本研究は,小学校第6学年児童が科学の暫定性という特質をどのようにとらえているのかを明らかにしようとした。このため,東京都内4校の221名,神奈川県内4校の417名の計638名の第6学年児童を対象とし小学生用に改変した変形NSKSテストを実施した。小学生用に改変した変形NSKSテストとは,創造性,テスト可能性,発展性,簡潔性の4種の尺度から成り,4種の各尺度を構成するそれぞれの項目に関して3段階の尺度値で反応するものであった。第6学年児童の科学の暫定性に関する理解のしかたは,4種の各尺度を構成する項目,及び各尺度の構成項目における尺度値の人数に表れると考えられる。そこで, 4種の各尺度を構成する項目については主成分分析法で検討した。また,各尺度を構成する項目における尺度値の人数に表れる科学の暫定性に関する理解は,各尺度を構成する項目の3段階の尺度値における人数分布から検討した。その結果は,以下のようになった。(1)抽出した主成分は,創造性,発展性,簡潔性とテスト可能性,創造性という尺度に対応するものであった。(2)各構成項目の3段階の尺度値における人数分布に表れた科学の暫定性に関する理解,特に未理解は,4種の尺度のうち,簡潔性の尺度に表出した。それは,小学校第6学年児童は科学的知識や法則,理論に関する表記上の簡潔性を認めていない,というものであった。
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