)。井上(2006)はPISA型読解力について,PISAの定義を説明してから,従来の国語科で取り上げられた読解力などの定義とは全く違っており,各教科で取り組む必要性を述べている。そこで,PISA型読解力の向上に向けて,体育授業で使用する学習ノートとしての「体育テキスト」はどのようなものがいいのかを開発することを本研究の目的とする。
  • 佐藤 明宏
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 47-56
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論考の目的は,紙芝居づくりから上演という教育方法を教師教育の方法として取り入れることによる教育的可能性を探ることにある。研究の方法として,紙芝居の特質と紙芝居づくりの方法に関する先行実践を整理し,そのことを踏まえた上で大学生に自作紙芝居を小学生の前で上演させるという紙芝居づくりの実践を行わせた。これによって七つの資質((1)児童文化への理解,(2)文章構成能力,(3)メディアリテラシーの能力,(4)グループで協力していく力,(5)コミュニケーション能力,(6)教師の語りの技術,(7)子どもの反応の把握力),を伸ばすことができるということが明らかになった。
  • 國岡 高宏
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 57-63
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    数学教育がその指導対象としている知識(数学的知識)の本性を明らかにすることは,数学教育学の根本問題の一つである。筆者は,数学的知識の特性を一つずつ拾い集め,それを精査していくという作業を積み重ねるにことで,数学的知識の本性の理解に近づいて行きたいと考えている。本稿では,知識内容とその表現方法の関係に焦点を当てることで,数学的知識の重要な特性として,以下の2点を指摘した。(ア)知識内容とその表現方法は不可分の関係にあり,表現の変更は不可避的に知識内容の変容を伴う。したがって,表現方法の置き換えによる指導教材の平易化は,いつでも行えるわけではない。(イ)表現方法の変更が新たな思考対象の生成と数学的知識の発展を促す。この特性は,数学学習の系統性,階層性に反映されることになるので,数学教育の観点からも重要となる特性である。
  • 寺本 貴啓, 松浦 拓也, 角屋 重樹, 森 敏昭
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 65-74
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    ダイナミック・アセスメント(Dynamic Assessment)とは,学習過程で現れる児童一人ひとりの誤答から,指導者がその問題点を推測し,支援として,その改善点を示唆することで,新たな概念を再構築させることを目指した,形成的評価の一種である。本研究の目的は,これまで発達支援で活用されてきたダイナミック・アセスメントの手法を,小学校第6学年理科「水溶液の性質」の学習課題において「テスト直し」場面で改善を示唆するヒントカードを適用し,短期的(単元終了約1週間後)と,長期的(約3ヶ月後)の両側面から知識や技能等の習得状態を確認することである。結果は次のようになった。(1)順序立てて説明が必要な長文記述式と,記憶の有無の影響が大きい非長文記述式(選択式・単文記述式)の2種の問題形式の総合点から分析した結果,短期的・長期的の両側面で,実験群は対照群と比べ有意に成績が高かった。(2)前述の2種の問題形式別で分析した結果,長期的側面において,長文記述式のみで実験群の方が対照群と比べ,有意に成績が高かった。
  • 三浦 省五, 猫田 英伸
    原稿種別: 本文
    2008 年31 巻2 号 p. 75-84
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論では,「教科教育学」の一部である「英語科教育学」と,他教科の教育との関連をあまり重要視しない「英語教育学」との区別・関連を述べた後,英語科教育学の中核をなす英語教育学における研究分野の各種分類を紹介する。さらに,英語教育に関連のある固有の分野とテーマを研究対象とする国内の学会を紹介する。そして,設立34周年を迎え,日本で最私権威かあると言われる英語教育関係の学会である全国英語教育学会の成り立ちを述べ,その機関誌であるARELEに掲載された論文の内容を分析する。これにより,今日までの研究動向の変遷を探るとともに英語教育研究の今後の展望について論じる。
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