日本教科教育学会誌
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最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 石橋 一昴
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2022/06/20
    公開日: 2024/04/13
    ジャーナル フリー

     高等学校数学科では,確率や条件付き確率の導入で活動的にモンティ・ホール問題が扱われることがある。しかしながら条件付き確率の理解が十分でないままにモンティ・ホール問題を扱うと,生徒は余事象に注目した解法に目が向き,モンティ・ホール問題が条件付き確率の問題であると認識されないのではないか,ゆえに,条件付き確率を利用した問題解決能力の育成につながらないのではないか,ということが懸念される。そこで本稿では,条件付き確率の学習を終えた大学生を対象として調査を実施し,確率や条件付き確率の導入教材としてのモンティ・ホール問題の意義を明らかにすることを目的とした。結果として,モンティ・ホール問題に対して余事象に注目した解法に目が向くことが,条件付き確率を利用した問題解決能力の育成につながらない可能性を指摘した。その上で,確率や条件付き確率の導入教材として,時間軸の問題を提案した。

  • 鎌野 育代, 須﨑 康臣
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2022/06/20
    公開日: 2024/04/13
    ジャーナル フリー

     本研究は,人間関係学を創始した松村・斎藤(1991)の5つのかかわり方を理論として援用した家庭科家族学習におけるロールプレイングの授業を開発し,中学生を対象に授業実践を試み,家族・親との関係スキルへの効果を明らかにした。

     家族学習については,生徒の興味・関心は低いとされている。そこで,家族学習への興味の高い生徒と低い生徒の2つの群に分類し,ロールプレイングの効果として,受容,感情認識,行動認識,行為という関係スキルについて,量的調査を基に分析を試みた。

     ロールプレイングを含む家族学習により,中学生は学習への興味が高まること,興味が低い生徒については,学習により家族・親との関係スキルである受容を有意に高めること,さらに学習への興味に関係なく,感情認識,行動認識,行為の関係スキルが学習後に有意に高まることが明らかとなった。

     人間関係学に基づくロールプレイングを取り入れた家族学習が生徒の家族・親との人間関係スキルに影響を与えることから,今後,学習への興味と家族・親との人間関係スキルについてさらに検討していくことが重要である。

  • 松田 雅代, 溝邊 和成
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2022/06/20
    公開日: 2024/04/13
    ジャーナル フリー

     本研究では,自己調整学習を志向する小学校第3学年理科授業(「磁石の性質」)において,学習過程を加味した認知的表現ツールを活用し,概念変容とマップの記述分析及びメタ認知に関する意識調査を目的とした。

     その結果,概念の変容がとらえられ,概念定着についても効果が見られた。ツール上には,メタ認知の結果の表れである言語・非言語による多様な表現が見られた。多くの子どもは,実験の方法や結果に対して,言語と描画を併用した方法で工夫し自らが認知したことを表していることが分かった。オノマトペやメタファーをはじめ,問答形式や強調,比較などの多様な文章形式とともに,順序・手順を示す番号や矢印,枠組みの設定,彩色等の特徴が見られた。また,これらの特徴の取り上げた項目数や様々な組み合わせからは,子どもの理解の多様性が示された。意識調査の結果からも,マップに依拠する多様な表現と理解表現のモニタリングによって,子ども自身の行動と理解が豊かに表されていたことが分かった。

  • 池田 匡史, 新庄 真実
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 2022/06/20
    公開日: 2024/04/13
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,物語行為への批評とともに,学習者が現代の社会共同体において広めたい言説の創造を目指す古典教育実践を具体化し,高等学校で実践を行うことを通して,その学習の意義を検討することにある。

     具体的な手立てとして,「をばすて山」の二つの類話を教材として扱い,それらを比較し,語り手の意図を読みとった上で,その枠組みを用いつつ現代の問題領域を問う物語創作を設定するという単元を構想した。

     これらを踏まえ,高等学校二年生を対象とした実験授業を行った。その結果,言説の創造となりうる物語創作の成否は十分なものと言えないものの一定程度達成された。また,物語行為への批評については,多くの学習者で達成されたものと言える。これは,学習者がテクスト生成者の立場に立つ経験をしたことが要因として考えられる。

  • 中山 智貴
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2022/06/20
    公開日: 2024/04/13
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,連邦国家・州レベルでの文化教育(Kulturelle Bildung)の展開に着目し,ドイツ市民性教育における社会参加の基礎を形成する「文化的参加」の位置付けを明らかにすることである。連邦国家・州・実践レベルにおける「文化的参加」の整理・分析により,連邦レベルでは,1)諸コンピテンスやアイデンティティの形成による個人の自己形成的アプローチ,2)参加機会の拡大および芸術・文化による包括的な社会的結束のためのアプローチの2点,そして州・実践レベルでは,上記に加えて,3)社会参加の基礎を形成する問題解決的アプローチ,という位置付けが明らかとなった。

資料
  • 江藤 真生子
    原稿種別: 資料
    2022 年 45 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2022/06/20
    公開日: 2024/04/13
    ジャーナル フリー

     本研究では,小学校教師志望学生の前転の素朴概念を明らかにし,その修正を試みるための意図的な学習を実施し,素朴概念を修正できるかどうかを明らかにすることを目的とした。予備調査で抽出された前転の技術的課題の観点に対して,重要度を調査することで大学生の素朴概念を明らかにした。また,素朴概念を修正するために課題に取り組ませた。その結果,以下の2点が明らかとなった。

     1点目は,前転の技術的課題に対する重要度の認識を問う調査により,小学校教師志望学生の前転の素朴概念は,回転加速と伝導の技術を重要ではないと認識していることであった。2点目は,小学校教師志望学生の前転の素朴概念は,どのような運動感覚が重要かを意識し,仲間と協働して行う学習により変容することが示唆された。

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