1970年代の初期の学習ストラテジ一研究(例えば,Rubin 1975)は,高いレベルの第2言語能力を有する,いわゆる「できる」学習者の用いるストラテジーの観察研究である。主な研究成果として,「できる」学習者は,正確な推測能力及びコミュニケーションに対する強い意欲を持ち,誤りを気にせず,あらゆる練習の機会を利用し,第2言語の形式・意味の両面に注意を傾けること等が明らかにされている。1980年代から今日に至るまでのより科学的なストラテジ一研究(例えば,O'Malley et al. 1985)の主な研究成果は,(1)「できる」学習者は,学習ストラテジーの使用頻度が高く,使用可能なストラテジーのレパートリーが広く,課題に対して適切なストラテジーを選択する,(2)女性は男性よりも使用する学習ストラテジーの範囲が広く,また,社会的ストラテジーの使用頻度も高い,(3)様々な要因(例えば,学習意欲,学習スタイル,文化的背景)が学習ストラテジーの選択に影響を及ぼす,の3点に要約される。また,学習者に対するストラテジー・トレーニング研究(例えば,Oxford et al. 1990)によれば,特定のストラテジーの有用性及びその使用方法,新しい状況や課題への適用方法を学習者に明示的に教えること,及び,通常の教室内での学習活動の中にトレーニングを融合することが最も効果的である。
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