日本教科教育学会誌
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6 巻, 1 号
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  • 酒見 次郎
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 1-4
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    教科教育を体系化しようとするとき,先ず始めに「教科教育は何のために行なうのか」という教科教育の目的が考えられなければならない。教育は,人間を人間らしく育てていく作用である。人間らしくとは,人間性豊かにということであるが,人間性を動物的なものを基盤にしながらしかも常によりよく生きようとする人間の特性であると考え,よりよく生きるとは価値を求めて生きるということであると考えた。このことから私は,教科教育の目的は,このように人間の本性に由来する価値を求めていこうとする心を育てることである。という結論に達した。この目的を土台に,今後教科教育の内容つまり教科群に当る一つの価値体系を作りたい。具体的教材は,それぞれの価値に対応する文化財とする。教科教育の方法は,子ども達に教育の内容である価値を,一人一人の子どもが主観的に価値あるものと感ずるように,体験させることであると思う。
  • 佐伯 卓也
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 5-9
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    教授学習過程における評価は,一応,知識・技能の側面,創造性の側面,そして態度・憶意的側面からなされ,それぞれ,評価のための用具が開発され,利用されている。これに加えて,学習者の認知構造の評価用具が利用できれば,学習者を総合的に評価するのに有効な手段となるだろう。ここでは,主として言語連想テスト(WAテスト)により,学習者の認知構造へのアプローチと,そのスコアの処理法,さらに結果の解釈について述べ,数学教育の研究,特に先行オーガナイザー研究への応用,実践的な授業研究への応用などが考えられ,実用化していることを述べる。
  • 湊 三郎, 石川 智香子, 小松 樹, 奈良 倫子, 太田 万喜, 田沢 洋子, 土谷 博済
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 11-18
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    我々は,教育目標分類学(情意領域)にもとづいた,我国小学校教員志望学生のための,比較的手軽に使用できるLikert型数学的態度測定用具(MILMASと略称する)の開発を行った。MILMASは一次元性について劣るものの,項目の弁別力やその他いくつかの事項の検討結果において適当な性格を備えていると考えられ,今後の数学教育における実践・研究に利用されることが期待される。
  • 坂田 ひろし, 片山 英雄
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 19-25
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    この研究では,児童の関数概念の習得の可能性に着目し,適切な指導を加えることにより,どの程度まで関数概念を育てることができるかを実証しようとした。特に改訂学習指導要領では,関数教材は総合的に指導することがよいとされている。このことに焦点をあてて検討するために,関数概念の指導のみ集中的に取り扱った概念追究型と総合的な扱いをした概念構成型の授業を比較した。その結果,関数概念は小学校第4学年で,その基礎的な考え方は形成できること,総合的指導の中へ集中的指導を加える方法がよいことが検証された。
  • ラーマン マハブブル
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,バングラデシュの中等科学教育の顕著な問題点を指摘し,日本の中等科学教育の歴史的発達によって,それらの問題を解決するための糸口を見つけることである。バングラデシュの中等学校における科学教育は,ゼネラルサイエンスという教科の中で教えられており,将来,専門科学の分野へ進まない生徒にとっても必修であり,生徒は,ゼネラルサイエンスを一般教育として学習している。中等科学教育の問題は,教授方法,教科書,教材,教師用ハンドブック,などにおいて顕著である。それに,科学教育の目的と,実際のゼネラルサイエンスの教授方法との間に,大きな隔りがある。それゆえ,日本の中等科学教育の発達の歴史には,さまざまな特色を見つけることができる。これらの点は,バングラデシュにおける中等科学教育の改革の視点を明確にしてくれるように思う。
  • サファルティン ルティ
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 35-42
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,協応動作スキル学習における運動および視覚機能をそれぞれ支配すると考えられる大脳皮質間の電気的脳内活動の差違を,因子論的立場から考察することを目的とする。被験者は,広島大学の男子学部生10名(平均年齢20才)である。脳波は,協応動作器を用いて40回円を描かせることによって導出された。電極は,それぞれ中央前頭後野(17番部位),中央後頭(19番部位),および耳(23番部位)の部位に配置し,電気的脳内活動は,安静時(30秒間),第1回遂行時,最終遂行時に測定した。脳波因子を得るために,δ,d,α_1,α_2,β_1,β_2波のパワースペクトラムを主成分分析で分析した。主な結果は次の通りである。1.遂行時における両部位間の周波数には有意差が見られるが,安静時には見られない。2.脳波因子を得るために両単極間に含まれる全変数を統合すると,抽出された因子は次のものから成っている。a.安静時においては,2つの従属因子が抽出され,β波因子とδ-θ波因子である。独立なα皮因子は17番部位から抽出される。b.第1回遂行時においては,4つの独立因子が抽出される。α_2 -β波因子とδ-θ波因子は19番部位から,β波因子とδ-θ波因子17番部位から抽出される。c.最終遂行時においては,3つの独立因子が抽出される。α_2-β波因子とδ-θ波因子19番部位から,α_2-β波因子とδ-θ波因子は17番部位から描出される。
  • 久田 隆基
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 43-53
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    事象のある特定の状態や関係を示すときに使われる「一定」と事物の異同関係を示す「同じ」,「等しい」などの用語の意味・用法を明らかにするために,3種類の中学校理科教科書を用法のモデルとして,それらの中で使われている各用語の用例を調べた。各用語の用例から,意味・用法の分析を行なったところ,「同じ」と「等しい」は,大まかに分けて,それぞれ2通り,また「一定」は4通りの意味に使われていることがわかった。各用語の用法についての明確な規則性は見い出されなかったが,各用語の主体となっている語の種類によって,それぞれの用語の使い方に制限があることがわかった。理科で多く使われ,多義的であり,また用法も複雑であるこれらのような用語の意味・用法は科学的読み書き能力の育成という観点からも,理科教育の中で教えられるべきであることを示唆した。
  • 山下 太利, 前田 健悟, 渡辺 欣也
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 55-60
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    筆者等は,物理機器による音高の精密な測定法を音楽教育に適用し,児童の発声音・吹奏音の実態を正確に捉えると共に,それらの機器を頼りに児童が容易に音高の正否を自ら判断し,練習できる方法の開発を進めて来た。単音についての成果は既に報告した。本報では,最も基本的なハ調長音階について,児童の発声音の音高・音程を分析,検討した。その結果,児童の発声音に年令別・性別等につきかなり特徴的な傾向が見られ,音階の音高・音程の指導上特に注意すべき点も幾つか明らかにすることができた。尚,音高測定装置は,前報で報告した装置を拡張し,1つの発声音の持続時間内の任意の点の音高が測定できるようにした。
  • 西園 芳信
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 61-68
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    この小論では音楽による感動体験を心理的に反省し,次の点を考察した。(1)感動は感情の一つである。感動は情緒と同様に意識・行動において混乱と身体的変化を伴うが,情緒と異なるところは,音楽美のような価値との関係が深いことである。(2)感動体験に身体的変化を伴うのは,感情中枢(視床下部)が内臓中枢でもあると考えられ,この感情中枢が刺激されるとその影響が身体的変化としても現われる。(3)感動体験はすべての自我とすべての感情が価値に統一されたような体験で,深い精神的感情を伴っている。
  • 長谷川 裕, 綿引 勝美, 川西 正行
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 69-75
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,異なる方法で学習課題を把握させた場合,学習活動の結果にいかなる差異が生ずるかということを,クライドバタフライの教授-学習過程において検討することにより,効果的な学習課題の把握のさせ方の基本的観点を得ることにあった。教授プログラムの作成にあたり,実験群は次の3点が考慮された。(1)学習の初期段階における全体的課題の提示,(2)課題の系列性に基づく学習課題の提示,(3)学習者の能動的活動による学習課題の把握。以上3点を考慮しないプログラムによる統制群と比較すると,pre-testで低いパフォーマンスにあった学習者では,final-testにおいて実験群の方が高いパフォーマンスを示した。アンケート調査においては,課題の全体と部分の関係,系列性を認識している回答は,実験群の学習者に顕著に見られた。これらのことは,初心者のレベルでは上述の3つの観点が学習課題の把握を促進し,学習活動をより効果的なものにしたことを示唆している。
  • 毛利 亮太郎
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 77-80
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    子供がある物を作る時,彼等は課題を意識的にもち,その課題に関する情報を得,解決方法を見出してそれを実際に作る。そしてそれに問題があれば再度,情報-思考-実践を繰り返して作成する。この実情に沿って学習を進めるのがスパイラル学習である。その指導段階は,1.課題(その仕事について課題意識をもたせる),2.情報(その課題に関する情報を得る),3.思考(解決方法を見つける),4.実践(その考えに従って実践する).もし問題が残っておれば,上記の分節をスパイラルに繰り返して完成に導く,というものである。これはスパイラル学習と略称してもよい。
  • 森 秀夫
    原稿種別: 本文
    1981 年6 巻1 号 p. 81-88
    発行日: 1981/01/31
    公開日: 2018/01/21
    ジャーナル フリー
    人間形成において社会規範についての教育が重要であることはいうまでもない。本稿は,道徳と法の教育が一体となって行われるべきものであることを明らかにした上で,社会科における道徳教育と法教育のあり方を述べ,さらに道徳教育からみた法教育の問題点について論ずるものである。
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