日本教科教育学会誌
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18 巻, 2 号
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  • 松本 和子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 1-8
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    1970年代の初期の学習ストラテジ一研究(例えば,Rubin 1975)は,高いレベルの第2言語能力を有する,いわゆる「できる」学習者の用いるストラテジーの観察研究である。主な研究成果として,「できる」学習者は,正確な推測能力及びコミュニケーションに対する強い意欲を持ち,誤りを気にせず,あらゆる練習の機会を利用し,第2言語の形式・意味の両面に注意を傾けること等が明らかにされている。1980年代から今日に至るまでのより科学的なストラテジ一研究(例えば,O'Malley et al. 1985)の主な研究成果は,(1)「できる」学習者は,学習ストラテジーの使用頻度が高く,使用可能なストラテジーのレパートリーが広く,課題に対して適切なストラテジーを選択する,(2)女性は男性よりも使用する学習ストラテジーの範囲が広く,また,社会的ストラテジーの使用頻度も高い,(3)様々な要因(例えば,学習意欲,学習スタイル,文化的背景)が学習ストラテジーの選択に影響を及ぼす,の3点に要約される。また,学習者に対するストラテジー・トレーニング研究(例えば,Oxford et al. 1990)によれば,特定のストラテジーの有用性及びその使用方法,新しい状況や課題への適用方法を学習者に明示的に教えること,及び,通常の教室内での学習活動の中にトレーニングを融合することが最も効果的である。
  • 柳瀬 佳子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 9-17
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    現代社会での女子青年の道徳意識を知るために,向社会性及び慣習性を含む質問紙調査を行った。向社会性については他者が援助を求めてきた時に応じる援助行動を行うと答える割合が多く,積極的に向社会的行動を起こすと答える割合が少なかった。能動的な向社会性の中でも「バスや電車の中でお年寄りに席をゆずる」という事柄には8割の女子学生がかかわると答えているが,それ以外の事柄についてはそれほどかかわる比率は高くない。受動的な向社会性の各項目についてはどれもかなり高い比率でかかわると答えていた。同じ向社会的行動であっても援助を求められるという状況のときの方が援助行動が行われやすい。慣習性については,男性の職業や女性の職業と昔のように性別で職業が分類されないことや,ニューハーフのような性転換をした人もそれほど不思議だとは思われなくなっている。社会の変化に伴った道徳意識があるようである。
  • 金子 智栄子, 鈴木 朱美, 三浦 香苗
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 19-24
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は幼稚園教育でのマイクロティーチング(MT)の効果を,指導を実際に行なった者と観察に参加した者との比較で検討したものである。養成校の1年次115名の女子学生に,基本的な教育技術を習得させるためにMTを実施した。そして,学生の意識したMTの有効性についてカテゴリーとその要素を作成し,要因を抽出したところ,5要因(「指導過程全般への効果」,「学習状態の認知や学習意欲向上への効果」,「観察学習効果」,「立案実施によるフィードバック効果」,「指導実践の難しさの認識への効果」)が得られ,それを「EMTKS」の要因とした。全学生を14班に分けて,各班から選出された1名の指導者が2回実地指導を行ない,他者は観察するという方法でMTを実施したところ,「繰り返しの効果」は観察者群で,「立場の違いによる効果」は指導者群で顕著であることがわかった。また,MTは単に指導技術を向上させるだけでなく,学習状態の認知や学習意欲の向上にも有益であることがわかった。
  • 狩野 高信, 松本 伸示
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 25-31
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    ニュージランドでは,ワイカト大学教育研究センターにおけるLISP(理科学習プロジェクト)を中心として,子どもの科学概念形成やそれにかかわる学習指導方法の研究に取り組んできている。本研究では,ニュージーランドにおける理科カリキュラム改革の中に,子どもたちの自然認識を生かした構成主義的アプローチがいかに応用されようとしているのかを明らかにすることを目的としている。そこで,現地調査を行い,教育省が配布したカリキュラム文書を構成主義的な観点から分析した。分析結果から今回改訂された一連の理科カリキュラムは,従来の単に学習されるべき内容だけを重視した改訂とは異なり,構成主義的な観点に則って開発されたカリキュラムであることが明らかにされた。
  • 齋藤 昇
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 33-39
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,数学の学習において,生徒が学習内容をどの程度構造的に思考し理解しているか,また同一教材であっても学年によってどの程度の差があるかを数量的に明らかにした。実験は中学生,高校生,大学生を被験者とし,TCM法を用いて行った。構造的理解の度合いを表す伝達係数を用いて生徒が描いたコンセプトマップを分析したところ,つぎの結果が得られた。(1)当該学年で学ぶ新しい学習内容については,中学生,高校生,大学生とも平均伝達係数の値はほとんど同じである。(2)同一教材内容に対する平均伝達係数の値は,中学生と大学生,高校生と大学生を比べると,大学生の方が中学生よりも約0.09,高校生よりも約0.06大きい。(3)学習内容を構造的に理解している生徒は,理解していない生徒に比べると,平均伝達係数の値が約0.43大きい。
  • 佐賀野 健, 西村 清巳
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 41-49
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,現在の競技バレーボールにおけるブロックの位置づけを技術段階別に明らかにすることと,指導者のブロックに対する考え方,指導方法の実態を明らかにすることによって,ブロックの指導理論と指導方法を構築するための基礎資料を得ることである。結果:1.ゲームにおいて,15点のうち3〜4点以上をブロックによって得点できるほど,ブロックは攻撃的になっている。2.相手アタッカーに対して2人か3人でブロックにつくことができた場合,ブロック返球率,アタックレシーブ率,相手のアタックミス率は,ブロッカーが1人以下の場合にくらべて高くなっている。3.技術段階が上がるにしたがって,攻撃パターンがオープン主体の攻撃からコンビネーション攻撃に変わってくる。そして,ブロッカーが2人以上でブロックに跳ぶことが難しくなる。4.ブロック指導の実態では,「身長の低い選手やジャンプ力のない選手は,ブロックをする必要はない」「ブロックは効果が見られないから,練習する必要はない」など,指導者のブロックに対する認識は低い。5.ブロックの難しさを考えた場合,指導者は選手が初心者のときから長期的計画にもとづいて指導するべきである。
  • 福田 隆真
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 51-56
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    新しい教育課程が平成4年度から実施されている。それは従来までの教育課程とは質的に異なり,児童・生徒の主体的な学習態度を重視している。そして,創造力,表現力,思考力,自己教育力などを育成しようとしている。そのことは,我が国が国際社会において,経済的にも文化的にもリーダーとなった現在,教育に必要な資質であると考えられる。本稿では新しい教育課程と美術科教育の関連を述べるものである。そこで,新しい教育課程の出現の経緯,1980年代の社会の動向と教育観の変化を述べ,美術科教育の役割として,自己表現と客観性の認識,創造力の育成,表現技術の習得などを述べた。そして,そのことにより児童・生徒の主体的な学習態度を育み,今後の変化の激しい国際社会に対応できる人間形成の一助となることを述べた。
  • 高森 壽, 松山 容子
    原稿種別: 本文
    1995 年18 巻2 号 p. 57-66
    発行日: 1995/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    将来,教育者として活躍する学生が環境保全・省資源を視点に入れた家庭科の授業を行う資質を養成するために,熊本大学に在籍する学生の環境問題に対する関心度や日常生活における行動の実態を調査した。男女を問わず環境問題への関心度は高く日常生活における行動も,特に女子の場合,かなり好ましいものであった。その背景には,女子に家庭生活行動の頻度が高く,かつ,家庭科の学習体験が男子より多いことなどがあると推察され,男子に対する家庭での生活教育および家庭科教育の必要性が示唆された。行動相互の関連を分析した結果,行政による指導や金銭の損得の他に学校教育も被験者の行動に大きな影響を与えていることが明らかになった。
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