日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
Print ISSN : 0288-0334
ISSN-L : 0288-0334
42 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小学校第1学年における調理学習「なぜ,調理するのか?」の実践と評価を通して
    信清 亜希子, 佐藤 園
    2019 年 42 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,わが国における小学校低学年からの教科としての家庭科学習の可能性を,事実に基づき,論理的・具体的に実証することを目的とするものである。そのための分析枠組みとして,『昭和31年度小学校学習指導要領家庭編』に示された「家庭科が小学校第5学年からしか学べない3つの理由」を設定した。本報では,第1学年の「生活科」と「特別活動」で実施した家庭科授業「なぜ,調理するのか?」の分析・検討を行った。その結果,児童は他教科等で習得したと考えられる知識・技能を生かしながら,1年生なりの言葉で「なぜ,調理するのか」に関する概念を説明し,調理をすることができた。以上から,本報で実施した授業は,「家庭科が小学校第5学年からしか学べない3つの理由」には該当しないと考えられた。
  • 千菊 基司
    2019 年 42 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    全国規模の英語力調査結果を踏まえ,「話すこと」,中でも「やり取り」に関わる力を高校生につける指導の高度化が提言されているが,その効果についての実証的研究論文は,ほとんど見られない。本研究は,スピーキング指導で交渉を行う言語活動を用い,英語発話の質が向上することを検証することを目的として行った。高校3年生の1クラス(実験群)を対象に,交渉を行う言語活動を用いた指導を一定期間行い,その前後にスピーキングテストで得られた発話の質の変容を,同様の指導を受けていない別生徒(対照群)の発話と,量的に比較した。実験群の生徒の発話には,流暢さに向上が見られた。また,相手の意見を引き出すことを意図した発言が増え,会話が行き詰まった時に主導権を取って,事態の解決に乗り出そうとする発言も見られた。実験群の受けた指導によって,概念化や形式化の段階で生徒が受ける認知的負荷が減り,対話の流れに自分の発言を嚙み合わせることに必要な注意資源を確保して練習することが可能になり,質の良い発話が練習時に達成され,発話の質の向上につながったと考えられる。
  • 仲川 浩世
    2019 年 42 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,一般目的の英語専攻の中級レベルの日本人学習者を対象に,ライティングのニーズを探ることである。特定目的の英語や学術的な英語を専攻とする上級レベルや習熟度の低いリメディアル・レベルの学習者を対象としたニーズ分析は,すでに行われている。しかしながら,一般目的の英語専攻の中級レベルの学習者を対象としたライティングのニーズ分析はまだ少ない。よって,91人の大学生・短期大学生を対象に,ライティング学習に関する23項目の質問紙調査と自由記述によって,一般目的の英語教育におけるライティング学習の意識を探り,ニーズ分析を行った。その結果,当該学習者は主として,ライティング方略面に問題を抱えていることがわかった。本研究では,調査の結果を踏まえて,今後のライティング指導のあり方を示唆する。
  • 「経験知」の見取りと支援に着目して
    安藤 哲也
    2019 年 42 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本稿では,幼児期の学びをつなぐ生活科指導の工夫について,他教科と比べ経験知を発揮しやすい生活科の授業場面を事例とし,子どもの経験知の見取りと支援に着目して分析・考察した。結果,小学校の教師が子どもの経験知を見取り,支援することの意義として,次の3点を指摘したい。第1に,学習活動の中で子どもの経験知を見取り,自覚を促す支援を行うことで,子どもは関連した自分の経験知を意識し「やれそうだ」という意欲や「やったことがある」「こうすればいい」といった自信をもつことが期待できる。第2に,幼児教育で得た経験知を想定しておくことで,子どもが十分に発揮できずにいる経験知を見取り,発揮を促す支援を行うことができ,子どもの経験知をより確かなものにすることが期待できる。第3に,幼児教育で得た経験知を想定し,支援を考えることで,教師にとっては自らの実践知を振り返り見直す機会となることが期待できる。
  • クワインの存在論から見た認識論的アプローチと社会・文化的アプローチの対比
    上ヶ谷 友佑
    2019 年 42 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,数学的対象のあるべき構成過程を議論してきた認識論的アプローチと,数学的対象の本性の社会・文化的相対性を主張してきた社会・文化的アプローチの差異を検討することを通じて,数学的対象の認識に関して数学的活動中に生じ得る問題を提起することである。本稿では,クワインの存在論に注目してこの差異を検討した結果,領域内の存在論的問題と領域それ自身の存在論的問題の区別が指摘された。また,これらの問題が実際に授業中に発生し得ることが事例によって例証され,教室においてどちらの存在論的問題が生じたかによって,授業のまとめ方が変わり得るという実践的示唆が導かれた。具体的には,[1] 領域内の存在論的問題が生じた場合は,何が数学的に正しい答えであるかが,[2] 領域それ自身の存在論的問題が生じた場合は,教室内で生じた複数の立場それぞれにおいてどのような答えが得られるかが,授業のまとめとして必要である。
  • 松原 道男
    2019 年 42 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,理科の観察スケッチの評価を支援するシステムの開発を行うとともに,開発したシステムから観察視点の特徴を類推し,観察における指導上の示唆を得ることを目的とした。システムは,Visual Basic により,深層学習における画像処理の方法を一部参考にし,これまでに開発してきた自己組織化マップを用いて作成した。その際,フィルタ処理のあるものとないものを作成し比較した。観察スケッチは,中学生を対象に顕微鏡を用いて植物の茎の断面と気孔を観察したものである。システムの妥当性の評価は,自己組織化マップによる観察スケッチの配置をもとに行った。その結果,フィルタのあるシステムでは,90%近くの観察スケッチが適切に配置されており,システムの妥当性が明らかになった。そこで,フィルタの特性から対象の構造の輪郭に注目して観察させるとよいことなどが類推され,指導上の示唆を得ることができた。
  • 性別・校種・ダンス指導歴および教職経験年数の差異をてがかりに
    生関 文翔, 岩田 昌太郎
    2019 年 42 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,小・中学校教員におけるリズム系ダンス指導の悩み事の内実を調査するために,次の2点の研究課題を設定した。1)小・中学校教員におけるリズム系ダンス指導の悩み事を性別・校種・ダンス指導歴および教職経験年数の差異をてがかりとして明らかにすること,2)小・中学校教員が求める教員研修の形態及び内容を明らかにすること。その結果,次の点が明らかになった。(1)①校種の差異なく「示範ができない」,「よいダンス(動き)が分からない」,「指導内容が分からない」という悩み事が上位項目として挙げられた。②若手教師は,中堅教師と比較して「児童生徒の能力差」に関する悩み事が大きかった。③ダンス指導歴において,悩み事の階層性が示唆された。(2)①研修の形態においては,「実技」の形態が最も多く,具体的に実技ビデオを活用した研修や曲と指導方法をセットにした研修という,研修内容を現場ですぐに実践できるような研修が求められていた。②研修の内容においては,次の3点にまとめられた。「多様な実践事例の紹介」,「実技力の向上と身体を介して指導のポイントやコツが理解できる内容」,「児童生徒の発達段階に即した指導内容」。
feedback
Top