日本教科教育学会誌
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35 巻, 4 号
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  • 宮田 斉
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 1-10
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    理科実験技能は実験活動の主要な構成要素の1つである。教師と児童・生徒の理科実験器具の操作技能の不十分さは,児童・生徒の態度形成に必要なエピソード,問題解決,認知的方略の形成に負の影響を及ぼすだけではなく,科学的な思考・判断・表現・コミュニケーションの各能力の高まりや知識・理解の深まりを妨げる原因となる。上皿天秤は小・中学生が操作し難い実験器具の1つである。この主な原因は,「皿に分銅を乗降させた結果に基づき数直線を用いて測定値の予想の範囲を収斂させる思考能力」と「つりあいを指針の左右の振れ幅で判断する技能」の不十分さにある。「上皿天秤モデル」を考案して授業実践による事例的研究を行った。その結果,上皿天秤モデルの製作・リハーサルの指導法は,小学5年生にこの思考能力と技能を習得させ,上皿天秤の基礎操作に関する知識と技能の習得を促すことが明らかになった。
  • 伊藤 宏
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 11-20
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,小学校5年児童が40m,60m,100mの三つの距離を全力疾走した時の平均速度と最高速度の実態を把握し,それぞれの疾走距離に対して児童がどのように意識しているかについて,多重指標モデルを適用して検討することを目的とした。速度の分析結果から,児童は走る距離が異なると平均速度や最高速度が有意に異なる水準で走っていたことが明らかになった。多重指標モデル分析結果からは,それぞれの疾走距離に三つの意識因子が抽出され,40m走では運動の楽しさと疾走感が,60m走では意欲好感度と達成感が,100m走では充足感と競争感とが強く結びつき,三つの距離に共通に見られた負担感は,それぞれ独立性の結びつきを示した。以上のことから,体育授業で短距離走を指導する場合,それぞれの疾走距離の特性や児童の意識を生かしながら展開されることが望ましいと思われる。
  • 木村 惠子
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 21-30
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,生活算術運動が緑表紙教科書に与えた実践的影響の実際を知るために,生活算術運動の指導的実践家の一人である香取良範の生活算術理論と実践を明らかにすることである。香取は,生活算術全盛期に生活を重視するあまり数理を軽視する傾向がみられた算術実践を憂い,教育学者篠原助市の『理論的教育学』理論を基盤に,篠原教育学の基本概念である「自然の理性化」を枠組みとして「生活」と系統的な「数理」とを分離した上で,両者を統合し一元化した組織的な算術教育実践の構築に取り組んだ。生活から数量を取り出し数理を導く「生活の数理化」と,発見した数理で生活を見る「数理の生活化」の連続した学習過程が「自然の理性化」の過程であり,篠原教育学を香取が算術教育に具体化した姿である。香取の学習過程と,作業を重視した実際的な学習法,学習者の課題探求心を喚起し続ける教師の働きかけは香取の算術教育カリキュラムの根幹である。
  • 中住 幸治
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 31-40
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,文法用語が英語学習において果たす役割を英語学習の当事者である学習者と教員の視点から検討することにある。そのために2種類の調査を実施した。第一に学習者の文法学習及び文法用語の活用意義についての意識を調査するために,高校生を対象に1)英語学習に対する意識,2)英文法学習や文法用語活用の意義に関する意見を尋ねた。第二に教員の文法指導及び文法用語の活用意義についての意識を調査するために,英語教員を対象に,1)英語授業での文法用語使用頻度,2)新学習指導要頷下での英文法指導の未来予測,3)英文法指導や文法用語活用の意義に関する意見を尋ねた。以上2つの調査結果を様々な視点から比較検討した結果,1)学習者の英語への印象の良し悪しが文法用語活用意義の理解度に影響を及ぼしている可能性,2)既習事項の思い出しという機能に関して学習者と教員間,さらに教員間でも認識に差異があること等が示された。
  • 藤井 浩樹, 猪谷 信忠, 坂田 絵理
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 41-50
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    自然事象についての理解や科学的思考力を促すことをねらいとした自然体験学習のワークシートを作成した。そして,中学校1年生を対象に,特に水生植物の内容のワークシートを用いて授業を行った。授業前後の調査から,次のことがわかった。(1)多くの生徒は,水生植物が水中や水辺で生活するのに適した体のつくりと働きを持っていることや,生徒の住む地域には希少な水生植物が多数生息していることを理解した。(2)多くの生徒は,植物を分類する際の着眼点を数多く挙げるようになり,比較分類する能力を伸ばした。(3)多くの生徒は,浮葉植物の葉の表側に気孔が発達していることと水生植物の生活環境との関係について理解した。ワークシートを用いた授業は,上記のねらいを達成する上で有効であることがわかった。そして,このことに観察と表現を重視したワークシートの特徴がかかわっていると考えられた。
  • 安慶名 名奈, 浅井 玲子
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 51-59
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    研究の目的は,沖縄の小学校5・6年生の生活技能習得の現状把握とその習得理由を明らかにすることである。公立小学校9校の児童1,063人に対してアンケート調査を行った。結果は次の通りであった。(1)技能習得に関する質問60項目を因子分析し生活技能習得尺度を作成した。その結果「興味・関心因子」「食生活因子」「生活環境因子」「衣生活因子」が抽出された。(2)女子はすべての生活技能因子得点が同学年の男子に比較して高かった。(3)5・6年生を比較すると生活技能習得得点は,「食生活因子」「衣生活因子」は6年生が高く,「興味・関心因子」「生活環境因子」は5年生の方が高かった。(4)「生活環境因子」は,他因子に比較すると全体的に得点が低かった。(5)父親の家事参加の有無は児童の「興味・関心因子」「生活環境因子」得点を有意に高め,母親の就労の有無では,因子得点に差は無かった。(6)「家庭科が好き」「家族のため」「自分のため」「将来の職業に生かすため」「夫婦で助け合うため」「自分の子どもに教えるため」「ほめられたり認められたりするため」などの習得理由は,生活技能習得得点を高めていた。
  • 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 61-65
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究は教科と教職を架橋する教科内容の構成原理と,思考力・判断力・表現力のそれぞれを明らかにするとともに,それらのすべを明確にした。
  • 竹内 伸子
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 67-70
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    この考察は2001年に行われた日本数学教育学会第34回数学教育論文発表会において東京学芸大学数学講座数学教育分野の藤井斉亮先生との共同研究「小学校算数から大学数学までを視野に入れた球の定義と性質についての一考察」として発表したものにもとづき,教員養成課程における数学カリキュラムの再考ということを目的に再構成したものである。直観的な理解をする算数的思考から厳密な数学的思考へと展開する際に,「必要十分条件かどうか」を考えるということが数学的厳密さを高める重要な思考方法の一つであるということを「球」という概念を例として取り上げ,考察する。
  • 三村 真弓
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 71-76
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿では,音楽科教員養成における,教職と教科を架橋する教科構成原理を,学生の教育実習体験とその省察を通して明らかにすることを目的とした。その結果,音楽実技科目や教職専門科目で学んだことが,音楽科授業で活用されているとは言い難いことが明らかとなり,教科教育と教科専門と教職専門を架橋する授業の必要性が明確になった。また,演奏評価・作品評価や,表現技術等の指導力は,専門実技科目や合唱・合奏などのアンサンブル科目によって獲得されることがわかった。これらのことから,音楽科構成原理を図示し,さらにそれに基づいたモデル・コア・カリキュラム試案を提案した。
  • 深澤 清治
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 77-82
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    現在の教員養成に共通する課題のひとつは,大学における講義と,実際の教室場面における実践との乖離であろう。教育実習を終えた実習生や実習指導担当者からは,教員養成プログラムの改善を求める声が聞かれる。この原因を短絡的に英語力の不足と片づけてよいはずはない。英語授業場面に適切かつ柔軟に対応する総合的な授業力の育成は,英語教員養成に係わる者すべてが,共通してその責務を負うべきものであり,そのためにはまず「英語教員に求められる力は何か」という命題に共通認識を持つ必要がある。そこで,本稿では,教科共通のモデル・コア・カリキュラム策定の前に,まず英語科教員に求められる資質能力の構成要素を考えながら,英語という教科特有の教科構成原理を探究することを目的とする。
  • 藤井 斉亮
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 83-88
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    授業研究は,わが国の学校文化の中では日常化されていて,その価値や特徴が自覚されにくい。一方,諸外国ではThe Teaching Gap(1999)の出版以来,日本の授業研究が注目を集め,授業研究の構成要素や理論的背景の顕在化が求められてきた。本シンポジウムではわが国の算数数学教育における授業研究の現状とその問題点として,次の4つを指摘した。(1)授業研究は理論なき実践でいいのか(2)問題を解くことが問題解決型授業か(3)研究授業後の協議会で指導技術の検討に始終していていいのか(4)教材研究が重要であることの認識が不十分なまま研究授業を行っていいのか
  • 渡部 竜也
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 89-94
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,一般教育学がこれまで開発してきた授業研究は,教師の細かな授業技術の見直しとその向上には有効だが,授業や単元,カリキュラムのねらいや構造について哲学的に問い直すことには不向きであること,つまりそもそも論から社会科授業のあり方を問えないことを例証し,その問題解決の一案として我が国の社会科教育学が生み出した二段階分析法や授業理論類型化などのアプローチが有効であることを,簡単にだが説明することをめざす。
  • 加藤 富美子
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 95-98
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    音楽科の教師の指導力の向上に寄与する授業研究の在り方を探るために,以下の3点から話題提供を行なった。第1に,音楽教育学における「授業研究の方法」研究の概観である。第2として,これまでの「授業研究の方法」研究が教師の音楽科の指導力の向上にどのように寄与してきたかについての考察である。そして,第3に音楽科の授業研究の特性をふまえた今後の方向性をまとめた。これまでの音楽科の授業研究では「授業過程」の記述に大きな関心が寄せられてきた。ストップモーション,民族誌的方法などによる,子どもたちの音楽の学びの記述が試みられてきた。しかし音楽科にあっては授業の成果は,子どもたちの音楽の感受のしかたや表出の様相から読み解くことが欠かせず,そのための授業記述の在り方については更なる研究がのぞまれている。
  • 立木 正
    原稿種別: 本文
    2013 年35 巻4 号 p. 99-103
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    何のために授業研究を行うのかは,子ども(児童・生徒)にどんな力を身につけるかに関係する。体育授業で,体力向上をねらうのか,技能向上を第一に考えるのか,運動固有の魅力・楽しさを味わわせるのかによって,授業改善の視点も変わる。体育授業で押さえるべき点は,自ら課題を設定し,創意・工夫,努力により,主体的・意欲的に,お互いに学び合いながら学習に取り組む力を育むことである。「課題設定力」や「課題解決力」を身につけ,結果として「体力や技能」を向上させる必要がある。「習得学習と探究学習」をバランスよく関連させながら,「内容面」と「方法面」からの「基礎・基本」を1人ひとりに身につけることが,授業改善を図る体育科授業研究に求められる。
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