本研究の目的は,体育授業が生徒の運動実施に対する認知に与える影響について明らかにすることであった。そこで,本研究では,体育授業における動機づけ雰囲気知覚(成績雰囲気知覚及び熟達雰囲気知覚)→生徒の目標志向性(自我志向性及び課題志向性)→日常的な運動実施に対する認知というプロセスを想定したモデルの設定を行なった。調査対象は,中学生934名(13.8±0.9歳)であった。調査対象者には,体育における動機づけ雰囲気測定尺度,目標志向性尺度,現在の運動参加状況項目を記入させた。構成した仮説モデルは,多母集団同時分析によって検証を行なった。その結果,男子及び女子において両集団のモデルの適合度指標は,すべての指標において適合が良いと判断された。本研究の結果で特に注目されたい点は,以下の2点である。1つは,男女ともに動機づけ雰囲気知覚の両側面から現在の運動実施に対する認知に正の影響を与えていた。もう1つは,動機づけ雰囲気知覚から目標志向性を媒介し,日常的な運動実施に対する認知に正の影響を与えるプロセスは男子と女子に差異があることが明らかになった。このことから,生徒の日常的な運動実施に対する認知を促進するためには,体育において成績雰囲気知覚及び熟達雰囲気知覚のどちらの雰囲気も重要になることが示唆された。特に,その中でも熟達雰囲気知覚は生徒の日常的な運動実施に対する認知に与える影響は大きいことが明らかとなった。
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