日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
Print ISSN : 0288-0334
ISSN-L : 0288-0334
36 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 塙 佐敏
    2013 年 36 巻 3 号 p. 1-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,「ボールキャッチによる自陣コート内での組み立て」と「はじく技能の習得」を目指したキャッチバレーボールが,ネット型ゲーム導入として有効であるかどうかを明らかにすることである。4年生を対象とし,ゲームを行うに際しては,サーブは両手で相手コートに投げ入れ,自陣コート内はキャッチ&パスで3回つなぎ,そして相手コートへの返球は両手で投げ入れるかはじく,として行った。その結果,以下の点が明らかとなった。1)両手での投げ入れサーブを行ったことにより,サーブ成功率は高まった。2)自陣コート内はキャッチしたボールをパスでつないだことにより,確実な組み立てができた。また1攻撃当たりの平均時間が短くなり,スピーディなゲーム展開となった。3)相手コートへは,両手での投げ入れかはじいての返球としたことで,攻撃方法が多様化し攻撃得点が増加を示した。4)セッターの役割を認識させ,はじきアタック得点を2倍にしたことで,その割合が増え,ゲームを通してはじく技能の習得につながった。5)自分のポジションから移動し,味方のカバーや攻撃ができるようになってきた。 以上のことから,キャッチバレーボールはネット型ゲームの導入として有効であると考えられる。
  • 渡辺 理文, 黒田 篤志, 森本 信也
    2013 年 36 巻 3 号 p. 13-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,理科授業において,子どもの科学概念構築を促進させる形成的アセスメントの機能について明らかにすることを目的とした。具体的には,ペレナウー(Perrenoud, P.)の提案を基に形成的アセスメントにおける教授・学習過程の構造を分析した。これは,形成的アセスメントにおける教授・学習過程を共に4段階に分け,各段階において,形成的アセスメントの実践を構想するものである。この構造を用いて,理科授業を計画した。結果として,教師が本研究で作成した教授過程を進めることで,子どもの科学概念構築を支援することができた。
  • 酒井 勇也
    2013 年 36 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,関心・意欲・態度の評価に着目して,全米学力調査音楽の評価観の変遷を明らかにすることを目的とした。第1回,第2回,および第3回の音楽学力調査の調査計画と問題の検討の結果,以下のことが明らかとなった。① 第1回(1971年から1972年)から第2回(1978年から1979年)にかけて,関心・意欲・態度の調査が重視されるようになったこと。② 第2回から第3回(1997年)にかけて,アカウンタビリティの要請の高まりを背景に,関心・意欲・態度が学力として位置づけられなくなったこと。③ 第1回から第3回までの調査で共通して,情意的領域の学力として関心・意欲・態度よりも美的感受性が重視されていること。
  • 岡崎 浩幸, 加納 幹雄
    2013 年 36 巻 3 号 p. 37-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,英語教員の海外長期研修者がどのような研修を受けてきたのか,その経験と知識をいかに活用・還元してきたか,また,成果還元の妨げになっていたのは何かを明らかにし,今後の研修成果の還元のための示唆を得ることを目的とする。質問紙を用いて36名の海外長期研修者(6カ月)から集めたデータを主に量的・質的研究法(構造構成的研究(西條,2007))で分析した。その結果,研修内容には概ね満足しているものの,研修で得た知識や経験が自己変容や他の英語教員のために十分に活用・還元できていないことが分かってきた。活用・還元を妨げていたのは,「成果と現場とのギャップ」「研修への理解者不足」「還元機会の欠如」であった。今後の研修については「帰国後サポート体制」「英語教員への還元」「事前の目標設定」が研修成果を広げていくために必要であることも明らかになった。
  • 萱島 知子, 高橋 美与子, 鈴木 明子
    2013 年 36 巻 3 号 p. 49-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,「食情報の受けとり方への認識を深める」という学習目標をもつ2つの授業を提案し,それらの効果と課題を明らかにすることを目的とする。2つとも高等学校「家庭基礎」において,マスメディアから提供される食品機能に関する情報について考え,食情報を主体的に判断できるようになることをねらいとした授業であった。ワークシート記述分析により,次のことが明らかとなった。第一に,学習者の9割以上が授業のねらいである食情報を主体的に判断することの必要性を認識でき,さらに8割程度は食情報を判断するための観点を説明できた。第二に,情報提供者の立場で問題を考えさせる場面を取り入れることによって,食情報を判断するための観点をより具体的に捉えさせることができ,主体的判断を促すことが示唆された。第三に,多面的検討により生活者として適切な判断を行うために,食情報を判断するための観点を複数認識させる方略の必要性がみえた。
  • ― 小学校低学年からの家庭科学習の論理的可能性の検討 ―
    信清 亜希子, 佐藤 園
    2013 年 36 巻 3 号 p. 59-70
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,我が国の小学校低学年からの教科「家庭」の可能性を,論理的・具体的に実証することにある。本報告では,小学校低学年から実践された一つの事実として米国で開発された幼稚園~小学校6年のHomemaking Program(HMP)を選定・分析し,内容編成原理と性格を解明した。HMP は,我が国のように「高学年にならなければ家庭科を学ぶことはできない」と考えるのではなく,「教科のねらいと原理」に基づく内容を編成していた。それは「児童は何歳であっても課題『よりよく生きる』を持ち民主主義社会で生きている」という事実に基づき,各学問から抽出した発達課題を初等学校の目的・内容と照合することで家庭科の発達課題を導出し,その達成のために,家政学の各研究分野で解明された概念を,二重構造を持つカリキュラム原理で教科内容として編成していた。授業では,他教科との関連を図る児童の経験に基づく学習により概念を一般化させ,最終的には,構成概念「生活者としての自立」を獲得させる家庭科となっていた。
  • ― Electronic Keyboard Laboratory に着目して ―
    長谷川 諒
    2013 年 36 巻 3 号 p. 71-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿は,1960年代のアメリカ音楽教育に重要な影響を与えたManhattanville Music CurriculumProgram が構築したカリキュラムの1つであるElectronic Keyboard Laboratory に着目するものである。EKL は,電子キーボードを用いた即興演奏を主たる学習活動として設定しつつ,MMCP によるその他のカリキュラムでは実現し得なかった,概念理解と演奏技術の相関的な育成システムを体現したものである。このカリキュラムの具体的な特徴は,① encounter と呼ばれる単元の中で,生徒の自発的な探究(即興)活動が主たる学習活動とされている点,②Developmental Phase of Music Education と呼ばれる即興演奏の発達段階論に依拠することで,様々な音を物理実験的に奏する音響的な「探究」活動から,より計画的で作曲的に音楽を生み出す音楽的な「即興」へとつながる連続性を想定している点,③概念の理解度の発達と演奏技術の熟達を,様々な音が有する物理的な性質に着目することで関連付けながら育成しようとしている点,に見ることができた。
feedback
Top