日本教科教育学会誌
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37 巻, 4 号
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  • 石井 雅幸, 角屋 重樹
    2015 年 37 巻 4 号 p. 1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校で受けてきた学習指導要領の理科により,科学の暫定性の理解に違いがあるか否かを明らかにすることを目的とした。このため,科学の暫定性の考え方を導入した平成10年告示の小学校学習指導要領理科が完全実施される以前の2000年と,同学習指導要領完全実施後の2009年とにおける,小学校高学年児童の科学の暫定性の理解を測定できる質問紙法調査を実施した。調査問題は科学の創造性,発展性,テスト可能性,簡潔性の4尺度から構成した。その結果,学習指導要領完全実施前後で簡潔性に関して両者に違いがなかった。これに対して,科学の創造性,科学の発展性,テスト可能性に関する理解に違いが生じた。特に科学の創造性に関しては,平成10年告示の学習指導要領完全実施後の児童では適切な理解をしているという違いが見られた。
  • 渡辺 理文, 長沼 武志, 高垣 マユミ, 森本 信也
    2015 年 37 巻 4 号 p. 11-23
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,Shepard(2000)の提案に基づき,形成的アセスメントの方略モデルを構想した。そして,モデルに基づき理科授業を構想した。形成的アセスメントの実践のために,Paris and Turner(1994)が提案する「プロジェクトに基づいた学習」,「パフォーマンス・アセスメント」の考えを援用した。また,パフォーマンスを評価する視点は,Perkins, Crismond, Simmons, & Unger(1995)の提案を援用した。小学生における水蒸気の概念の構築を事例として,構想した形成的アセスメントの方略モデルが科学概念の構築に寄与するか否かを検証した。結果として,構想したモデルに基づいた授業が,科学概念の構築に寄与することが明らかになった。本研究で構想した形成的アセスメントの方略モデルの有用性が検証された。
  • 教室談話からの分析
    黒田 篤志, 森本 信也
    2015 年 37 巻 4 号 p. 25-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,対話的な理科授業における教師の足場づくり(scaffolding)について,教室談話からその機能を分析した。足場づくりは,Vygotsky が提起した発達の最近接領域(zone ofproximal development)を形成する為に,Wood らにより他者との相互行為によって上位概念への到達を促す機能として考案された概念である。Wood らが提起した六つの機能を,教師の発話を分析する枠組みとして参照することで,授業における教師の足場づくりについて調査を実施した。その結果,教師は,子どもとの対話を媒介として即応的に足場づくりの六つの機能を活用しながら科学概念構築を図っていることが明らかとなった。
  • 高等学校吹奏楽部を対象にした実証的な検討
    小林 剛志
    2015 年 37 巻 4 号 p. 37-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    音楽構築過程では,意味の伝達においては不十分であるにもかかわらず,わざの習得にとって重要な場面に頻繁に言語が使用され有効に機能している。本稿ではわざ言語に焦点をあてそのメカニズムを明らかにする。わざ言語の原理的な展開やその実践を対象にした先行研究では音楽内容そのものと言語との2項関係で論考がなされていたが,本稿ではこれに対して身体を組み込んだ3項関係でそれらを捉え直した上で,上記の2項に着目した実証的な論考を展開し,身体位相の在り方を変容させるために,わざ言語が感覚によってのみ捉えられる次元へ直接的なはたらきかけを行っていることを把握した。多様で多元的な感覚の動員や「地」の設定による「図」の定義の明確化,サウンドを捉える主体・客体の立場を変えた提示や個別具体的な状況を超越する感覚の喚起という実践的な機能をわざ言語が有することを事例分析によって新しく発見した。
  • 中学校での長期的考察をもとに
    齋藤 隆彦
    2015 年 37 巻 4 号 p. 51-61
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    一般意味論においてS・I・ハヤカワは「抽象のハシゴ」の概念を提示し,その昇降の力が表現・理解・思考といったことに強い影響を与えることを述べた。また,児童言語研究会など,この力の育成の重要性を説き,実践研究もなされている。しかし,稿者は,現前の生徒を見るとき,その力の育成は不十分であり,その育成を図るべきであると考える。稿者は「抽象のハシゴ」昇降に関わる力を,「抽象と具体を見分ける力」と「抽象化・具体化する力」の二つと捉え「抽象・具体の力」と呼ぶ。本研究において,「抽象・具体の力」をつけるための方策として,帯単元を使った連続的集中的な取り組みで単語から文,段落単位へと発展させること,定期試験を使って,学習の機会の連続化を図ること,直接,発問せず文章を読ませて抽象・具体の構造を読み取らせること,プレゼン演習を使って,その応用の機会を造ることなど提案し,一連の実践の有効性を検討した。
  • 藤川 義範, 林 武広
    2015 年 37 巻 4 号 p. 63-72
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    理科の入門期における児童の方位認識の実態と特徴を明らかにすることを目的に,小学校第3学年“太陽と地面”の指導実践および4学年時での定着状況を通した検討を行った。その結果,空間で自分を中心としたときの四方位を考える問いに対して,第3学年時で指導後の正答児童が約7割であったが,それから半年後の正答児童が約5割に低下した。理科入門期で方位認識の定着は容易ではなく,自分の体を中心に四方位を考えるとき,前後の方位では正しく判断できるが左右の方位で混乱する児童が少なくないことが明らかとなった。
  • 各科教育学を越えて
    深澤 清治
    2015 年 37 巻 4 号 p. 73-76
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    日本教科教育学会が設立されてから兵庫研究大会で第40回を数えることになった。人間として「不惑」の年であるように,学会という研究組織として,ひとつの独立した学問領域としての存在価値をさらに確固たるものにしていく必要がある。近年,教科教育を取り巻く状況の中,新たな学問分野や領域名が模索されつつある。そのような中で,本シンポジウムにおいては,本学会が平成26年度の研究企画として出版の準備を進めているハンドブック『今,なぜ教科教育なのか-教科の学びを通した人間形成-』との連携企画として,3人の研究者からの提案をもとに,教科教育の意義や特色,研究内容に関して今一度改めて考察,検討し,これからの教科教育のあり方を議論する機会を提供することを目的とする。
  • 教科の成立基盤に関する視点から
    角屋 重樹
    2015 年 37 巻 4 号 p. 77-83
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿は,教科の成立基盤に関する視点から,これからの教科教育のあり方を探ることを目的とする。このため,①教科区分や教科の意味・意義,②教科における内容構成,③教科で育成する人間性,④学習指導と評価のあり方,という下位目標を設定し,これらを順に論究した。その結果,次の4点が明らかになった。①既存の学問は固有の対象領域と方法という対象に関する認識が異なることから成立する。このため,既存の学問を負荷する各教科は認識の仕方の違いをもとに存立する。②教科の内容は既存の学問を背景に,それを子どもに適合するように組織する。③すべての教科は教科の本質をもとにした人間性を育成する。④各教科の学習指導と評価は,教科の本質にもとづき,人間形成という教育的価値をもとに学力を育成する。
  • 教科内容学の視点から
    西園 芳信
    2015 年 37 巻 4 号 p. 85-92
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    我が国の戦後の教員養成の理念は,学問や芸術の専門的知識と経験を修めることによって人間としての教養や知識を高めることであったが,時代とともに教員養成の専門分野の内容についても,教育実践との関連性の観点から捉え直しが進められてきた。このような中で,教員養成においては,教科教育学という専門分野が認知され,現在は,教科内容学という専門分野の必要性が求められている。教科内容学の学問研究は,現在の教科専門の内容を教育実践の観点から捉え直し教員養成独自の専門分野として構築することである。このことで,教育における教科内容の理解が深まり,結果的に教科教育学の充実・発展に結びつくことになる。
  • 教科開発学の視点から
    白畑 知彦
    2015 年 37 巻 4 号 p. 93-98
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    愛知教育大学・静岡大学教育学研究科に共同で設置された後期3年のみの博士課程,共同教科開発学専攻では,これまで別々に捉えられていた感のある「教科専門」「教科教育」「教職専門」の3領域を融合し,新たな学問領域,「教科開発学」を構築しようと努めている。つまり,教科開発学は,教職専門分野を学校環境だけでなく,地域,社会,文化を含んだ幅広い視点から研究しようとする「教育環境学」,そして教科専門と教科教育の融合による教科内容の構成に関する研究を中核とし,教育論・教育内容論,教材論という側面から研究する「教科学」から構成されている。学生の博士論文は3領域のいずれかが基軸になるとはいえ,他領域の要素も加味したものになることが求められる。このような枠組みの根底には,教科教育学という学問領域は単独で存在するよりも,教職専門,教科専門領域と密接に関連し合う方が,よりその存在感が増し,教職を目指す学生への貢献度も大きくなるという考え方がある。
  • 外遊びの連続性に着目して
    藤池 陽太郎
    2015 年 37 巻 4 号 p. 99-104
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,外遊びのモデルの作成及び実践検証することで,幼児の運動の在り方についての考察を行った。9日間の実践の結果から,遊びの熱中度が高まれば身体活動量が増えることが明らかとなった。さらに,熱中度を高めるためには遊びの連続性を保つこと,リーダーが必要であること,リーダーを中心とした役割遊びとなるように援助をすること,ふりかえり活動によりこだわりを成立させること,環境の制限が重要であることが明らかとなった。
  • 大平 美鈴
    2015 年 37 巻 4 号 p. 105-110
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    総合的な学習の時間において探究的な学習を充実させることが学習指導要領に明示されている。それは,各教科を横断して習得された知識・技能を探究的な学習によって総合的に働かせ,実生活や実社会で生きて働く資質・能力を育成することをねらいとしているからである。本稿では,まず,探究の構造を明らかにし,総合的な学習の時間における探究の過程を明確にする。そして,実態調査から現任校の児童に育成しようとする資質・能力を明らかにし,探究的な学習を通して,それらが身に付くことを目指して単元を構想する。課題意識をもった教師が,教育現場で活用できるものになるように,探究的な学習の充実を目指した単元構想のあり方について論じる。
  • 小学校第4学年「産業と人々のくらし」において
    植田 真夕子
    2015 年 37 巻 4 号 p. 111-116
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,社会科における思考の重要性を論じ,子どもの思考をうながす授業者の手立てのあり方について提案する。特に,授業を展開する際によりどころとなる学習指導案に組み込む「学習過程図」と「活用する資料を組み込んだ知識の構造図」を開発する。この2点を開発することで,子どもに資料活用をとおして思考をうながすことができること明らかする。そして,このような授業構成が,子どもの社会認識が形成されることを示す。
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