日本教科教育学会誌
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21 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 丸山 真司
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,戦後学習指導要領においてルールがどのように位置づけられてきたのか,またその中でルール学習がどのような特徴を有し,どのような背景のもとで展開されてきたのかを明らかにすること,そこから体育におけるルール学習の問題点を把握し,今後のルール学習についての研究課題を引き出すことを目的とする。主な考察は,以下のようにまとめられる。第1に,戦後指導要領においては「ルール」という用語の代わりに「規則」「きまり」が用いられ,そこでは仲よくする態度や公正・協力・責任などの社会生活に必要な態度(社会的態度)の育成に関わって,「きまり」「規則」を"守る"態度の学習が中心に位置づけられてきた。その背景には当時のスポーツ規範論や「身体活動を通した教育」観があり,その影響下でルール学習には倫理的・道徳的側面が強調されていた。第2に,指導要領の影響下,これまでの体育授業におけるルール学習の中心は,社会的態度の育成をねらいとするルール学習とルールづくり学習であり,それがセットとして行われてきた。そしてルールづくり学習では,教師によるルール変更から子どもの手によるルールづくりへとその学習の重点がシフトしていった。第3に,指導要領では,ルールに関する知識面での学習がほとんど位置づけられてこなかったが,90年代に入り体育における教科内容研究が進展する中で,ルールの社会科学的認識の獲得を目指したルール学習が構想され実践されるようになった。今後の研究課題としては,スポーツの倫理・道徳性と体育における社会的態度の育成との関係を実証的に明らかにすること,子どもの「合意形成」と「スポーツ文化の継承・発展」を結びつけたルールづくり学習の実践化,スポーツ文化の変遷とルール変更の因果関係やスポーツの意味形成とルールとの関係を学習の対象(内容)にしたルール学習の授業づくり,これまでのルール学習実践の分析や子どものルール認識の分析からルール学習に関わる教科内容の編成・構造化が挙げられよう。
  • 古郡 曜子, 中村 秀子
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 15-26
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    高校家庭科食生活領域の授業構成の基礎資料として,高校生の家庭科教育に対する意識調査を行った。対象とした高校生の態度測定平均値は,5.50で中位よりやや好意的であった。男女別では,女子5.14,男子5.86で女子の方が尺度1間隔以上好意的であった。各意見の選択比率の分析から明らかにされた家庭科教育の課題を解消するために,食生活領域の内容を検討し,食生活における人と人,人と物,物と物との関わり・関係性をふまえて3分野を設定し,「食のひろがりを知る」として分野間の関連と方向性を示した。生徒の食生活に即しか身近な事物・事象を教材とし,3分野に対応させた3レベル内・間の「ひろがり」と「つながり」の原点に自己を位置付け,その意識化を通して生活主体の認識形成を目指す授業構成モデルを作成し,具体的な展開を示した。
  • 田部井 恵美子, 滝山 桂子
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 27-34
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    総合的実践授業の評価から,次のことが判明した。1.総合的実践授業の有効性を,意識面および知識面において確認できた。2.授業に対する意識を形成する要因として,生活状況,テスト成績,実践的態度の影響を一部受けていることを把握できた。3.意欲について,題材構成相互の関連性を考察したが,同じ事例に対して授業方法が違っても,同レベルの反応をする場合が多かった。授業方法では,講義および調査と比較すると,実習は,事例により固有の反応をする傾向が明らかになった。多様な生徒の意欲を引き出すために,実習題材は,偏らずに選定することが望ましい。4,双生児の場合,生活状況は類似しているが,実践的態度においては,女子は類似しているものの,男子は異なっている傾向であった。遺伝的素質が近似し,同じような家庭生活および学校生活の下でも,地域生活の影響や生徒個人の個性の確立により,多様な認識構造を形成していることが判明した。よって,家庭外の広範な地域生活を視野に入れて題材事例を選択する必要がある。
  • 吉野 秀幸
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 35-43
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    次代の芸術科カリキュラムはいかにあるべきか。芸術教育は「芸術のための教育」でもなければ「芸術を通した教育」でもない。我々は対照的なこの両立場を乗り越えるべきだと考える。つまり,芸術世界の理解を前進させることは言うまでもなく,同時に芸術も含めた現実世界のパースペクティヴを拡大させる点にこそ芸術教育の意義があると見るのである。このような芸術教育を実現するため,我々は科学,言語,日常の知覚などと同様芸術も様々な意味作用を果たすシンボルと捉え,その認知機能に着目,諸芸術および芸術教科の統合を目指す。本稿の目的は,第一にN. Goodmanの認知理論に基づいて芸術統合型カリキュラムの基本理念を示すことにある。そして第二にカリキュラム構成の根幹をなす芸術統合の鍵を握る諸概念の仕組みを明らかにすることにある。今回の研究は,芸術教科の統合のみにとどまらず,種類の異なる認知システムごとに新たに教科を編成し直すという着想を含むものでもある。
  • 和泉 安希子, 上村 千枝
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 45-53
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,家庭科教育における「魚」教材の方向性を探ることを目的とし,中学生の魚に対する意識調査についての分析を行った。調査対象は,漁業地域,地方都市および首都圏から5ヵ所を選定し,各地区の中学1年生を対象に,日常生活における生活体験として,魚釣りの体験の有無,調理体験,食事回数を調査し,さらに,魚料理に対するイメージ,魚の加工品に対する知識等を調べた。その結果,生徒の魚に対する認識は,地域によって大きく異なり,漁業地域のように,日常生活の中で魚に触れる機会が多く,魚に対して豊富な知識を持っている生徒が多い地域がある一方で,魚の形態把握もできていない生徒の多い地域があることがわかった。また,魚が栄養的に優れていることは理解されているが,骨や見た目の問題でマイナスイメージを持っていることが明らかになった。このような生徒の実態を把握し,地域の特性を生かした教材の検討および授業作りが必要であると考えられた。
  • 權 五鉉
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 55-62
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,『国史地理』の内容構成原理を析出し,そこに見られる国民意識形成の論理を解明することにある。そのために,(1)「地歴統合」の方法,(2)国史教材の要素と構成方法,(3)地理教材の要素と構成方法,を究明し,国民意識の形成がどのように目指されていたかを明らかにした。それは次の三点に要約される。(1)「地歴統合」は,国史中心の年代史的構成を取りながら,地理的教材を相関的に取り入れた形でなされている。それは,国家の発展と国土の拡大が同時になされてきた傾向性をわからせるとともに,その趨勢を維持することが国民の使命であることを認識させるためであった。(2)国史教材の場合,従来の人物中心の構成原理を改め,有機体としての国家の発展過程を直接的に示した構成になっている。(3)地理教材の場合,国土全体の概観→各地方と都市の地誌→日本全体の系統地理→日本の勢力が及ぶ外国地理という構成によって,全国土の総括的認識と地理的現勢の把握ができるようになっている。
  • 角屋 重樹, 石井 雅幸
    原稿種別: 本文
    1998 年 21 巻 3 号 p. 63-69
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校第6学年児童が科学の暫定性という特質をどのようにとらえているのかを明らかにしようとした。このため,東京都内4校の221名,神奈川県内4校の417名の計638名の第6学年児童を対象とし小学生用に改変した変形NSKSテストを実施した。小学生用に改変した変形NSKSテストとは,創造性,テスト可能性,発展性,簡潔性の4種の尺度から成り,4種の各尺度を構成するそれぞれの項目に関して3段階の尺度値で反応するものであった。第6学年児童の科学の暫定性に関する理解のしかたは,4種の各尺度を構成する項目,及び各尺度の構成項目における尺度値の人数に表れると考えられる。そこで, 4種の各尺度を構成する項目については主成分分析法で検討した。また,各尺度を構成する項目における尺度値の人数に表れる科学の暫定性に関する理解は,各尺度を構成する項目の3段階の尺度値における人数分布から検討した。その結果は,以下のようになった。(1)抽出した主成分は,創造性,発展性,簡潔性とテスト可能性,創造性という尺度に対応するものであった。(2)各構成項目の3段階の尺度値における人数分布に表れた科学の暫定性に関する理解,特に未理解は,4種の尺度のうち,簡潔性の尺度に表出した。それは,小学校第6学年児童は科学的知識や法則,理論に関する表記上の簡潔性を認めていない,というものであった。
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