日本教科教育学会誌
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 柳瀬 陽介
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 1-10
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    コミュニケーション能力に関して,応用言語学においてはウィドウソンの論を例外として,個人内での意味交渉などの動的過程を説明する理論は形成されなかった。本論は哲学者デイヴィドソンの議論が,ウィドウソンの論を拡充し,第二言語教育に貢献するものであることを示す。デイヴィドソンの事前理論・即事理論の論証は,言い誤り・聞き誤りを多く含む第二言語コミュニケーションをうまく説明する。彼の理論は,特定のコミュニケーション成立からコミュニケーション能力を説明し,原則に基づいた認知的な推論の働きがコミュニケーションに大きく関与していることを明らかにしている点で,コミュニケーション能力論に独自の貢献をなしている。彼の議論は,コミュニケーションは,従来考えられていたように事前理論の共有によって成立するものではないこと,およびコミュニケーションを目指す教育は言語学的意味での「言語」を超えた教育となることを明らかにしている。
  • 森 清加, 佐藤 園
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 11-20
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,香川県における初期家庭科の実証的分析を通して,わが国における家庭科の具体的成立を明らかにすることを目的としている。本報告で研究対象としたコア・カリキュラムを理念とする『善通寺中央プラン』では,家庭科は主に『中心学習』を充実させる『基礎学習』の「技術をねる分野」に位置づけられていたが,実際には「中心学習には直接関係しない学習」として単元で展開され,その内容も家庭生活に必要な技能に限定されていた。また,『中心学習』にも衣・食・住生活に必要な知識や家族関係,家庭経営などの家庭科の内容が見られたが,それはカリキュラムの核となった当時の社会科が超広領域教科であったために,偶然家庭科の内容が含まれただけであると捉えられた。
  • 磯﨑 哲夫, 磯﨑 尚子, 木原 成一郎
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 21-30
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,教育実習に対する国立大学附属教官と教育実習生の意識調査を行い,その実態を明らかにすることを第一義的目的とした。調査は,アンケート調査と面接調査の両方を行った。その結果,附属学校指導教官には,教育実習は生涯にわたる教職開発の導入とする意見が多く,教育実習生への指導・助言を通じて,自己省察をし,専門的成長をする機会と捉えていること,他方,教育実習生にとっては,実践における他者との関わりの中で,教師としての自分を自覚する機会であること,などが明らかとなった。また,教育実習におけるメンクリングについても,イギリスの場合と比較考察したが,わが国の場合は,いくつかの問題のため必ずしも効果的なメンタリングが行われているとは言い難い。
  • 児玉 康弘
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 31-40
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,中等歴史教育の新しい教授=学習方法論である「政策批判学習」の課題と意義を明らかにしようとするものである。「政策批判学習」では,歴史を,社会的問題を解決しようとした過去の人々の「意思決定」の過程として説明する。一方,「意思決定」を教育課題とする近年の社会科授業論には,「合理的意思決定」を原理とするものがある。そこで,両者の相違を,具体的な授業計画のレベルで分析することにより,「政策批判学習」の特質を明らかにした。比較を通じて,「政策批判学習」は,「合理的意思決定」を原理とする社会科と異なり,生徒に直接「意思決定」をさせることそのものよりも,人々の「意思決定」を規定する「社会認識体制」の中の,「事実認識・判断」を反省的に吟味させることに重点をおいていることを明らかにした。その吟味を通じて,間接的に生徒自身の「社会認識体制」を成長させ,将来の彼自身の「意思決定」を合理的なものとするように努めることに,「政策批判学習」は課題と意義を見いだしている。
  • 孟 令紅, 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 41-50
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論文では,比較の主体を中国に客体を日本に,比較の主題を初等理科教育として,比較教育的アプローチを通し,中国の初等理科教育の特性についてより理解し,また,今後のあるべき姿を探究し示唆を得るための基礎的資料や情報を得ることを目的とした。このため,まず,両国のカリキュラムを教育目標,教育内容,授業時数,評価の観点の4つの視点から比較した。さらに,特に両国で共通の学習内容が多いB区分「物質とエネルギー」を対象に学力調査問題を作成し,実施した。この学力調査問題は,知識I(機械的な知識の再生),知識II(複数の知識の適用),実験技能(実験とそれに付随して必要な技能)の3つの要素から構成されたものであった。結果として,知識Iについては,両国の得点に有意な差が認められなかったが,知識II及び実験技能では,日本の得点が有意に高いことが明らかとなった。この原因については。「カリキュラム」の比較調査から(1)中国の授業時数は日本より少ないにもかかわらず,学習内容が日本より多く,さらに,観察・実験場面で既習した知識を活用することが少ない,(2)中国では,日本よりもより「教える」という側面が重視され,「子どもが自分で考える」ということが希薄であるという2点が推察される。
  • 松下 健二, 安藤 毅, 小原 健治
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 51-60
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    健康に関する「認識」と「行動」の一体化,すなわち「理解」と「実践」につながる保健授業を開発することを目的とした。認識することによって実践される授業内容を設定するため,健康行動についての「認識」を深め,健康行動の価値を知り,健康への影響の捉え方をメカニズムを通して理解させる授業内容を作成するとともに,体験を含む授業を行い,授業前後の健康行動に対する「認識度」ならびに実践状態の変化について検討した。その結果,実験クラスの児童は授業内容をより一層自分自身のこととして捉え,健康に関する「認識度」を向上させるとともに学校生活における「けが」の発生件数を激減させていた。このことは実験クラスの児童が健康に関する認識をより深めるとともに,健康行動の実践を行なっていることを示し,仮説授業は児童に対して,「わかる」と「できる」を統一させ得る授業であることが認められた。
  • 中村 愛人, 小篠 敏明, 中村 朋子, 坂元 真理子, 渡辺 清美
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 61-68
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    これまで教科書の歴史的な発達の研究に関しては,主観的な手法にとどまっており,いわゆる教科書発達史についての体系的な研究方法は確立されていないのが現状である。本研究は教科書の特徴をより客観的な形で明らかにし提示していくことを目的とし,この分野での新たな研究方法として明治から現代までの5セット(6種類)の中学校・高等学校の英語教科書をそれぞれデータベース化し,コンピュータによって量的な分析を行なった。(そのうち,3セットは馬本他(2001)のデータを用いた。)分析結果として教科書ごとの類似点や相違点が統一的な指標から明らかになった外,今まで一般に言われてきたり先行研究で印象として指摘されてきた点が客観的な形で裏付けられた。
  • 川島 浩勝
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 69-78
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    学習者の実際のパフォーマンスと自己評価に基づき,英語の7つの子音のミニマルペアー(最小対立)の識別の難易度が調べられた。調査の結果,日本人英語学習者にとって/l/-/r/だけが難しいミニマルペアーでなく,/l/-/r/以上に/d/-/dz/の識別を難しいと感じていること等が明らかになった。さらに,学習者の実際のパフォーマンスと自己評価の間のギャップの大きさが調べられたが,調査の結果,/s/-/θ/,/dz/-/z/,/∫i/-/si/,/f/-/h/は相対的にギャップが大きいミニマルペアーで,また,/b/-/v/,/l/-/r/,/n/-/η/は相対的にギャップが小さいミニマルペアーであること等が明らかになった。
  • 間田 泰弘, 田島 俊造, 山本 透
    原稿種別: 本文
    2002 年25 巻2 号 p. 79-86
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    日本教科教育学会や日本産業技術教育学会などで発表された資料をもとにして技術教育について研究された内容を分類し,その傾向を調べた。その結果,研究されている内容を大きく分類すると,中学校で教える技術教育法に関するものと,理学や工学に近い専門性の強い教材研究の内容が大部分である。普通教育における技術教育の理念や,人間形成における技術教育の役割についての研究は少ないが,毎年一定の割合で発表されており,充実したものは著書等にまとめられている。また,これらについては特別の研究組織を編成して研究を続け,まとめたものを発表している技術教育に関する学会もある。今後は中学校で教えられてきた技術教育が人の生涯にわたって貢献していることや,技術立国において果たしてきた社会的役割を証明するための多様な研究が期待される。
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