本研究では,これまでボールゲームがどのように分類されているのかを文献的・理論的に検討することを通して,それらのゲームの「戦術」にある法則性を明らかにし,ボールゲーム全体を貫く「戦術」の系統化を試みた。対象とした4つの分類論から『マトを突く』,『ズレを突く』,『ズレを創り出して突く』という三つの大きな「攻撃課題」が導き出され,これらは,さらに「守るマトの大きさ」,「直接妨害の有無」,ゴールの大きさに起因する「攻撃の方向性と攻防の切り替えの速さ」によって7つに細分された。すなわち,すべてのボールゲームを貫く「戦術」の系統は,『突く』を幹にして『マトを突く』・『ズレを突く』・『ズレを創り出して突く』に階層化し,『ズレを突く』については「守るマトの大きさ」を,『ズレを創り出して突く』については「直接妨害の有無」と「攻撃の方向性・攻防の切り替えの速さ」を視点に7段階に系統化でき,種目主義を越えたカリキュラムが編成できると考えられた。また,戦後の小学校「学習指導要綱」,「学習指導要領」,「指導書」に取り上げれられていた64種目のボールゲームは,本研究で見出された戦術の体系に,すべて当てはめ得ることができ,『マトを突く』ゲームのほとんどが低学年に,『ズレを創り出して突く』ゲームの多くは高学年に,位置づけられていることが認められた。
抄録全体を表示