日本教科教育学会誌
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8 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 山下 太利, 前田 健悟
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    大学における物理学の学生実験において,個々の実験に入る前に理解させておくべき種々の基礎的事項がある。その一つである誤差について,筆者等は従来実験の前に1回講義をしてきたが,学生の理解の実態についてはチェックしないままで個々の実験に入らせてきた。今回,誤差の講義のあとマイクロコンピュータを使って学生の理解の実態を調査し,同時に訓練を行なった。調査の設問はマルチチョイス型とし,マイコンに読込ませたプログラムに従って解答させた。各設問につき正答に達するまでの選択肢の選択回数と所要時間のデータも得られるようにプログラムを組んだ。設問は,プログラムに組入れず別に印刷した問題カードを使用した。こうすることにより,普通に行なわれるようなブラウン管面に現れる設問や選択肢の文字の読みづらさを完全に避けることができ,プログラムと問題カード併用法の長所が確かめられた。調査は極めてスムースに進めることができ,学生の理解の実態や指導上特に留意すべき点も明らかになった。またこの方式を採用すると,各学問分野の各種の問題の調査においても,問題カードをそれぞれに作るだけでプログラムは殆どそのまま転用できる点もすぐれている。
  • 遠西 昭寿, 伊藤 聡子, 円谷 秀雄, 高橋 忠雄
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 9-20
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    実験や観察といった学習活動ではグループ学習が一般的に行なわれている。このような形態の学習活動では,教材や指導法と同様に子どもどうしの関わり方が,学習における情意・態度・パフォーマンスに大きく影響すると考えられる。本研究では,グループで実験や観察など,協力して問題解決を行なう場面におけるソシオメトリックなグループ構成の効果について,授業実践を通して検討した。その結果,ソシオメトリックな関係を考慮してグループを構成した場合は,そうでない場合に比べて,その社会的相互過程においてより積極的な傾向が見られ,その結果,参加の意識や満足感についてもより優れた傾向が認められ,学習におけるパフォーマンスも高まることがわかった。またこれらの結果から,望ましい子どもどうしの関わり方について,若干の考察を試みた。
  • 縫部 義憲
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    外国語学習に自主的・能動的に参加している限りにおいては,外国語の好嫌は成績とは無関係であると言われるが,外国語として英語を学ぶ言語環境下にある日本においては,第2言語としての英語を学ぶ国に比べて目標言語に対する態度・関心・好嫌が成績と密接な相関かある。外国語嫌いの原因を自己と外国語学習との関連性の欠如(→内発的関心の欠如)に置き,その対策を考察したのが本論である。筆者は,この治療法(therapy)をゲシュタルト・セラピー理論の中に見い出し,それを外国語教育に導入する方策を提案した。それは,「今ここ」における現実に生きることを求め,言語練習の中味をこの現実性に求めることでありHere and now teachingと呼ばれる。この外国語指導の特徴は,techniquesとtherapyの統合と融合である。
  • 伊東 亮三
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    わが国で一般に実践されている社会科は,その強調点の違いから,「追体験し意味を理解する社会科」「子どもの思考を育てる社会科」「科学的認識と実践主体を育てる社会科」と呼ばれる3つの流派に分けることができる。本研究は,これら3種の社会科授業論の基礎にある認識論を明らかにするとともに,その認識論に立って授業を組織する場合の教授学的操作を一般化し,それぞれの授業理論の比較考察を行うことを課題としている。本稿は,共同研究の一環として,「追体験し意味を理解する社会科」を取り上げ,この社会科授業理論の基礎に「理解」の認識論があることを明らかにする。ついで,「理解」の認識論のもつ教育的意味,「理解」の認識論に基づいて授業を組織する場合の教授学的操作を,この立場の典型的な授業を分析しながら一般化し,最後に,この社会科授業の特色と問題点を明らかにする。
  • 池野 範男
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 33-39
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    現在行われている社会科授業のその授業理論を認識論によって基礎づけることを目的とした研究の一環として,本小論は「子どもの思考を育てる社会科」の授業理論をプラグマティズムの認識論によって検討しようとするものである。この社会科で中心的役割を果す「思考」や「思考過程」をプラグマティズムでの本来的意味で明らかにしたのち,その社会科の授業を分析した。その結果は次のようにまとめることができる。「子どもの思考を育てる社会科」の授業理論は教育内容を教師の問題解決によって発見された知識の網状組織とし,授業過程を子どもの常識的観念がこの教育内容へ変換する過程とする,ということである。
  • 吉川 幸男
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 41-47
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    マルクス主義社会科学に依拠した社会科授業は,科学的認識と実践主体の同時的育成をめざす社会科として,今日のわが国でも大きな研究者・実践者集団を形成してきた。ここでは,そうした授業における同時的育成の原理,およびその際の学習内容,展開,学習過程の編成を,マルクス主義認識論から基礎づけることを試みた。その結果,この種の社会科授業は,マルクス主義認識論自体の内包する,認識の普遍化と主体の変革という二契機の統一に教育論的意義を求め,この意義の実現のために,常に二つのカテゴリーから,両者が統一されるようにその学習内容,展開,学習過程が編成されていることが解明された。しかし他方で,この社会科授業の多くは,マルクス主義認識論の基本前提に即応しておらず,そのためにかえって同時的育成の原理を阻害する問題点を生み出してきた。
  • 菊沢 康子, 中村 一枝, 福田 公子
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 49-55
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    家族計画の教材化の構想を具体化するための基礎資料として,現在の女子高校生の家族計画に関する認識を把握することを試みた。その結果,対象校の家庭科あるいは保健体育科において,すでに指導が行われていたことの影響を受けて,予想以上の反応がみられた。すなわち,わずか6%の者をのぞき,大多数の女子高校生は,将来は結婚することを希望していた。結婚は,幸せのイメージと同一化されているが,結婚と生活自立を対立的にとらえている傾向があった。子どもの数は,2人と3人が圧倒的に多く,地域差が認められた。家族計画の必要,避妊法の名称,人工妊娠中絶については,一応は知っているが,不正確な場合も多く,社会的な視野に乏しかった。これらの知識に関する情報源として,学校の授業の影響は大とみられるが,それ以外には,大衆雑誌や友人からの情報にたよっていた。今後,これらの情報の内容を検討するとともに,家族計画に関する認識を深める教材を開発しなければならない。
  • 武村 重和
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 57-65
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    新しい文明は,まったく新しい発想,新しい推理,新しい概念を要求して,過去の各科教授法に衝撃を与え,新しい体系の教科教育学を要請してきている。従来正統とされていた知的体系や価値体系が通用しなくなってきている。古い考え方,古い公式,古いイデオロギーは,過去の文明においては,有効であり,尊重されていたものであっても,次の文明では,もはや対応できなくなっている。古い体制は,新しい価値やコミュニケーション,新しい科学や技術などとぶつかりながら,くずれ,新しい体制が急激にその姿を明確にしていく。新しい教科教育学は,科学技術の発展に伴い環境的,社会的関係の変化の動態を解明することにより構築される。本論文は,農業社会及び工業社会における技術体系,情報体系,社会体系などを分析しつつ,人間の心理体系,人間相互の関係にまで論述し,教科教育学の基盤を明らかにしようとするものである。
  • 小池 直己
    原稿種別: 本文
    1983 年8 巻1 号 p. 67-72
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    教室での学習経験における成功や失敗の原因には,多くの要因が関与している。ある者は自分の成功や失敗の原因を自分の努力や能力の結果だと認知し,ある者は運の良し悪しで説明する。この場合,自分が関与したために成功したり失敗した,と認識する場合には,自分の関与の仕方を制御(統制)させることにより,のちの事象の成功や失敗の予測がたち,事象に対する取り組みも意欲的になれる。それに対し,他人の力など環境条件により制御された,というように受身にこれを認識する場合には,のちの行動の制御(統制)は他人の掌中にあるために,結果の予測がたたず,動機づけも起きにくい。従って,その原因に対し,自分自身がどのように関与したかという認識は,のちの動機づけに大きな影響を及ぼすと考えられる。本報告においては,前年度の英語の必修単位を落とし,現在,英語の単位を再履習している大学生185名を対象にして,「原因帰属理論」の応用を試みた。本報告の研究方法は,各教科教育の研究に共通するものであると言える。
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