日本教科教育学会誌
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26 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 小篠 敏明, 深澤 清治, 殿重 達司, 坂元 真理子, 張 小杰
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 1-7
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は主としてカナダで開発された北米モデルを尺度として用い,日本人普通科高校生学習者の英語学習動機を明らかにし,彼らの英語学習動機の構造を解明することを目的とするものである。因子分析による解析の結果,日本人普通高校生の英語学習動機は4種類から構成されていることが明らかになった。また,MANOVAによる解析の結果,2年生と3年生の間には,2種類の内発的動機(因子1,2)および非動機において有意差が認められた(2年生>3年生)。また,男性・女性の間には内発的動機・知識/成長(因子1),外発的動機(因子3),および非動機(因子4)において有意差が認められた(女性>男性)。
  • 保坂 芳男
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 9-18
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,普通科高校における理想的な英語教師像を明らかにすることを目的としている。そこで,山口県内のH高校生296名にアンケートを試みた。因子分析の結果,以下の6つの因子が抽出された。(1)受験学力のつく質の高い授業をする。(2)知識・教養が豊かである。(3)生徒の立場に立った授業をする。(4)カウンセリング・マインドを持って生徒と接する。(5)厳しい指導で英語力をつける。(6)英語の高い運用能力を持つ。さらに被験者の属性(学年,学力,好感度,性)を独立変数にし分散分析を試みた。
  • 安藤 幸, 賀川 昌明, 木原 資裕, 藤田 雅文, 松井 敦典, 棟方 百熊, 上田 憲嗣
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 19-28
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,創作ダンス指導上の問題に対する解決策の1つとして創作ダンスの構成要素や構造・創作手順を提示する「学習支援ソフト」を開発し,中学校の体育授業における使用効果を生徒の認識レベルから検討することを目的とした。実験授業の対象は同一学校・同一学年の2クラスとし,一方のクラスは単元の前半に「学習支援ソフト」による提示方法,後半に掲示物による提示方法(紙に書かれた図と文字を使って説明)で行った。もう一方のクラスでは前半に掲示物による提示方法,後半に「学習支援ソフト」による提示方法で行った。授業後における生徒の反応を分析した結果,それぞれの提示方法に対する評価を個別に調査した場合は,どちらの方法に対しても肯定的な反応が多く,両者に差が見られなかった。しかし,両者を比較する形での調査に対しては,いずれの観点においても「学習支援ソフト」の方が効果的であるという評価が示された。
  • 桑山 尚司, 岩崎 秀樹, 馬場 卓也
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 29-38
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,1994年以来,島根県横田町によって実施されてきた珠算教育協力プロジェクトの現状を分析することである。このプロジェクトは,教材の欠如が問題となっているタイ東北部ロイエット県において,珠算の普及を通して小学生および中学生の計算能力の向上を図ってきた。本研究の質問紙法とインタビューによる調査を通して分かったことは,i)都市部と農村部の生徒の計算能力に差がみられたこと,ii)珠算経験のある生徒は,未経験の生徒より計算力が高かったこと,iii)珠算教育は,生徒の数学教育に対する関心や意欲との関連が見られたこと,である。このことを通して,珠算教育は,計算能力を育てる道具としてのみならず,その地域における低水準の教育の現状を打破する刺激として,理解するべきであることを指摘した。結論として,本プロジェクトの意義と課題を明らかにした。プロジェクトの意義は,国際教育協力の観点から,次の四点である。第一に,日本の自治体が主体的にこのプロジェクトに関わっていることである。第二に,初等教育レベルの基礎学力の向上という問題に取り組んでいることである。第三に日本の独自性を活かせる珠算が利用されていることである。第四に,農村部における教師教育の活性化の契機となりうることである。そして,これら四点を十分に活かすためには,珠算教育をタイ農村部での算数・数学教育に統合していくことが真剣に考えられなければならず,日本の教科教育学がそこに重要な役割を果たしうることを指摘した。
  • 田中 博晃, 山西 博之
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 39-48
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    英語学習動機に関する研究は膨大だが,いまだ英語学習動機がどのようなものか十分に捉えきれていない。特に英語学習動機の全体像は見えても,(1)それが織りなす複雑なダイナミズムが今ひとつ明確ではなく,また(2)研究の成果が現実の教育現場と乖離してしまっている。そこで本論では,ある中学校1年生の少女の「語り」から,ある授業活動における学習者の動機づけだけではなく,家庭環境や学校外での学習なども内包したありのままの姿の動機づけを,生々しい形でリアルに描きだす試みを行なうことを目的とする。その結果,(1)教師に誉めてもらいたいのに,それを妨げる学級の雰囲気から生じる,満たされない欲求,(2)授業レベルは簡単すぎて面白くないが,その一方で良い成績を収めることよって得られる教師からのフィードバックを失いたくないという葛藤,(3)英語学習の社会的必要性を認識している一方,個人的な学習理由が見出せない矛盾,という英語学習動機の実態を浮き彫りにした。
  • 森 清加, 佐藤 園
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 49-58
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,香川県における初期家庭科の実証的分析を通して,わが国における家庭科の具体的成立を明らかにすることを目的としている。本報告では,戦後の香川県教育の先駆的役割を果たし,コア・カリキュラム(1947〜49)から教科カリキュラム(1952〜55)へ移行した「坂出附小プラン」を分析対象とした。コア・カリキュラムにおける家庭科学習は,家族関係・家庭経営が「中心学習(課程)」に吸収され,衣食住の技能が「周辺学習(造形)」「周辺課程・技能(その他)」に位置づけられたため,時間割上に「家庭科」は存在しなかった。この位置づけは,コア・カリキュラムの限界であったにもかかわらず,家庭科の存立問題に転嫁された。これに対して家庭科担当教諭大木ミツ子氏は,教科カリキュラムの中での家庭科の独自性を「実践的な学習の系統的指導による民主的家庭生活に必要な技能習得」に求め,「家庭科学習基準表」「香川県小学校教育課程家庭科篇(試案)」「家庭科学習指導形態」を作成し,それを具現化した授業を公開することで教科「家庭科」を具体的に成立させていた。
  • 朝倉 淳
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 59-68
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    「気付き」は生活科のキーワードであるが,その使われ方や概念は一様ではない。本小論では,学習指導要領と指導要録の分析を通して,生活科における「気付き」に関する諸問題を考察し,「気付き」の検討に必要な視点,枠組みを得た。それをもとに,「気付き」の概念を規定するとともに,「気付き」の特質について考察した。ここでは,「気付く」を,「子どもが具体的な活動や体験,思考や話し合いなどの学習活動によって対象に出会い,自らの内面に,何らかの事実,関係,疑問,感情,感覚などを生起させ,子ども自身がそれを意識し自覚すること」と規定し,そのようにして意識され自覚された事実,関係,疑問,感情,感覚などを「気付き」とした。ここで示した生活科における「気付き」の概念や特質は,暫定的なものであり,今後,生活科授業における子どもたちの具体的な「気付き」を通して吟味,検討を進めていく必要がある。
  • 松浦 拓也, 角屋 重樹
    原稿種別: 本文
    2004 年26 巻4 号 p. 69-76
    発行日: 2004/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,本学会の機関紙である「日本教科教育学会誌」のVol.1〜Vol.25(1976〜2003)に掲載された理科教育学に主たる視点を置いた論文を中心に抽出し,教科教育学という視点から整理を行った。具体的には,抽出した論文を教科区分論,基礎論,目的・内容論,方法・実践論という4つの区分に整理し,それらを大きく3つの年代に分けて概観することによって理科教育学研究の動向を把握し,その展望を行った。その結果,これからの理科教育学研究においては,知を育むための研究のみでなく,理科教育を通して人間形成を行っていくための具体的な教授一学習課程を考案するとともに,その実践と評価を行っていく必要があることを示した。
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