日本教科教育学会誌
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24 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 水井 裕二
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,先ずこれまでに指摘されている図の機能や問題解決に有効な図の条件の概要を示し,次に図的表現が問題解決に及ぼす効果と,図的表現の指導効果に関する先行研究をレヴューする。そして最後に,算数科教材の一つである「速さ」の非定型的文章題の問題解決に有効な図的表現の条件を提示する。これまでに13の図の機能と,3つの問題解決に有効な図の条件が指摘されている。図的表現が問題解決に及ぼす効果,及び図的表現の指導効果に関する研究は,その数が非常に少ない上,調査対象にも偏りが見られる。「速さ」の非定型的文章題の問題解決に有効な図的表現の条件は,追いつきや出会いに向けての運動が開始される様子,時間の経過にともなって変化する距離や水量の様子,追いついた事態や,出会った事態の仮説がなされ,時間の経過にともなって距離や水量が変化する様子が表現されていることである。
  • 岡崎 正和
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    算数で培った経験的な認識から中学校数学での理論的な認識への変化に,多くの生徒が困難を示している。それゆえ,それらを媒介する学習の設定が必要であり,それを担う教材の一つに作図がある。しかし,そこでの生徒の認知的変容の様子が現状では十分明らかになっていない。本稿では,中学校1年の作図の授業データをもとに,生徒による作図とその正当化における思考展開を分析し,理論的認識へ発展するための要因を抽出することを目的とした。その結果,作図学習を通して図形認識を高める過程において,かたちを道具として使用すること,描いた手続きをその結果と区別し,手続きを正当化の条件として再構成すること,イメージ図式が機能するような経験的証明を許すことが,理論的認識へ向かう上での要因になることが示唆された。
  • 梅津 正美
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,中等学校における歴史教育内容改革の理論的枠組みを得るため,70年代から90年代にかけてアメリカ合衆国で開発された社会史アプローチに基づく中等歴史教育プログラムを分析し,社会史教授の原理・類型を明らかにすることを目的に為された。考察の結果,「総合的歴史理解」と「現代社会理解」に資する社会史教授論は,「主題的社会史教授論」と「年代的社会史教授論」とに大別でき,さらに前者の下位類型として「社会生活領域史教授」型・「社会生活拡大史教授」型・「社会生活領域・拡大史教授」型を持つこと,後者の下位類型として「国家政治領域史の社会史的教授」型・「国家総合史の社会史的教授」型・「世界諸地域総合史の社会史的教授」型を持つことが明らかになった。また,社会史教授論は,「総合的歴史」の内容構成軸の解釈を視座に,主題的社会史教授論から年代的社会史教授論に漸進的に展開してきていることが明らかになった。
  • 寺尾 健夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,米国の中等歴史カリキュラム『生きている歴史!』の分析を通して,社会的構成主義に基づく歴史授業の構成原理を明らかにした。その原理とは,(1)資(史)料と体験に基づく歴史の意味構成,(2)協同による歴史解釈の吟味と知識の発展,(3)既有の認知構造の利用と再構成による歴史理解の発展,の3つである。これらの授業構成原理の利用によって,学習者に,自己の見方や視点を基にして歴史についての意味ネットワークを拡大させ,歴史理解を発展させる歴史学習の実現を保証することが可能になる。
  • 橋本 三嗣
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は大学1年生と3年生の論理的思考力を調査し,その様相を明らかにすることである。そのために国立大学の大学1年生と3年生に対して調査を行い,調査対象者を専攻,学年,性別という3つの観点から分け,また調査結果を推論の型・問題の内容という視点から分析・考察した。そして中学校3年生の調査結果と比較した。その結果,次のことが明らかになった。(1)同じ学年で比較した場合,大学で数学を専攻している大学生は大学で数学を専攻していない大学生よりも調査得点が有意に高い。(2)大学で数学を専攻している大学生の集団に限り, 3年生が1年生より調査得点が有意に高い。(3)専攻別の大学生の集団の中には,女性が男性よりも調査得点が有意に高いものもある。(4)推論の型については,逆型と裏型の問題の正答率が低く,問題の内容については,日常的,仮想的な事柄の下での問題の正答率が低い。(5)調査結果に関して大学生を中学校3年生と比較した場合,大学生は中学校3年生より数学的な事柄の下での問題の正答率が高い。これらより,今回の調査で点数化した論理的思考力は,特に大学の数学を学ぶことで飛躍的に伸びると推測される。
  • 塚原 久美子
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    数学教育に数学史を活用する際の指導法として,数学史先行型指導法と技能先行型指導法を提言し,微分積分法学習に適用することによって数学史導入の効果の違いを調べた。数学史先行型指導法は,学習の最初から数学史を活用し数学が形成されるときの視点,数学的な見方・考え方のよさを認識させるという学習のプロセスを重視し,技能先行型指導法は,最初に解法を学習させ,その後で理解を助けるために数学史を活用する方法である。その結果,数学史の活用により,数学史先行型指導法では,情意面の意識においてのみ明らかな効果が得られるのに対して,技能先行型指導法では情意面及び知識・技能面の意識の両方で効果が得られた。
  • 長石 啓子, 松田 圭子
    原稿種別: 本文
    2001 年 24 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    小学校家庭科の衣服領域を核とした総合的学習において,衣服から世界を見つめていこうとする意欲や実践力を育て,児童の衣服に関する興味・関心を高めることを目的とし,授業開発を行った。前報では,授業の全体構造と学習プロセスについて報告した。本報では,授業を児童がどう受けとめたかに視点をあて,授業前後の児童の記述やアンケートをもとに,授業の分析と評価について報告する。結果は,1.児童の95%が,学習が楽しかったと回答した。2.第1段階の課題をもつ導入の授業では,60%の児童が課題を持ったと答えた。3.児童が熱心に取り組めたのは,第2段階の「1枚の布から衣服を作ろう」であった。4.授業後,服と世界のつながりや外国のことに興味・関心を持った児童が増えた。服に対する意識も変化した。5.総合的な学習を行う時,1つの課題からたくさんの課題が派生していくことや目的とすること以外の成果を得ることができることがわかった。以上から,本授業の題材と学習内容,方法は児童に肯定的に受けとめられ,学習目標に対する一定程度の効果が確認された。
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