日本教科教育学会誌
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43 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 川路 智治, 谷田 親彦
    2020 年 43 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,技術科教科書における安全教育の記述を分析し,技術科における安全教育の成果が活用される場面を明らかにするとともに,技術科の学習により育成すべき安全能力の在り方を検討することである。3社の技術科教科書を対象に分析した結果,技術科における安全教育は授業場面,家庭生活,社会の安全について指導されていることがわかった。また,技術科教科書で重点的に指導・育成していると考えられる安全能力は「危険情報の収集」「危険情報の整理」「危険情報の活用」「潜在危険の除去」「自己の安全状態の確認」「施設・用具等の安全確認」「行動ミスの防止」「危険行動の自制」であった。一方で,技術科教科書において取り扱われていない安全能力の「経験による危険の察知」「関係者への適切な報告」「原因分析と結果の周知」「再発防止対策の実行」については,技術科教科書での取り扱い方を検討した。
  • 家庭科教員意識調査および米国LCCE プログラムを手がかりに
    河﨑 智恵, 齊藤 紀子, 伊藤 優, 伊藤 圭子
    2020 年 43 巻 3 号 p. 11-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ライフキャリアの視点より,特別支援学校におけるキャリア教育の現状について調査するとともに,米国の先進的なプログラムを手がかりに,キャリア教育の課題を考察することである。全国の特別支援学校家庭科教員を対象とした質問紙調査の結果,特別支援学校においては,“人間関係”“自己理解”“基本的生活スキルの形成”に関する内容を重視している反面,“世話役割の肯定的理解・支援的経験”“ ライフキャリアの統合・再統合”“ 共生的な生活実践”“人生役割の理解”“ライフキャリアの設計”については,必ずしも重視されていなかった。その中で,家庭科は“基本的生活スキルの形成”の中核的役割を担っていた。質問紙調査の結果をふまえ,米国のキャリア教育カリキュラム「Life Centered Career Education」をもとに考察を行い,今後の課題を明確にした。
  • 森有正の経験観とS・K・ランガーのシンボル論に基づいて
    辻 勇介
    2020 年 43 巻 3 号 p. 23-33
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,音楽学習において音楽活動することに基づき,その音楽活動としての音楽の体験に,単に体験を遂行する以上のたしかな学習的意義を見出すことである。森有正の経験観とS・K・ランガーのシンボル論から,音楽活動としての音楽の体験について検討した。学習者が音楽を体験するときの音楽の現れかたは,森のいう人間を定義するとされる経験としての〈感ずる〉が現れる事態と似ており,また,音楽の体験に必須の音楽は,「有情な生」として表象する人間感情と形式的な類似性をもつ。それは,ある音楽の体験が,感情や生,人間の定義と結びつくこと,すなわち音楽を体験することが結果的に経験になりうるということを示す。そこから音楽の体験としての音楽活動を考えるとき,各音楽活動には独自の「知りかた」の遂行と「前進」をみるのであり,ここに経験=〈感ずる〉が期待され,音楽活動の学習的意義が提示されるのである。
  • 山本 淳子
    2020 年 43 巻 3 号 p. 35-47
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    英語教育においてICT(Information and Communication Technology)の活用が進んでいるが,近年急速に進む,ICT の発展に応じた動機づけ研究はまだ十分とは言えない。そこで,ICT を英語の授業に積極的に活用している大学に通う大学4年生4人に対して,インタビューを行い,ICT を介して英語を学ぶ経験についての自己内省プロセスを明らかにする試みを行った。分析方法として修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2003)を採用し,構造構成主義的質的研究法(西條, 2007, 2008)をメタ研究法として取り入れた。その結果,英語授業全般について,個人での学習やクラスメートや教員との相互作用の中で,ICT の効果を実感していることが明らかになった。学生たちの能動的な学びが動機づけの高まりに作用したと考えられる。
  • 小学校高学年を対象とした話題と論点に関する学習活動の分析を中心に
    上山 伸幸
    2020 年 43 巻 3 号 p. 49-58
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    現代社会においては,異質な他者との対話を通した創造的・協働的な問題解決が求められる。学校教育においても,教師が介入しない学習者同士による自律的な話し合いの成立が目指されている。国語科における話し合い学習指導研究は,メタ認知を重視した指導方法を開発することにより,学習者の話し合う力の育成に貢献してきた。しかし,方法知を日常の話し合い活動で活用するための指導については充分ではない。そこで,拡散的な話し合いと収束的な話し合いの比較を通して,話題と論点の設定について学習する小学校5年生を対象にした授業を開発し,学習者の反応を分析した。その結果,小学校高学年の学習者は話し合いの文字化資料から話題による発言傾向の異なりを発見できることが明らかとなった。また,同学年の学習者が話し合いの展開に応じて論点の再設定ができる可能性と,話題や論点の意識化が方法知の無意識的な活用につながる可能性がそれぞれ示唆された。
  • 絵本とアニメーションの「象徴」に着目して
    武田 純弥, 佐藤 多佳子
    2020 年 43 巻 3 号 p. 59-71
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究では『つみきのいえ』の絵本とアニメーションの「象徴」に着目し,マルチモーダル・テクスト(Multimodal text)の比較を取り入れた〈読み〉の学習の考案・実践を行った。学習者の記述と発話の臨床的な検討を通して,「マルチモーダル・テクストの特性や対象」に着目し,作品の評価・熟考を行う学習者の姿が確認された。また,動画と効果音・音楽で構成された短編アニメーションにおいても,その象徴表現を意味づけ,「象徴」を読む学習が可能になった。以上の学習を成立させるためには,同様のマクロ構造をもつが,ミクロ構造の一部のみが異なるマルチモーダル・テクストの比較を通して「想定される作り手の意図」を読む学習過程の設定が要件であることが明らかになった。検討の結果から,マルチモーダル・テクストの比較を通して,想定される作り手と学習者との間に「生きた回路」を生むことの学習意義と可能性について提案する。
  • 「動的平衡」概念に着目して
    森 健一郎, 角屋 重樹, 稲田 結美, 雲財 寛
    2020 年 43 巻 3 号 p. 73-85
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,理科カリキュラムにおける領域横断的な概念としての「動的平衡」の活用可能性について検証することである。このことを示すために,まず,「動的平衡」によって解釈できる自然科学の現象には,どのようなものがあるのかを検討した。検討にあたっては,国内外の先行研究の内容を検討し,「バランス」「安定」「システム」が「動的平衡」に関する現象を見いだすためのキーワードになり得ると判断し,これら3つの語句と「動的平衡」を合せた4つをキーワードとして自然科学系の論文全文検索をおこなった。次に,検索された論文で扱っている現象と,2016年改訂の学習指導要領に示されている学習内容とを比較した。その結果,選択された学習内容は複数あり,かつ,複数の領域にまたがっていた。これを踏まえ,複数の学習内容を対象として,事例的に考察を試みた。そして研究の結論として,理科カリキュラムにおける領域横断的な概念としての「動的平衡」の活用可能性を指摘した。
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