現在の音楽科教育における最も重要な実践的課題のひとつに,学力構造の体系化が考えられる。これは,教育内容の再編・評価理論の確立という一連の重要な課題を解決するために,まず取り組むべき課題であるといえる。本論では,これら一連の課題にアプローチしていく第一段階として,音楽科における学力の視点を明らかにし,それを踏まえて,学力の中でも特に基礎学力を明確化することに焦点をおいた。われわれは,勝田・中内・藤岡氏の学力規定を基礎として本論を展開した。即ち,音楽科における学力を計測可能でだれにでもわかち伝えることのできる教育内容を学習して到達した能力と規定し,そのような学力への視点として,大きく3つを明らかにした。さらにそれを踏まえて,音楽科における基礎学力を,音楽的感覚の習熟とその認識化の能力の体系と規定し,それを本論で具休的に明らかにした。
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