日本教科教育学会誌
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28 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 竹尾 隆浩, 松本 伸示
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,Ryan & Deciの外発的動機づけを段階的なものとするとらえ方に着目し,総合的な学習の課題設定場面における動機づけについて事例研究を通して検討を試みたものである。動機づけにおいて重要とされる自己決定の認識を中心に,「学習者中心の本質的特徴は,学習内容に関する決定を自らが行うこと,すなわち自己決定することである」という立場から,総合的な学習の授業実践を質的に分析した。その結果,興味や関心,問題意識の高まりなくして自己決定はありえないということ,また,自己決定を生かす大切な要因として,共に学ぶ友達の存在の重要さが示唆された。そして,自己決定を阻害する要因として,課題と学習方法の同一視,不安や焦りの解消,友達への追従が確認された。
  • 森 千鶴
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    英語をL2として習得する場合に,まずひとつひとつの単語をすばやく認識し,処理する能力を身につけることが重要である。英語をL2として学ぶ日本人学習者の中には単語レベルでの読みやつづりに困難を感じる者も少なくない。本稿では,ボトムアップ処理の基本である,L2の単語音読力,スペリング能力,さらに上位技能である読解力には,どのような要素が関わっているのか,またそれらの能力は相互にどのように関係しあって発達しているのかを,L1,L2研究の成果を参考にしながら考察する。その際,読解力とスペリング能力に不均衡のあるL2学習者(R+S-)の事例を中心に考察する。さらに,読解力とスペリング能力のバランスのとれた習得には文字と音の連関規則といった基本的知識の習得が不可欠であることを踏まえ,発達のどの段階でつまづいているかも考慮に入れ,発達段階にふさわしい指導法について検討する。
  • 縫部 義憲, 松崎 寛, 佐藤 礼子
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    平成12年の「日本語教育のための教員養成について」への対応を巡り,国内における日本語教員養成は大きな転換を迫られている。本論では,この新たな教育内容を基に独自に作成した調査用紙を用いて,全国の教員養成課程を持つ大学を対象に,十分対応できる,もしくは対応できない項目を調べた。その結果,マクロレベルでは言語や教育実習に関する側面は対応できているが,心理的及び異文化的側面は対応できていないことが確認された。また,クラスター分析を行い,対応度の傾向によって大学をグループ分けした結果,全体平均では値が高かった項目に関しても,大学群によっては対応できていないことが確認された。これらへの対応策として,各大学の特長を活かした養成カリキュラムの策定や大学間の提携プログラムやVOD教材利用のネットワーキング構築に柔軟に取り組むための提案を行った。
  • 田邊 達雄
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    聴覚障害生に英語を教える教員側からのアンケート調査と,中学時代に受けた英語の授業について聴覚に障害のある学習者自身を対象にしたアンケート調査から,聴覚障害生への英語の授業で必要なコミュニケーションの手段を分析調査した。アンケート調査の設問事項の中から,(1)聴覚障害についての認識,(2)英語の授業で利用するコミュニケーションの手段,(3)英語を担当する教員がコミュニケーションの手段を習得するに至った動機・場所・時期,の3点を基にしてコミュニケーションの方法が聴覚障害生に英語を教える上で重要であることを検証した。また,英語教員はこのコミュニケーションの方法を教員養成課程で習得したのではなく,聾学校への赴任や難聴学級を担当した後の教員研修などで習得していることが分かった。さらに,英語教員は「聞く」「話す」など聴覚に重きを置く英語の指導を,障害の状況や有無を問わずあらゆる生徒に教えるという状況も調査から検証された。これらの検証を踏まえて,教員養成の大学ではその養成課程のカリキュラムに聴覚障害に関する理解とコミュニケーションの講義や実習を組み込む必要性を提言する。
  • 浅海 範明
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    総合的な学習の時間が創設された理由からもわかるように,問題解決能力の育成が教育の重要な課題となっている。しかし,問題解決能力の育成に関しては,情報収集能力に代表されるような「学び方」の側面に比べて,「考え方」の育成方法の開発が立ち遅れているように思える。本研究においては,ピアジェによって提唱された各種の推論形式が,考え方の土台となるものであると捉え,推論形式を身に付けさせるためのコンピュータプログラムを開発することにした。プログラムの作成に当たっては,英国で進行中のCASEプロジェクトの授業方法論を参考にした。「分類」と「条件統制」の推論形式をトレーニングするプログラムを開発し,「分類」については小学校第3学年,「条件統制」については第4学年の児童に対する有効性を検証した。
  • 伊 麗娜
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論文では,2001年,中国教育部によって,定められた『美術課程の基準』の妥当性の検討を主眼とした。そのため,中日の小学校における『美術課程の基準』と『学習指導要領』及び各々の『解説書』を比較した。その結果,中国では,応試教育の影響のため,「美術の教育」に偏っているのに対して日本では,「美術による教育」が重視されているという実態が明らかになった。また,両国における改訂方針について比較・検討した結果,美術教育の内容において,「造形遊び」,「鑑賞」,「総合・探索」という相違点のあることが明らかになった。また,中国では,総目標について具体的な解釈がなく,そのため,美術教育の目的を正しく,かつ深く理解し,また活用・実現することができないという問題が生じていることが明らかになった。
  • 後藤 幸弘, 北山 雅央
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,これまでボールゲームがどのように分類されているのかを文献的・理論的に検討することを通して,それらのゲームの「戦術」にある法則性を明らかにし,ボールゲーム全体を貫く「戦術」の系統化を試みた。対象とした4つの分類論から『マトを突く』,『ズレを突く』,『ズレを創り出して突く』という三つの大きな「攻撃課題」が導き出され,これらは,さらに「守るマトの大きさ」,「直接妨害の有無」,ゴールの大きさに起因する「攻撃の方向性と攻防の切り替えの速さ」によって7つに細分された。すなわち,すべてのボールゲームを貫く「戦術」の系統は,『突く』を幹にして『マトを突く』・『ズレを突く』・『ズレを創り出して突く』に階層化し,『ズレを突く』については「守るマトの大きさ」を,『ズレを創り出して突く』については「直接妨害の有無」と「攻撃の方向性・攻防の切り替えの速さ」を視点に7段階に系統化でき,種目主義を越えたカリキュラムが編成できると考えられた。また,戦後の小学校「学習指導要綱」,「学習指導要領」,「指導書」に取り上げれられていた64種目のボールゲームは,本研究で見出された戦術の体系に,すべて当てはめ得ることができ,『マトを突く』ゲームのほとんどが低学年に,『ズレを創り出して突く』ゲームの多くは高学年に,位置づけられていることが認められた。
  • 山本 利一, 森山 潤, 松浦 正史
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学校技術科の金属加工学習において,技能的な課題遂行時に生起する生徒の内省を構造的に解明することである。「技能的課題遂行時の内省尺度」を用いて,中学生893名を対象に調査を実施した。因子分析の結果,F1「課題解決に対する内省」因子, F2「つまずきに対する内省」因子,F3「課題達成に向けた内省」因子の3因子が抽出された。また,クラスタ分析の結果, F1には「フィードバックによる解決行動」と「フィードフォワードによる解決行動」,F2には「失敗・不安」と「状況・不安」, F3には「課題達成意欲」と「自己コントロール」と解釈されるクラスクがそれぞれ認められた。これらの構造から,技能習得過程の初期段階にある生徒は,失敗やつまずきに対する不安を抱きつつ,課題遂行状況のモニタリングを通して達成に向けた動機づけを図り,具体的な解決行動を展開している様相が示唆された。
  • 松浦 伸和
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,ローマ字知識やローマ字処理力は英語学力にどの程度影響を及ぼすのか,その影響は時間の経過に伴ってどのように推移するのか,それは指導方法によって異なるのかなど英語入門期におけるローマ字力と英語学力の直接的な関係を実証することにある。英単語の読み書き能力とローマ字知識の間には強い因果関係があることが確認されている。その後の課題について,中学1年生を対象として半年間にわたる調査を行い,以下のことが明らかになった。ローマ字力は,筆記学習開始後3ヶ月程度は英語学力に強い影響を及ぼす。その後影響は弱くなるが,依然その相関は0.3前後で継続的に維持される。
  • 吉田 裕久
    原稿種別: 本文
    2005 年 28 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2005/09/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,国語教育学研究の最近の動向を探ろうとするものである。1980年から2000年の直近の20年間については,全国大学国語教育学会編『国語科教育学研究の成果と展望』(2002.6,明治図書)を資料とした。また最新の2001年以降については,全国大学国語教育学会のシンポジウムおよび課題研究の主題を資料とした。その結果,いずれの時期も,伝統的な研究一歴史的研究,臨床的研究,比較(外国)研究,実践的・実証的研究と,開拓的な研究一関連諸科学の研究手法も取り入れたナラトロジー,コミュニケーション論,語用論・認知言語学,読者反応批評論などの研究が,それぞれ着実に積み重ねられ,堅実な成果を生み出してきていることが明らかになった。
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