日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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13 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 古田 幸子, 吉井 明子
    原稿種別: 本文
    1989 年13 巻2 号 p. 37-42
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    布を縫合するための技能である運針は,和服縫製の主役として伝習的に教示されてきた。学校教育においても被服製作が実利性のみを目的としたものであったため,運針技能の習熟は必要不可欠なものであった。これからの家庭科においては,このような技能の習得のみでなく,縫製の原理,手作業の意義等を理解するための教材としても意図的に新しい観点から取り扱うべきものであると考える。そこで本報では,運針動作の原則や基準を解明する手がかりとして,アイマークレコーダーの装着により眼球運動を観察して,運針時の注視点を検討した。さらに関与筋の筋電図解析,動作分析,および縫い目の評価を行い若干の知見を得た。これらの結果は,家庭科被服領域において,運針に代表される基礎縫いを人体とのかかわりの中で理解し,指導するという新しい観点からの教材化のために有効であると考える。
  • 吉原 崇恵, 小川 裕子
    原稿種別: 本文
    1989 年13 巻2 号 p. 43-53
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    家庭科の教科として展開される授業実践がどのように発展してきたのかについての研究は緒についたばかりである。東京教育大学附属小学校の初等教育研究会『教育研究』に掲載された1946年7月から1962年5月までの担当者による授業記録や論述を分析した。その際,授業実践の背景にある教科観によって時期区分を行った。次に教師,子ども,教材,指導方法の間の関係の発展を分析した。その結果,教科観の特徴から4つの時期に区分された。また,家庭科における技能習得の位置づけが変化してきたことがわかった。生活実態と民主的家庭建設の課題に必要な価値づけから,子どものわかり方としての価値,家庭科の独自性としての位置に変わっていった。また,子どもの学習心理は一貫して重視されていたが生活の必要を反映した学習心理のとらえ方から指導方法の問題関心への変化を示していた。自然科学的な指導の研究も,子どもの学習心理から導かれたことがわかった。
  • 大作 勝
    原稿種別: 本文
    1989 年13 巻2 号 p. 55-60
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    ドイツ連邦共和国の小学校(Grundschule)に於いて用いられている生活科(Sachunterricht)の教科書の内容について紹介した。記述は2年生および4年生用教科書についてのみ限定した。生活科の中での社会科的要素と理科的要素の相関について述べ,またドイツに於ける場合と日本における場合の地理的及び社会的状況の違いの教科書への反映についても略述した。
  • 千駄 忠至
    原稿種別: 本文
    1989 年13 巻2 号 p. 61-67
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    小学校における体育科の授業では,一般に「競争」,「克服」,「達成」,「模倣・変身」などの運動の楽しさを味わわせることが強調されてきた。しかし,体育科の授業の楽しさは,運動によってはこれらの楽しさ以外に他の楽しさもあり,また,楽しさは相互に関連しあっていると考えられる。本研究は,小学校5・6年生を対象とし,体操,器械運動,陸上運動,ボール運動,水泳,表現運動の各預域の学習における楽しさの種類を因子分析法により分類することを試みた。また,各領域における因子間の関係はパス解析を用いて構造化を試みた。主な結果は次のとうりであった。1)各領域に共通し説明力のある楽しさは,「達成」の因子であった。2)各領域においては,「達成」の因子と「主体性」,「優越」,「指導」,「向上」,「緊張」,「工夫」などの因子が関連し楽しさの因子構造の中核になっていた。3)領域別の特徴として水泳では,「達成」の因子を中核として「スリル」,「向上」,「緊張」の因子が結合し,また,ボール運動では「達成」,「向上」,「優越」の因子が結合していることが認められたが,他の領域では特別な関係は見出せなかった。
  • 後藤 幸弘, 梅野 圭史, 林 修, 野村 俊文, 長尾 精二
    原稿種別: 本文
    1989 年13 巻2 号 p. 69-77
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    小学校第6学年の4学級を対象に,バスケットボールを題材に,教材の構造化の観点の相違いが児童の態度や技能に影響を及ぼすかどうかを検討した。教材は次の4つの観点から構造化した。(1)「イメージ型」:著者らの提唱する児童の教材に対するイメージ(児童の課題の形成の流れ)を尊重する観点(2)「ゲーム変化型」:ゲームの発展過程を追体験させるという歴史的観点(3)「コンビネーション型」:運動文化の伝達の立場から,教材の特性をくずさない最小の技術単位である「パスからのシュート」を主軸にする観点(4)「シュート型」:児童の欲求を満たす行為を重視し,「シュート」という個人的技能を主軸にする観点である。児童の学習行為の側面は「よい授業への到達度調査」と「ゲーム様相」の変化から,学習行為の積み重ねによって生じる学習成果の側面は「授業に対する態度」,ならびに「ゲーム様相の変化」からそれぞれ記述-分析した。教材の構造化の観点の相違は,児童の「授業に対する態度」や「集団技能」に影響することが認められた。すなわち,「イメージ型」の教材構成は,「ゲーム変化型」,「シュート型」に比して,「授業に対する態度」ならびに「集団技能」を向上させることが認められた。また,「コンビネーション型」の教材構成よりも「授業に対する態度」をより高めることが認められた。
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