小学校における体育科の授業では,一般に「競争」,「克服」,「達成」,「模倣・変身」などの運動の楽しさを味わわせることが強調されてきた。しかし,体育科の授業の楽しさは,運動によってはこれらの楽しさ以外に他の楽しさもあり,また,楽しさは相互に関連しあっていると考えられる。本研究は,小学校5・6年生を対象とし,体操,器械運動,陸上運動,ボール運動,水泳,表現運動の各預域の学習における楽しさの種類を因子分析法により分類することを試みた。また,各領域における因子間の関係はパス解析を用いて構造化を試みた。主な結果は次のとうりであった。1)各領域に共通し説明力のある楽しさは,「達成」の因子であった。2)各領域においては,「達成」の因子と「主体性」,「優越」,「指導」,「向上」,「緊張」,「工夫」などの因子が関連し楽しさの因子構造の中核になっていた。3)領域別の特徴として水泳では,「達成」の因子を中核として「スリル」,「向上」,「緊張」の因子が結合し,また,ボール運動では「達成」,「向上」,「優越」の因子が結合していることが認められたが,他の領域では特別な関係は見出せなかった。
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