本研究では,小学校5年児童が40m,60m,100mの三つの距離を全力疾走した時の平均速度と最高速度の実態を把握し,それぞれの疾走距離に対して児童がどのように意識しているかについて,多重指標モデルを適用して検討することを目的とした。速度の分析結果から,児童は走る距離が異なると平均速度や最高速度が有意に異なる水準で走っていたことが明らかになった。多重指標モデル分析結果からは,それぞれの疾走距離に三つの意識因子が抽出され,40m走では運動の楽しさと疾走感が,60m走では意欲好感度と達成感が,100m走では充足感と競争感とが強く結びつき,三つの距離に共通に見られた負担感は,それぞれ独立性の結びつきを示した。以上のことから,体育授業で短距離走を指導する場合,それぞれの疾走距離の特性や児童の意識を生かしながら展開されることが望ましいと思われる。
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