本稿では次のことが明らかにされている。1.方法論的基礎とは,研究の具体的方法ではなく,その前提となる原理的方法であること。またそれが,反省的及び前反省的な現象形態をもつこと。2.造形教育研究の対象に対する態度や認識の仕方には,一般的な「自然と文化」という二元的区分が底流しており,特に反省的形態では,対位的な創造主義及び生活主義美術教育観に共通するものであること。他方,両教育観の相違は,依拠する基盤と「自然」あるいは「文化」への方向性にあること。3.<自然的なもの>と<文化的なもの>の構造と性格を示し,<造形教育的なもの>を位置づけることによって,「自然と文化」という区分の限界が明らかになること。同時に,その二つの方法領域は,対位的なものではなく,むしろ研究対象の正確な把握のための転換領域としてあること。
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