日本教科教育学会誌
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23 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 松原 道男
    原稿種別: 本文
    2000 年 23 巻 3 号 p. 1-8
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,生徒のスキーマ表現を行う手段として,ホップフィールドモデルを用いることの妥当性を明らかにするとともに,学習の場を設定するための同モデルの利用について明らかにすることを目的とした。中学校第2学年を対象に,動物の生活と体のつくりについて質問紙調査を行った。生徒の回答の一部からホップフィールドモデルを作成し,そのモデルから生徒の他の回答を予測した。その予測と実際の生徒の回答との一致から,モデルの妥当性が認められた。そこで,いくつかの文脈を想定し,生徒の反応を予測するシミュレーションを行った。その結果から,本モデルは,生徒が想起する事柄をあらかじめ予測することができ,授業設計を行う際に利用できることが考えられた。
  • 花房 敬子
    原稿種別: 本文
    2000 年 23 巻 3 号 p. 9-16
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    視覚的表現において,より個別的で多様な表現を期待する上で,言語刺激による表現の差異を共通語と地域言語によって比較するため,兵庫県播磨地域の小学生を対象に描画調査を実施した。その調査結果を,線描画の「形状比較」と「数値化」の2方法により分析し,考察した。共通語刺激との比較で見た場合,地域言語刺激による視覚的表現に多様性が表れた事例が,いくつか認められた。また,地域言語刺激によって視覚的表現が強調・誇張される傾向も確認された。特に形状(大小・幅)・数量(多少)の表現に顕著に表れていた。これにより,視覚的表現において,地域言語刺激を有効に用いるための示唆が得られたものと考える。
  • 森山 潤, 高井 久, 梁川 正
    原稿種別: 本文
    2000 年 23 巻 3 号 p. 17-25
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    中学校における栽培活動の実態及び環境教育との関連性を把握するために,全国の中学校200校を対象とした調査を実施した。有効回答数は155校,回収率は77.5%であった。分析の結果,57.4%の中学校で栽培活動が,72.3%の中学校で環境教育が実施されていた。また,環境教育と栽培活動の実施率には,有意な連関が認められた(x^2 =20.09 df=1 p<.01)。環境教育において,自然に対する親しみや興味・関心を持たせることに重点がおかれている場合に,栽培活動が取り上げられやすい傾向が示唆された。また,栽培活動の実施状況として,栽培されている植物の種類,栽培時期,栽培活動の担当教員,活動時間の枠,栽培活動の実施上の課題等を明らかにした。
  • 林 未和子
    原稿種別: 本文
    2000 年 23 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論は,米国の家庭科カリキュラムの到達点として,1998年に刊行されたナショナルスタンダードを検討し,「実践問題アプローチ」のカリキュラム理論がどの程度反映されているか,また各州の家庭科カリキュラムの特色がどのように影響しているかを明らかにした。ナショナルスタンダードは,生徒が身に付ける能力や学習内容を明確にするとともに,その内容を探究する上で不可欠なプロセスを重視し,両者を統合することができるように全体を構造化している。「実践問題アプローチ」の特色である実践問題,家族の行為体系,実践的推論が採用され,オハイオ,ウィスコンシン,ミネソタ,メリーランド州の各家庭科カリキュラムの成果が反映されていた。家庭科ナショナルスタンダードは,「実践問題アプローチ」を中核に据えつつ多様なカリキュラムを統合して,教師が柔軟に活用するための枠組みモデルを提供している。
  • 福田 誠, 吉田 武尚, 吉田 誠, 樫岡 健史
    原稿種別: 本文
    2000 年 23 巻 3 号 p. 37-42
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    筆者らはこれまで,技術・家庭科の教科書を対象に,その表現の統計的分析を行ってきている。具体的には,木材加工領域や電気領域の教科書本文をテキストデータベース化し,表現上の変遷を種々の調査結果から説明をしている。たとえば,拙稿(1997)では,漢字調査の結果を基に,あらかじめ提案した専門語の使用例について,格助詞との結合に考察を深めている。本稿では,これまでの研究を礎として,現行の開隆堂出版と東京書籍の2社の教科書(平成8年1月15日文部省検定済版)の計量的相違の考察を深めている。これまでの通時的視点からではなく,共時的視点に立った教科書を捉え,その結果として,現在発行されている2社の教科書の表記・表現を考える。さらに,現行教科書の漢字の使用率分布から,専門語と漢字の関わりについて考察している。
  • 杉田 政夫
    原稿種別: 本文
    2000 年 23 巻 3 号 p. 43-52
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,明治期においてヘルバルト主義が,わが国の学校音楽教育の理論的側面に与えた影響について明らかにすることを目的とした。研究方法としては,明治35年に翻訳紹介されたヘルバルト主義者,ラインの『第一学年』における唱歌教育論を分析した後,明治後期にわが国において執筆された何冊かの唱歌科教授法書を検討し,ヘルバルト主義の影響について考察した。さらに,ヘルバルト主義がわが国の学校音楽教材に与えた影響を明らかにするために,当時最も普及した文部省編『尋常小學唱歌』の分析を行った。『尋常小學唱歌』を分析した結果,他教科との関連性の重視,理解しやすい歌詞文体,童話や模範的人物を題材とした歌詞の導入,国家主義思想の培養や美感の養成を意図した歌詞の充実,子どもの声域を配慮した歌いやすい旋律,文化史的段階説に基づく教材の配列方法など,様々な側面においてヘルバルト主義の影響を見いだすことができた。一方で,ラインの音楽教育論と,わが国のヘルバルト主義に基づく音楽教育論とを比較した結果,わが国では,教材論や教授法において,かなり歪曲した受容がなされたことが明らかとなった。
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