本研究は,「家庭科における批判的思考力」が具体的にどのような力であるのかを明らかにするために,Ennis, R. H. の批判的思考論を踏まえ家庭科における批判的思考力を検討することを目的としている。Ennis は,批判的思考の能力として「明確化(clarity)」と「相互作用(interaction)」を挙げた。「明確化」は「問題発見力」や「問題把握力」につながるものであり,「相互作用」は「多角的・客観的に思考する力」や「自分の考えを練り上げていく力」につながるものとして考えられた。これらは家庭科教育で重視されてきた生活を把握する「生活分析力」や多面的・客観的に思考し自分の意見を練り上げていく「吟味・検討し創出する力」に相当するものとみなされた。家庭科における批判的思考過程は,「生活の明確化」と「課題の明確化」を通して,実生活においての「行動の思案」をし,意思決定につながる「行動の明確化」により実生活における行動を創出することができると考えられた。
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