本研究では,新しい学習指導要領において要請されている子どもの科学的な思考・表現の育成に関わり,子どもが自律的に科学概念を構築する理科授業の確立のための教授方略に関する知見の導出を目的とした。和田ら(2012)によれば,子どもの科学概念構築過程における表象の操作レベルと自己調整の発達は相互に関連していることが明らかとなっている。本研究では理科学習における自己調整の促進に不可欠な探究的学習に関して,その教授的アプローチを具体的に指摘するKhan, S.(2007)のGEM 理論を援用することによって,子どもが自律的に表象を操作して科学概念を構築する学習を支援する視点を導出した。 結果として,探究過程に見られる教授的アプローチを踏まえた具体的な教授方略の策定を通じて,自己調整の発達と科学概念構築に関わる表象機能の高次化の相互連関過程が促進された。また,教授過程において子どもの表象の内実を可視化することは,教授方略の策定および機能向上に不可欠な視点であった。
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