日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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28 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 中西 千春, 赤堀 侃司
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は日本人大学生を対象とした英語ライティング指導におけるピア・フィードバックの有効性を検証することである。50人の学生と13人の教師が3つのライティング・サンプルを点数式と記述式の二方式で評定を行った。点数式では,3つのサンプルに関する項目別評定(内容・構成・語彙/言語表現・言語使用・メカニクス)及び総合評価の優劣の順位の評定を行った。学生のライティング成績に関わらず教師の評定と概ね一致したが,点数の絶対値は一致しなかった。記述式では,評定者のライティング成績により,その有効性に著しい差があった。本研究より得られた知見をもとに,ピア・フィードバックをライティング指導に導入する際には,点数式フィードバックは評定順位のような大まかな評定にとどめること,記述式ではライティング成績上位者を中心に内容に焦点をあてたコメントを書かせることを提案する。
  • 釜本 健司
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 11-20
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    1930年代前半に中等学校で成立した戦前「公民科」は,「社会科」の前史と位置づけられ,その成立は日本の公民教育史上における一大画期とされる。本稿は,戦前「公民科」成立の意義を認識形成と資質育成を同時に行った学科目という点に求め,それぞれの内容および両者の関係を究明したうえで,それらが成立期の「公民科」教科書にどのような形で具体化されたかについて解明することを目的とする。分析の結果は次のようである。「公民科」における認識形成は,社会・政治・経済上の事項の特質,発展過程,現状とそれに対する評価などを一般的規範的知識としての理念に帰結させて行うものであった。資質育成は,社会生活における行動指針としての社会生活者的資質と,国家が発展するための方策の理解にかかわる国家公民的資質の両者を内容としてなされた。認識形成と資質育成の両者は,社会生活における行動の規範を内容の中心としたため,資質育成優位で関係づけられた。
  • 榊原 典子, 南 佳子
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,集団との学習の共有が個の学習へもたらす有効性を,小学校家庭科の実践的な授業を通して明らかにしようとするものである。第1報で明らかにした個や集団の学習者特性および個や集団が生きる家庭科学習過程構想の指針を受けて,本報では,まず個性化をはかる個の課題追求学習とそれを支える多様な集団との交流学習の場面を組み合わせた個と集団が学びあう課題解決的な小学校家庭科の学習過程を構想して提示した。またその授業実践を通して学習者自身が個や集団の学習をどのように評価したかを明らかにするとともに,先の学習者特性とあわせて分析することで,学習の個性化を支える学習集団の役割と個性に応じた学習のあり方を考察した。
  • 榎本 英雄, 松本 伸示
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,Philosophy for Children(以後,「子どものための哲学」とする)を手がかりに,Reasoning Skillsの育成を目指したカリキュラムを開発し,その授業の有用性を提案するものである。「子どものための哲学」では,教材開発,授業実践,能力測定等さまざまな研究が行われている。そこで「子どものための哲学」で中心的な役割を担うテキスト『ハリーストットルマイヤーの発見』をもとに,日本語版テキスト及び授業計画等のカリキュラムを作成し,授業実践及びReasoning Skills調査を行った。授業実践においては,Reasoning Skillsを用いながら哲学的な要素を含む討論を活発に行うことができた。また,Reasoning Skills調査においては,授業前と授業後の調査の平均値に有意な差が認められ,授業によるReasoning Skills育成の効果を確認することができた。
  • 青山 康郎, 戸北 凱惟
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 41-50
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    小集団の話し合い活動を,アイコンタクトと話者交代(Turn-Taking)の視点から分析した。その結果,話し手の視線が話者交代に大きな影響を与えており,視線が注がれない児童は発話も少なくなっていることが明らかになった。これを受けて,小集団内のすべてのメンバーを聞き手として意識するよう促したところ,発話の少なかった児童もアイコンタクトが得られるようになり,徐々に発話やバックチャンネル行為が増えていった。これは,発話行為を規定する要因を個の内面のみに求めるのではなく,話し合い活動を相互作用の場と捉えてコミュニケーション指導を行う必要があることを示唆している。
  • 福田 隆眞
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    シンガポールは2000年から教育改革に取り組み,現在,新しいシラバス(教育課程)が試行されている。教育改革では国民教育の実施,情報技術教育の充実,課外活動の充実,道徳教育の充実などが掲げられている。そうした状況の中で中等美術科教育は伝統文化の伝達から国民文化の創造へと教育の内容,方法を変化させている。本稿では新しいシラバスと教科書を検証した結果,(1)表現のためのアイデアの重視,(2)生徒の主体的学習の重視,(3)シンガポーリアンとしての文化の統合,(4)視覚言語の重視,という特徴を有していることを読み取り,中等美術科教育が国民文化創出のための創造性の育成という機能に転換していることを結論とした。
  • 中石 ゆうこ
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 59-68
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    対のある自他動詞は学習者にとって使い分けが難しいと指摘される。これまでの対のある自他動詞の習得研究は,文法性判断テストや多肢選択法を用いた言語知識の習得の様相を捉えているものである。そこで本研究では,日本語学習者の対のある自他動詞の運用での使用状況を明らかにする。OPIデータに見られた対のある自他動詞の混同による誤用とその動詞の使用状況を分析した結果,対のある自他動詞の誤用は中国語,韓国語,英語母語話者とも中級以降に現れ,上級になっても様々な自他動詞対で混同が見られること,自動詞,他動詞という動詞グループに関係なく誤用が現れること,対のある自他動詞は均等に使用されるとは限らないことが明らかになった。この結果から,運用の際に学習者は自他動詞対のいずれか一方のみを使用するという,使用の不均衡性があり,それが誤用につながる可能性があることが示唆された。学習者の使用に不均衡性を生じるかどうかには,初級教科書における対のある自他動詞の扱い,および動詞の語彙的特徴が関わる可能性がある。
  • 別惣 淳二, 千駄 忠至, 長澤 憲保
    原稿種別: 本文
    2005 年28 巻1 号 p. 69-78
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,兵庫県下の社会教育施設指導者170名と小学校教師567名の質問紙調査から,自然体験活動の指導で教師に求められる資質能力を因子分析により明らかにしようとした。その結果, (1)社会教育施設指導者が認識していた,教師に求められる資質能力は「共通理解と集団指導力」「安全管理・安全指導の能力・知識」「自然体験活動の知識」「企画・指導技術」「状況予測力と対人関係能力」「関心・意欲」「元気・体力」であった。一方,小学校教師は,「企画運営・指導力」「自然体験活動の知識・技術」「関心・意欲」「元気・体力」であった。(2)小学校教師の「企画運営・指導力」は,社会教育施設指導者の「共通理解と集団指導力」「安全管理・安全指導の能力・知識」「状況予測力と対人関係能力」を包含していた。(3)自然体験活動の指導で求められる教師の資質能力は,小学校教師よりも社会教育施設指導者が回答した資質能力の方が妥当であると判断した。
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