日本教科教育学会誌
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37 巻, 2 号
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  • PISA を背景にした「学びの学習力」に注目して
    池田 和正, 有本 昌弘
    2014 年 37 巻 2 号 p. 1-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    learning to learn(L2L:学びの学習力)は,キー・コンピテンシーの中核とされ,PISA の分析報告書によると,形成的アセスメントによる指導がその獲得に有効性があると指摘されている。本研究では,高校教員の日常の学習指導に注目し,学習指導の背景にある共通する内容に注目した。そこで,主体的な学習につながる指導方法の取組状況を質問紙調査による把握・分析を通して,「学びの学習力」に関する指導の特徴を捉え,今後の教育改革の一助とするものである。調査の結果,多くの高校教員が,(1)授業において助言等で自力解決を支援することや(2)誤答は理解へのチャンスと励ましており,部分的ではあるが「学びの学習力」につながる指導を取り入れていることが明らかになった。しかし,授業において(1)主体的に探究する指導や(2)自己の学習状況を把握させる指導については,担当教科の違いに関係なく,各教員による差が大きく今後の課題として浮かび上がった。
  • 和田 一郎, 森本 信也
    2014 年 37 巻 2 号 p. 15-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,新しい学習指導要領において要請されている子どもの科学的な思考・表現の育成に関わり,子どもが自律的に科学概念を構築する理科授業の確立のための教授方略に関する知見の導出を目的とした。和田ら(2012)によれば,子どもの科学概念構築過程における表象の操作レベルと自己調整の発達は相互に関連していることが明らかとなっている。本研究では理科学習における自己調整の促進に不可欠な探究的学習に関して,その教授的アプローチを具体的に指摘するKhan, S.(2007)のGEM 理論を援用することによって,子どもが自律的に表象を操作して科学概念を構築する学習を支援する視点を導出した。 結果として,探究過程に見られる教授的アプローチを踏まえた具体的な教授方略の策定を通じて,自己調整の発達と科学概念構築に関わる表象機能の高次化の相互連関過程が促進された。また,教授過程において子どもの表象の内実を可視化することは,教授方略の策定および機能向上に不可欠な視点であった。
  • 健康情報評価カードの開発と授業効果の分析
    山本 浩二, 渡邉 正樹
    2014 年 37 巻 2 号 p. 29-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学生を対象とした健康情報リテラシーを育てる保健授業を開発することである。本研究では,国立大学附属中学校1年生を対象に,2クラス80名ずつ介入群,対照群とした。介入群では「健康情報を正しく選択する方法」の授業を実施し,学習教材として「健康情報評価カード」を開発して,使用した。授業評価には,「健康情報の批判的思考尺度」を開発して,用いた。その結果,介入群では授業前に比して授業後の「健康情報の批判的思考尺度」得点が高まった。また,対照群と比較して,介入群において尺度得点が改善された。また介入群では7割を超える生徒が「健康情報評価カード」を有効に利用していた。本授業において,中学生の保健授業として「健康情報リテラシー」を高める効果が認められた。
  • 佐伯 英人, 上野 和彦
    2014 年 37 巻 2 号 p. 39-49
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,まず,維管束観察に関する基礎研究を行った。その結果,トルイジンブルー染色で,木部(道管)と師部(師管)をアスパラガスと同程度,異なる色調に染め分けられる8種の材料を新たに示すことができた。また,生徒が観察を通して木部(道管)と師部(師管)を識別することができやすい教材として2種(セイヨウカラシナ,「はなっこりー」)を示すことができた。次に,これら3種(セイヨウカラシナ,「はなっこりー」,アスパラガス)を教材として,赤インクとトルイジンブルー染色を併用した学習を高等学校の2つの学級(進学希望のA組,就職希望のB組)で行った。質問紙法で3つの項目(項目①「道管の位置が分かる」,項目②「道管の形状が分かる」,項目③「師管(師部)の位置が分かる」)を調べ,分析した結果,授業実践の有効性を生徒の理解の程度という視点から検証することができた。
  • 仮定法の場合
    中住 幸治
    2014 年 37 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は(1)良質な例文を使った英文法指導による学習者の文法項目への理解深化,(2 例文がより学習者の印象に残る要因,(3)学習しやすい例文の条件, 等を吟味することにある。英文法指導での例文の質に関してはさまざまな議論がなされているにもかかわらず,それを実証的に検討した研究はほとんど見られない。そこで,日本のある高等学校の2クラス(統制群19名,実験群20名)で仮定法の実験授業が行われた。授業に加えて,事前テスト・授業直後のテスト・授業から約2ヶ月おいてのテスト・アンケート調査も実施された。t 検定・多重比較・分散分析等を用いて分析を行った結果,(1)例文の質を考慮して指導することによって,指導後時間を経て文法理解の定着につながる可能性,(2)例文中の語数や,文脈が付与されているかどうかが,学習者の印象度に影響を及ぶす可能性,(3)例文内容・例文の簡潔さ・文法要素の焦点化等を考慮する必要性,等が示唆された。
  • 表形式とグラフ形式を中心として
    雲財 寛, 松浦 拓也
    2014 年 37 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,科学的推論において使用するテキストの形式の違いが,推論の過程や結果にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。このため,科学的推論をKuhnの「理論と証拠の調節」という視点から捉え,科学的推論を「理論から証拠への推論」,「証拠から理論への推論」,「思考過程を吟味する推論」という3つの側面に分けて捉えた。そして,証拠としてのテキストの形式の違いが,理論と証拠の調節の過程や結果にどのように関わっているかを検討するために,推論する際のテキストの形式に着目した問題を作成した。この調査問題において着目したテキスト形式は,表形式とグラフ形式の2種である。中学生を対象に調査を実施した結果,「理論から証拠への推論」と「証拠から理論への推論」では,テキスト形式によって推論結果に差が生じた。このことから,これら2つの側面では,証拠となるテキストの形式の特性が,推論の結果に影響を及ぼしていると考える。また,「過程を吟味する推論」では,提示したテキストの形式の特性が推論の結果に影響を及ぼしているとはいえなかった。
  • 自己評価のとらえ方の変遷を中心として
    中島 雅子, 松本 伸示
    2014 年 37 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,自己評価のとらえ方を歴史的にたどることで,理科教育における自己評価で重視すべき要素を明らかにすることにある。その際,概念の形成過程の自覚化という視点に注目した。その理由は次の2点にある。1つは,概念形成が適切になされるためには,その過程を学習者自身が自覚する必要があるからである。もう1つは,授業改善が適切になされるためには,教師がその形成過程を把握することが必要だからである。まず,これまでの自己評価における論点を抽出した。次に,それらをふまえ,現在日本の理科教育における自己評価論で重視すべき要素を明らかにする。 その結果,次の4点を指摘した。第1に,「構成主義」的な学習観である。第2に,概念形成の自覚化という視点である。第3に,「学ぶ必然性」,「学ぶ意味」の育成である。第4に,教師の授業評価は,学習者の自己評価と結びつくことで,適切になされることである。
  • CURRV モデルについての検討を通して
    高瀬 裕人
    2014 年 37 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,アメリカのリテラシー教育評価論者であるピーター・アフラーバックが提案しているCURRV モデルを取り上げ,「読むこと」の学習の効果的な評価方法の選択・利用のあり方について検討した。CURRV モデルは,従来評価方法について検討する際の観点とされる「信頼性」と「妥当性」に加え,「役割と責任」「結果」「実用性」という3つの観点を用いて評価方法について検討することを要求する点に独自性がある。CURRV モデルを用いて評価方法について検討することは,「読むこと」の評価がなされる特定の状況の中でのその評価のあり方が適切なものかどうかを明らかにすることを意味する。本稿の成果は,CURRV モデルの各観点についての検討を通して,評価方法を効果的に選択し実践していくために評価が行われるその状況に目を向け,その中での評価方法の適合性を判断していくことが重要であることを明らかにしたことである。
  • 動作とシャトルスピードの関係から
    日高 正博, 佐藤 未来, 後藤 幸弘
    2014 年 37 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,バドミントンの技能を評価するための一つの基準を作成した。すなわち,女子を対象に,オーバーヘッドストロークから打ち出されるクリアーの映像をもとに,各被験者の動作を「ステップの有無」「腰の捻りの有無」「上腕の位置と遅れ」「前腕の遅れ」の視点から分類した結果,オーバーヘッドストローク(クリアー)のフォームは8つに集約され段階付けされた。また,8つの段階点とシャトルスピードの間に有意な相関関係のあることが認められたことから,作成されたクリアー動作の段階点は動作得点としてよいと考えられた。
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