これまで,知覚-運動スキル学習の適応過程を一連の研究において検討してきた。今回は,これまでに得られた知見にもとづいて,次のような仮説を設定し,それを実験的に検討した。つまり,知覚-運動スキル学習の適応過程を考えた場合,運動課題を解決するための運動系列における反応選択の自由度は大切であること。しかし,学習のある段階においては,運動系列のプログラムを与えることが必要であること。そしてさらに,その運動系列を構成する要素は計画され,サブ要素は自由でなければならないということについて検討した。そこで反応選択の自由度に基づいて2つのグループを設け,スキルの系列学習を行なわせた。実験データは,試行数,試行遂行時間,成功試行数,予測およびタイミングといった5つの観点から分析された。その結果,反応選択の自由度の高い条件で学習したグループが,自由度の低い条件で学習したグループに比較して,適応事態で全般的に高いパフォーマンスレベルを示した。
抄録全体を表示