日本教科教育学会誌
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36 巻, 2 号
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  • 吉留 文男
    2013 年 36 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,説明文の「テキスト構造」に着目し,EFL 学習者のテキストの内容理解に効果を与えると想定される「グラフィク・オーガナイザー」(Graphic Organizers)を用いた指導の効果を検証することである。調査対象者である高等専門学校3年生60名を「実験群」と「統制群」に分けて指導を行った。指導に際しては,テキストの内容関係を理解させるためにグラフィク・オーガナイザーを用いたタスクを学習者に与え,談話構造の機能について指導を行った。読解(事前・直後・事後)テストを実施し,その結果を実験群と統制群で比較した。その結果,全体として統制群に比べ実験群において指導効果が見られた。特に,直後読解テストのグローバルな設問項目において,実験群(下位)のテスト結果に有意な差が認められた。
  • 宮迫 靖静
    2013 年 36 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    高等学校新学習指導要領・外国語編は,英語コミュニケーション能力の養成を鮮明にしている。「実際のコミュニケーションの場面」(文部科学省,2010)となる授業において,技能統合的な活動によるコミュニケーション能力育成を目指す中で,「ライティング」科目は「英語表現」科目に形を変え産出力を養成するが,「リーディング」科目は消滅する。本論は,新学習指導要領施行後のリーディング指導を探ることを目的とし,Grabe(2009)の包括的リーディング指導への提言に基づき,現行学習指導要領における「リーディング」科目と新学習指導要領における「コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ」科目におけるリーディング指導に関する記述を比較・検討する。また,「コミュニケーション英語Ⅰ」検定教科書におけるタスクを予備調査する。この結果,(a)「リーディング」科目と「コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ」科目におけるリーディング指導に関する記述には本質的な違いはなく,(b)「コミュニケーション英語I」検定教科書は,語彙・文法・内容理解に関するタスクが中心で技能統合タスクは十分ではなく,流暢さ育成に難があることが示される。併せて,新学習指導要領施行後のリーディング指導への示唆も示される。
  • 荒井 きよみ
    2013 年 36 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    個人化が進む現在,新たな社会的リスクに対応するためには,生活問題を事実から客観的に捉え,さらに価値形成をする段階の認識が求められる。高等学校家庭においてどのような授業が価値認識を育むのかを明らかにするために,家族・家庭に関する2つの授業での生活問題についての記述を分析対象とし認識レベルの比較からその変容を捉え,さらに学習過程について検討した。その結果,以下の3点を重視した授業方略が価値認識を育むと考えられる。  1  ライフイベントについての基礎的な事実資料から社会的リスクを客観的に現状把握し,学習者自らが状況に応じた価値判断を下す力を獲得する  2  社会的リスクに対立する見解を取り入れ,永続的な実践問題を分析し整理することで,学習者は多様な視点をもって共有できる具体的な視点を形成する  3  社会的リスクの対処についての意見交換において,様々な価値を持つ他者を通し学習者が価値の自覚と相対化を図る
  • ― 小学校道徳において開発した死に関する学習プログラムを用いて―
    大曲 美佐子, 榎本 ひろ子
    2013 年 36 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校道徳で開発・実践した「自分と家族について考える死に関する学習プログラム」を,中学校家庭科(技術・家庭科の家庭分野を中学校家庭科と記す)の「「A 家族・家庭と子どもの成長」において,2年生142名を対象に授業実践し,学習プログラムと学習教材との学習効果を検証した。検証は,1.生徒の学習後における振り返り文の分析 2.学習前後のアンケートによる学習プログラムの学習効果の分析 3.家庭科担当者の省察 から考察した。授業の振り返りで140名中67名が「家族や命を大切にしたい」と記述している。次に,アンケート分析の結果,学習前後で「人の死」「家族の死」「自分の死」に有意差が見られ,残差分析を見ると学習後に死を意識した生徒が増えたことが認められた。授業者の省察は,中学校家庭科で死に関する授業をすることは生徒が家族の死を受け止め,家族や命の大切さに気付くとともに,自分の死について考える良い教材であるという評価である。中学校家庭科で死に関する学習プログラムと学習教材について一定の学習効果が認められたと言える。
  • ~文学的な文章の場合~
    辻村 敬三
    2013 年 36 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,文学的な文章を読む指導における範読について,実際に行われている状況を調査によって把握し,範読時にどのような学習活動を伴わせることが効果的であるかについて,実験を通して検討することを目的とした。調査からは,範読のねらいが,内容の大体を理解させることと,物語を享受させることの2つに分かれている状況がとらえられた。また,範読時の学習活動は様々な内容が混在しており,ねらいとの関連性が十分意識されていない状況であることが確認された。実験からは,平均得点については,範読時の学習活動による顕著な差は認められなかったが,得点分布状況からは,「大事だと思う言葉や文に線を引きながら聞かせる」ことが,学力低位の児童に効果があることが示された。以上のことから,範読を行う際には,ねらいと指導方法の関連性を明確にした上で,児童に「線を引く」などの具体的な学習活動を行わせることに効果が期待できることが示唆された。
  • ―技能教科としての特質の認識を中心に―
    塚原 健太
    2013 年 36 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    唱歌科訓導の青柳善吾(1884-1957)の形式的段階論は,槙山栄次の『教授の段階に関する研究』(1905年)に理論的基盤を得て形成された。青柳の段階論と槙山の著書を比較した結果,青柳が槙山の著書から技能収得に関する情報を選択し,槙山の著書を引用しながらも唱歌教授の場合に読み替えながら受容したことが明らかになった。青柳は予備,教授,練習の三つの段階の中で,「練習」が最も重要な段階だと捉えていた。それは技能教科としての唱歌科では収得した技能を発表することが主眼であると,青柳が認識していたからである。また「予備」において,観念連合の原理に基づき,既習教材のリズムなどの音楽的要素と新教材のそれを関連させて類化することができると考えていたことから,青柳が形式的段階を教材選択という教材論との関連で捉えていたといえる。このように青柳は形式的段階を教授の手続きとして唱歌科に適用するだけでなく,その原理的な理解を試みていた。
  • 中須賀 巧
    2013 年 36 巻 2 号 p. 61-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,体育授業が生徒の運動実施に対する認知に与える影響について明らかにすることであった。そこで,本研究では,体育授業における動機づけ雰囲気知覚(成績雰囲気知覚及び熟達雰囲気知覚)→生徒の目標志向性(自我志向性及び課題志向性)→日常的な運動実施に対する認知というプロセスを想定したモデルの設定を行なった。調査対象は,中学生934名(13.8±0.9歳)であった。調査対象者には,体育における動機づけ雰囲気測定尺度,目標志向性尺度,現在の運動参加状況項目を記入させた。構成した仮説モデルは,多母集団同時分析によって検証を行なった。その結果,男子及び女子において両集団のモデルの適合度指標は,すべての指標において適合が良いと判断された。本研究の結果で特に注目されたい点は,以下の2点である。1つは,男女ともに動機づけ雰囲気知覚の両側面から現在の運動実施に対する認知に正の影響を与えていた。もう1つは,動機づけ雰囲気知覚から目標志向性を媒介し,日常的な運動実施に対する認知に正の影響を与えるプロセスは男子と女子に差異があることが明らかになった。このことから,生徒の日常的な運動実施に対する認知を促進するためには,体育において成績雰囲気知覚及び熟達雰囲気知覚のどちらの雰囲気も重要になることが示唆された。特に,その中でも熟達雰囲気知覚は生徒の日常的な運動実施に対する認知に与える影響は大きいことが明らかとなった。
  • 小池 守, 河崎 雅人, 内田 恭敬, 高津戸 秀
    2013 年 36 巻 2 号 p. 75-88
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    先に筆者らは,洗濯ばさみに輪ゴムを通して牛乳瓶の蓋を飛ばすキャップシューターを小学校3年理科で学ぶ「ゴムの力」を理解するための教材として報告した。本研究では公立小学校3年2学級を対象に「 ゴムの力」 の学びの実態に焦点を当てた2時間の理科授業を行い, 児童の学習内容の理解について,キャップシューターと既存の教材であるゴム動力自動車とを用いて比較検討した。A学級は第1時にキャップシューターを第2時にゴム動力自動車を用いた授業を行い, B学級はA学級とは教材の使用順序を逆にして授業を行った。質問紙調査の結果, 授業前後で児童の輪ゴムに関する認識は両学級共に変容したが,キャップシューターは学習のねらいに関わる「 力が出る」 という性質的認識の形成により有効であった。また, ゴム動力自動車による授業と比べ,キャップシューターを用いた授業では児童の理解度は高く,探究活動場面における児童同士の情報交換が促進された。さらに,ほぼ全ての児童はキャップシューターは授業に役立ったと肯定的に回答していた。授業内容のVTR 分析から,キャップシューターはゴム動力自動車と比べて製作時間が短く,探究活動の時間を十分に確保できることが判明した。以上の結果から,キャップシューターは「ゴムの力」の理解に適した教材であることが示唆された。
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