日本教科教育学会誌
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38 巻, 1 号
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  • 大曲 美佐子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学生を対象に死の意識と死別に伴う喪失体験との関係性,及び死の意識と自尊感情との関係性について検証することである。アンケート調査の結果から,本研究について研究課題1~3の考察を踏まえ総合的にまとめると,死を意識することと発達年齢とに差異は見られず,学年と関係なく80%以上の中学生は死について考えていることが認められた。また,生き物や身近な人を失うという喪失体験が死を考えることに影響したと考えられることから,死の意識と喪失体験との間に関係があると言える。さらに,中学生の死の意識と自尊感情については,「死を考えた体験がある子どもは自尊感情が高い」とは必ずしも言えず,死の意識と自尊感情との関係性について言及するには,更なる検証を重ねる必要がある。したがって,本研究の結果から中学生の死の意識との関係性がある一要因として,喪失体験の有無を挙げることができる。
  • 学習成果(態度得点)を高める教育内容の捉え方に着目して
    野津 一浩, 後藤 幸弘
    2015 年 38 巻 1 号 p. 11-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,「よい体育授業」を行うことができる教師は,教育内容をどのように押さえたり,捉えたりしているのか,ということの特徴を見出すことを目的とした。すなわち,小学校高学年を担当する教師に対し,ボール運動領域のバスケットボールと陸上運動領域のハードル走を対象に,教育内容に関するアンケート調査を行い,態度得点の高い教師とそうでない教師を比較することから,学習成果を高めるために押さえなくてはならない教育内容とその捉え方の特徴を明らかにしようとした。その結果,学習成果(態度得点)を高めている教師は,教育内容が明確にあるとともに,個々の内容の捉えが深いと考えられた。また,個々の教育内容を関連づけて捉えることができているという特徴が認められた。
  • 中学校教師への意識調査(質問紙調査)の数量的分析
    石上 靖芳
    2015 年 38 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学校国語科教師がこれまでの実践を通して形成されてきたと認識している授業力量に関する具体的要因を検討し,それがどのような研修機会の影響を受け形成が図られてきているのか,その関連性を捉え実証的に明らかにすることである。この目的を達成するために,A県内の中学校110校に質問紙調査を実施し,279名の国語科教師から回答を得て数量的分析を行った。その結果,第一に,中学校国語教師が認識している授業力量に関する具体的要因として,「基盤的素養」,「単元開発力」,「授業構想・展開力」,「学習者理解・統制力」,「学習評価力」の5つの因子が抽出された。また,授業力量の形成に効果を与えたと認識している研修要因として,「同僚との研修」,「校外研修」,「自主・自発的研修」,「組織体制・風土」の4つの因子が抽出された。第二に,中学校国語科教師は,授業力量に関する具体的要因の形成を図る上で,同僚との研修や自主・自発的研修が中核となり,ポジティブな影響を与えていると認識していることなどが明らかとなった。
  • 齋藤 隆彦
    2015 年 38 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    国語科において《類似》でつなぐことは修辞の一事項の「比喩」として多くは扱われる。しかし,《類似》でつなぐことは,修辞上の「言葉のあや」に収まらない。修辞と思考の関係について,波多野完治ら,多くの研究者が論じている。近代科学を支えてきた「客観的な正しさ」を積み重ねる思考は「同一」か「差異」かを問うことで成立する。そのような近代科学的思想のもとで,《類似》はあいまいさの源であった。しかし,アリストテレスらは《類似》のもつ可能性を高く評価し,今日また,《類似》の再評価が認知科学,哲学といった分野でなされている。本稿では,《類似》でつなぐ力を考察し,現前の「定型的には解けない問題」を解く重要な力と捉え,国語科における育成の意義と方法を考察する。
  • ESD(持続発展教育)を視点とした家庭科教育内容開発
    篠原 陽子, 仁紫 紘子
    2015 年 38 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    小学校家庭科衣生活領域で日常着の快適な着方を児童に指導する際に,衣服の快適性とはどういうことなのかを理論的だけでなく体験的・実践的に学ばせ,児童が自分と衣服との関係を知り, ESD の視点を持って自分の衣生活を営むことができるようにすることが大切である。本研究では, 衣服の快適性を科学的に解明するための教育内容として,「 衣服の肌ざわり」 を調べる実験の開発を目的とし, 衣服の快適性は, 衣服内気候, 衣服圧, 肌ざわりと関係があることから, 傾斜板法によって静摩擦係数を測定し, 衣服の表面摩擦特性ならびに着衣を想定した衣服間の摩擦特性にかかわる基本的な要因を明らかにした。衣服の静摩擦係数は, 衣服を構成している繊維の種類, 糸の形態や太さ, 布の織組織によって異なることが分かった。着衣状態における衣服間の静摩擦係数は, 衣服の組合せ方によって異なり, 湿潤した場合は静摩擦係数が大きくなることが分かった。また, 着用により表面が毛羽立った衣服は, 洗濯後に仕上げ剤を付与することで静摩擦係数が小さくなることが分かった。
  • 渡辺 裕美
    2015 年 38 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,ロシア語圏の日本人教師11名およびロシア人教師11名に質問紙調査を行い,日本人教師とロシア人教師の認識している発音特徴および認識の相違を明らかにした。その結果,これまであまり指摘されなかった,「文節末ごとに著しく強く発音する」などのアクセント・イントネーションに関する3項目と「撥音→すべてが[n]」が多くのロシア人教師によって指摘された。さらに,ロシア人教師は「第2尾音節を著しく強く発音する」などのロシア語の特徴が現れている項目を日本人教師よりも多く指摘することが示された。一方,日本人教師は特にアクセント・イントネーションの項目を見られないと指摘する教師が多いことが示された。以上の発音に対する日本人教師とロシア人教師の認識の相違をふまえ,日本語音声教育への応用について検討した。
  • 「継続的評価」に関する検討を通して
    高瀬 裕人
    2015 年 38 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,読者反応理論家であるジュディス・ランガーが提案する,文学の授業における〈像〉形成の評価の在り方について検討した。彼女は,「継続的評価」が効果的であると主張する。「継続的評価」は,文学の授業の中で学習者が生み出した作品を蓄積し,それらを資料として分析することで,評価情報として利用していく評価のことを指す。これにより,学習者のその時々の理解や,その理解の変化の様相を捉え,それらの理解を構築するうえでの学習者の振る舞いを評価することができる。本稿の意義は,文学の授業において,学習者の作品を蓄積するのみではなく,蓄積したものを〈意味の方向性〉〈スタンス〉〈思考方略〉という3つの観点から分析したうえで評価することが,学習者の理解の評価と,学習者の文学の読みに対する見方の形成とに寄与するという点で重要だということを明らかにした点にある。
  • 小・中学校の理科授業を円滑に接続するための検討事項を探る
    土井 徹, 林 武広
    2015 年 38 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小・中学校理科授業の円滑な接続を検討するための基礎資料を得るために,小・中学生の理科授業に対する認識と要望を明らかにすることにある。小学校6年生(以下,小学生),中学校2年生(以下,中学生)を対象に行ったアンケート調査の結果から,以下のことが明らかになった。① 小・中学校ともに,児童・生徒の情意面に配慮した教師のていねいな指導と問題解決が行われていることが推察される。相違点は,小学校では,一人で考えることと小グループで話し合うことが大切にされ,中学校では,受験への対応,新たな情報の提供,教師の「待つ」姿勢が大切にされている傾向が見られることである。② 理科授業への共通する顕著な要望は,「実験がしたい」である。小学生では発展的な内容への要望,中学生では刺激や面白さを求める要望が目立つ。③ 中学生の多くが理科の授業で困っていることは,学習内容の難しさであり,周りの人と相談させてほしいと思っている。
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