日本教科教育学会誌
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42 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小学校国語科文学教材の授業実践を対象に
    石上 靖芳
    2019 年 42 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,国語科の単元開発において活用される教師の実践的知識である具体的な指導方略とその開発過程を具体的に明らかにすることであった。この目的を達成するために,小学校ベテラン教師の国語科文学教材の単元開発を対象に,3回にわたって実施された事前検討会での協議内容を文字化し,定性的コーディングにより,指導方略を抽出するとともに開発過程を検討した。その結果,指導方略に関する29の概念が抽出され,≪実践経験に基づく教材化方略≫,≪単元開発の具体化方略≫,≪授業展開場面における具体化方略≫の3つのカテゴリーに整理されるとともに,単元開発過程が具体的に明らかになった。
  • 小学校音楽における指導内容・方法
    遠藤 武夫
    2019 年 42 巻 3 号 p. 15-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    リコーダーは演奏者が自分の音感をもとに音高を作ることのできる作音楽器であり,純正律による純正な和音の響きを作ることができる。しかし,小学校音楽では運指や読譜の指導に重点が置かれ,作音楽器としての特性が活かされてこなかった。リコーダーの特性を活かして純正な和音の響きを作る能力を育成することは,児童の和音表現能力を向上させ,リコーダー以外の表現活動においても作り上げる音楽の質的向上に寄与するもので,有意義である。そこで,純正な和音の響きを作る能力を育成するリコーダー学習の在り方について研究することにした。本論文では,小学校段階における指導内容・方法の試案を作成し,3年,4年,6年で授業実践と検証を行った。4年次の長短3度音程の指導については課題が生じたが,他学年の指導内容・方法は純正な和音の響きを作る能力の育成に有用であることが明らかになった。
  • 山田 淳子, 辻 延浩
    2019 年 42 巻 3 号 p. 25-39
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,小学校第4学年児童を対象に,投能力向上プログラムを作成し,その効果を明らかにするとともに,投の運動の学習経験が第5学年でのベースボール型ゲームの学習にどのような効果を与えるかについて検討することを目的とした。その結果,投能力の向上を企図した「投げる運動」の授業は,児童の体育学習に対する愛好的な態度を高め,遠投距離および投動作評価得点も有意に向上させることが認められた。次に,投の運動の学習経験の違いによる効果の分析では,学習経験のある学級の児童は,ベースボール型ゲームに対する愛好的な態度をより高めるとともに,ゲームパフォーマンス評価(GPAI)において,単元序盤から送球と捕球の技能発揮と仲間へのサポートやベースカバーの動きを向上させた。さらに,その児童たちはベースボール型ゲームの戦術的な理解力を高めることができた。
  • 教育学に背景を持たない3名の欧州研究者の多様性と共通性
    山田 秀和, 草原 和博, 川口 広美, 大坂 遊
    2019 年 42 巻 3 号 p. 41-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,「教育」「研究」「社会貢献」「管理・運営」の4点を視点にして,教科教育研究者の社会的責任の果たし方について考察する。分析対象は,社会系教科の教育法を担当する欧州の大学研究者3名である。3名は,教育学以外の領域から教科教育の世界に入り,精力的な活動を展開している。教科教育学の担い手が拡大する今,3名に見られる教科教育研究者としての社会的責任の果たし方や,社会的責任を果たせている基本要因を明らかにすることは重要だろう。本研究で明らかにしたのは,次の3点である。(1)3名には社会的責任の果たし方に多様性が見られること,(2)しかし,教科教育研究者としての責任を果たせている共通の要素として,3名の学問的・社会的な関心や信念が教科教育と結びついていること,実際の活動が所属組織の期待や地域の状況と整合していることが考えられること,(3)3名に見られる社会的責任の果たし方は,教科教育学の境界を再構築していく新たなパースペクティブとなりう
  • 他者との共用スペースの片づけの授業実践
    古重 奈央
    2019 年 42 巻 3 号 p. 55-67
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,片づけを総合的に捉える切り口として他者とのつながりに着目し,共用スペースの片づけの授業を実践し,片づけの学習の教育的効果について検討した。授業を行った学級全体と片づけの意欲の低い児童の双方を対象として,授業前後の質問紙調査と授業中の児童の記述内容から分析し,その効果を示した。授業前後の質問紙調査からは,自分の使いやすさとともに,他者の使いやすさに目を向けるという片づけ行為における意識の向上が学級全体で確認された。片づけの意欲の低い児童については,片づけが他者のための行為でもあることへの気づきや,自分で使ったものは自分で片づけるべきという意識の高まりといった片づけ行為の捉え方に変容が見られた。共用スペースの片づけの学習において,他者への配慮や尊重を含む片づけに関する意識の向上が確認され,片づけの学習に他者という視点を入れていくことの価値とともにアプローチの具体が示された。
  • 改訂版ブルーム・タキソノミーを用いた分析を通じて
    村田 晋太朗, 永田 智子
    2019 年 42 巻 3 号 p. 69-81
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学校家庭科「家族と家庭生活」の学習指導案における教育目標の傾向や課題を,Anderson et al(2001)の「改訂版ブルーム・タキソノミー」を用いて分析することで明らかにすることである。学習指導案に記述されている本時の目標や学習活動・内容,評価規準を知識と認知過程に分け,知識次元の主要タイプや認知過程次元の6つのカテゴリーに分類した。学習指導案の記述を整理・分析した結果,次の4点を指摘できた。(1)本時の目標は,学習指導要領の指導事項の記述と同じ文言を使用しており,抽象度の高い記述であった,(2)本時の目標の記述と解釈後の目標の間において整合性が取れていない学習指導案がいくつか存在した,(3)「家族と家庭生活」の指導事項は,概ね「概念的知識を理解する」ことを目標にしており,「理解する」は学習したことをノートやプリントに「まとめる」,調べたことや班で話し合ったことを「発表する」ことを求めている傾向であった,(4)学習指導案からは知識の質を明らかにはできなかった。
  • 養成段階の学生を対象とした教科の指導法に関する講義に着目して
    江藤 真生子
    2019 年 42 巻 3 号 p. 83-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,各教科の指導法に関する科目「体育科教育研究」を受講した小学校教師を志望する学生の体育授業の指導観がどのような様態であり,どのように変容するかについて検討することであった。データは,講義前後の指導観に関する記述と模擬授業の省察シート(個人)により収集し分析を行った。その結果,以下の3点が明らかとなった。①講義の受講前後における小学校教師志望学生が保持する体育授業指導観は,【授業の実践】,【児童に身につけてほしいこと】,【児童の学習】に分類された。②講義前後の指導観のカテゴリ数に変容がみられた。具体的には,[安全管理]の指導観は記述数が減少した。一方で,[教授]の指導観については,記述数が増加した。③指導観の理由等には,講義において学んだ内容や模擬授業の経験,これまでの経験,講義担当者の指導が記述された。本講義における学びが,体育授業の指導観の変容に影響したと考えられる。
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