日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
77 巻, 10 号
選択された号の論文の41件中1~41を表示しています
原著
  • 草野 智一, 村上 雅彦, 青木 武士, 野垣 航二, 松田 和広, 山田 宏輔, 古泉 友丈, 藤森 聡, 榎並 延太, 五藤 哲, 渡辺 ...
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2405-2410
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    近年,非B非C型肝細胞癌の増加が指摘されるも,臨床病理学的特徴が十分解明されていないことが現状である.
    今回われわれは,当院にて肝細胞癌の診断で肝切除が行われた96例を対象とし,N群:非B非C型肝細胞癌(34例),B群:B型肝炎ウイルス性肝細胞癌(14例),C群:C型肝炎ウイルス性肝細胞癌(48例)の3群に分け,患者背景,術前肝予備能,腫瘍マーカー,最大腫瘍径,腫瘍個数,術式,病理組織学的所見,長期予後について比較検討した.
    非B非C型肝細胞癌は,腫瘍径が大きく,切除範囲が大きくなる傾向がみられるも,肝機能が比較的良好であり,背景肝も繊維化が軽度なことから,積極的な切除が可能であることが示唆された.また,高分化型の割合が有意に高かった.一方,今回の検討では,無再発生存率・全生存率に有意差はみられなかった.
    本疾患の特徴を今後も解明するとともに,早期発見・早期治療の確立が急務であると思われた.
症例
  • 前沢 早紀, 小林 稔弘, 平松 昌子, 恒松 一郎, 石井 正嗣, 高野 義章
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2411-2416
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    乳腺葉状腫瘍は病理組織像から良性,境界病変,悪性に分類される.良性であっても局所再発,悪性転化をきたす.今回,腫瘍摘出術の2年後に悪性化再発をきたした葉状腫瘍の1例を経験したので報告する.
    症例は72歳,女性.左乳房CDE領域に2.0cm大の腫瘤を自覚し来院.針生検で線維腺腫と診断し,腫瘍摘出術を施行.病理診断は乳腺症であった.18カ月後,同部位に腫瘤を自覚,その後急速に増大し24カ月後に来院.左乳房全体を占める9.0cm大の腫瘤を触知し,乳頭陥凹も認めた.針生検で境界型の葉状腫瘍と診断し乳房切除術を施行した.病理診断は悪性葉状腫瘍であった.初回切除標本を再検討すると,辺縁に良性葉状腫瘍と思われる間質細胞の増生を極一部に認め,この葉状腫瘍が悪性転化したものと考えられた.わずかな良性葉状腫瘍から悪性転化した1例を経験したので報告する.
  • 青山 圭, 神尾 孝子, 岡本 高宏
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2417-2423
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    神経内分泌細胞への分化を伴う乳癌は比較的稀な腫瘍である.WHO 2003年分類ではepithelial tumorsの中でneuroendocrine tumorsに分類されている.今回われわれが経験した6例の乳腺神経内分泌細胞癌を報告する.
    年齢34歳~68歳(平均46.5歳),5症例は単孔性の血性乳頭分泌を主訴に来院した.超音波検査では乳管拡張や限局性の腫瘤像を認めたが,マンモグラフィ検査ではいずれも異常所見を認めなかった.乳頭分泌細胞診では良性の所見であった.2症例は超音波下針組織生検を行い,4症例は乳管腺葉区域切除の診断的治療を行い,病理組織学的検査ではH-E染色にて神経内分泌細胞癌が疑われた.免疫組織学的染色にてchromogranin Aおよびsynaptophysin染色が陽性であったことより,乳腺神経内分泌細胞癌との診断を得た.
  • 平田 真章, 白潟 義晴
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2424-2428
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.突然の背部痛を主訴に救急搬送された.胸腹部造影CT検査で,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery, 以下SMA)解離を伴うStanford A型急性大動脈解離と診断した.緊急上行大動脈置換術に加え,SMA本幹にステントを留置した.術後経過は良好であったが,経口摂取開始後11日目に小腸イレウスを発症した.保存的治療では困難と考え,発症後44日目に開腹手術を施行した.回腸末端から170cm口側小腸に完全閉塞を認め小腸切除を行った.組織学的所見を含め,狭窄型虚血性小腸炎と診断した.SMAに解離が及ぶ場合,急性期には腸管壊死を念頭に置かねばならないが,慢性期に腹部症状が出現した場合は本症を念頭に置く必要がある.
  • 沼田 るり子, 井上 堯文, 藤崎 正之, 末松 義弘
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2429-2432
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈終末部に生じた嚢状腹部大動脈瘤破裂に対しパッチ閉鎖術を施行し救命しえた症例を経験したため報告する.症例は85歳,女性.高血圧,糖尿病,脂質異常症,狭心症の既往あり.左側腹部痛と嘔吐を主訴に救急搬送され,出血性ショックを伴う大動脈終末分岐部嚢状瘤破裂(Fiztgerald分類III型)の診断で緊急手術を行った.破裂部位は嚢状瘤の瘤壁の一部であった.瘤への入口部は大動脈終末部の前壁に円形に欠損し,大動脈終末部の拡張はなく形状が保たれていた.大動脈終末部周囲は動脈硬化性変化や炎症による癒着が強く剥離操作による出血量増加,循環動態の維持困難が懸念され,救命を優先し人工血管置換術ではなく欠損孔のパッチ閉鎖術を選択した.パッチ閉鎖により出血はコントロールされ,術後も経過良好であった.しかし,パッチ閉鎖術の欠点として遠隔期の仮性瘤形成が指摘されており,今後もCTなどの画像検査による経過観察が必要である.
  • 平野 智康, 由利 康一
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2433-2437
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.2010年4月に47mmの腹部大動脈瘤と左総腸骨動脈瘤に対して他院にてステントグラフト内挿術が施行された.術中よりtype IIエンドリークを認めていた.当院にて年1回のフォローアップのCTが施行され,2013年7月に73mmと腹部大動脈瘤の拡大を認め,手術目的で当科に紹介となった.手術は腹部正中切開で到達し,type IIエンドリークの原因と考えられる太い腰動脈および下腸間膜動脈と左内腸骨動脈も瘤の外側から結紮した.ステントグラフトの中枢側と末梢側をテーピングしスネアした後に,腹部大動脈瘤および左総腸骨動脈瘤を切開した.腰動脈から瘤内へ出血があり縫合止血し,瘤を縫縮した.ステントグラフトの中枢側と末梢側をテーピングしスネアする方法は,術中操作によるステントグラフトのmigrationによる出血や潜在性type Iエンドリークに対処できる有用な方法であった.
  • 片岡 淳, 新田 敏勝, 川崎 浩資, 藤井 研介, 石橋 孝嗣
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2438-2445
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    近年,上腸間膜動脈(SMA)閉塞症に対しIVR奏効例を散見するが,血行再建による血流改善例でもsecond-look surgeryで腸管虚血を認めた報告もある.IVR成功例でも厳重な観察が必要と考え,腹腔鏡観察を行い,症例の蓄積を試みている.[症例1]44歳,女性.心窩部痛で搬送され,造影CT検査でSMAに血栓を確認した.IVRを施行し,再開通した.症状遷延にて翌日腹腔鏡観察し,腸管虚血無きことを確認した.[症例2]79歳,女性.心窩部痛で搬送.造影CT検査でSMAに血栓を確認した.IVRを施行し,再開通した.しかし,症状遷延にて翌日に腹腔鏡観察を行った.腸管虚血無きことを確認した.術前IVRを施行し,救命しえたSMA閉塞症を2例経験し,文献的考察を加え報告する.
  • 宮津 克幸, 高井 亮, 小林 孝一郎
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2446-2450
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.赤芽球癆にて当院血液内科通院中,胸部CTにおいて前縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となった.造影CTにて,前縦隔に4cm大の分葉状で内部に一部造影効果を伴う腫瘤陰影を認め,正岡分類I期の赤芽球癆合併胸腺腫を疑い,胸腔鏡下で腫瘍摘出術を施行した.病理診断ではWHO分類type ABの胸腺腫であった.術前には赤芽球癆の状態は不安定であり,免疫抑制剤による加療に加えて複数回の輸血で貧血に対応していたが,術後に貧血は改善され免疫抑制剤の投与量も減少した.また,胸腺腫の再発もなく良好な経過を得ている.胸腺腫には重症筋無力症,赤芽球癆など様々な自己免疫疾患の合併を認めることがある.今回,赤芽球癆を合併した胸腺腫症例に対し,胸腺腫摘出術を施行したところ,赤芽球癆の治療抵抗性の改善を認めたので報告した.
  • 佐藤 幸毅, 藤崎 成至, 望月 哲矢, 先本 秀人, 江藤 高陽
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2451-2456
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.42歳時に子宮筋腫に対し子宮全摘術を施行.健診で胸部異常陰影を指摘され,精査加療目的で当院に紹介受診となった.胸部CT検査で左肺S10に23mm大の結節影を認め,その他10mm以下の結節影を両肺に多数認めた.腫瘍マーカーはいずれも基準範囲内で,また,FDG-PETで異常集積を認めなかった.その後,左肺S10の結節影が30mm大と増大したために,診断目的で左肺S10の胸膜表面に存在する小結節に対して胸腔鏡下肺部分切除を施行した.良性転移性肺平滑筋腫の診断を得た後に,ホルモン療法を施行した.左肺S10の結節影は一時的に縮小したが,再度増大傾向を認めた.同腫瘍を原発とする悪性腫瘍を疑い,初診時より5年目に開胸肺部分切除を施行した.病理組織学的所見より,良性転移性肺平滑筋腫が悪性転化した可能性が考えられた.良性転移性肺平滑筋腫が悪性転化した報告例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 寺田 満雄, 幸 大輔, 中前 勝視, 佐藤 慎哉
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2457-2462
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.71歳時,交通事故を契機に偶然発見された左上葉肺癌(混合性腺癌,扁平上皮癌の同時性多発肺癌)に対して胸腔鏡補助下左上葉切除術を施行した.術後2年の経過観察CTで右上葉結節が出現し,画像所見から転移性肺腫瘍が疑われたが,第二原発性肺癌の可能性も否定できず,手術治療の適応があると判断した.病変は肺末梢の小病変であり,肺楔状切除術でも根治性を損なわずに残肺機能温存することが可能と考え,胸腔鏡補助下肺楔状切除術を施行した.術後病理結果にて,大細胞神経内分泌癌であることが判明した.
    異時性多発肺癌の診断は再発や肺転移よりも予後良好とされ,その可能性が否定できない限り積極的な手術が望まれる.しかし,術後はADL低下の可能性もあり,患者背景に十分留意し,手術適応やその術式を決定する必要がある.
  • 井伊 庸弘, 戸田 省吾
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2463-2468
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.CEA高値に対する精査目的のCTで左肺底部S10に結節影を指摘された.半年の経過観察で増大傾向を認めたため,悪性腫瘍を疑い胸腔鏡下に左肺下葉部分切除術を施行した.術後の病理組織検査では,淡明な胞体を持った異型細胞が索状・胞巣状に増生し,導管様構造は認めなかった.免疫組織染色では,34βE12,S-100,α-SMA,P-63に陽性であり,肺原発筋上皮癌と診断された.術後4年9カ月が経過したが,無再発生存中である.
  • 星野 大葵, 石田 久雄, 平野 正満
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2469-2473
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    Transmanubrial approachは前方浸潤型Pancoast肺癌に対する標準的な術式の一つとなっているが,合併症に対する報告は少ない.われわれは78歳,男性の右上葉原発の前方浸潤型Pancoast肺癌(扁平上皮癌)に対し,化学・放射線療法後にtransmanubrial approachにより腫瘍浸潤のある胸壁,腕頭静脈とともに右上葉切除術を行った.しかし術後に創感染,膿胸を発症したため再手術を行い,有茎広背筋弁による頸部,縦隔組織の被覆を行うことで良好な結果を得たので報告を行う.
  • 小林 理, 久米田 浩孝, 寺田 志洋, 柳谷 信之
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2474-2479
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.銅製製品のプレス作業中,誤作動で負荷が掛かり,製品との接触部にあたるプレス機側の超硬鋼材が破損し,複数の金属片が飛び散り受傷.近医で精査の結果,右胸腔内に金属濃度の異物が確認され,右血気胸に対して胸腔ドレーンを挿入後,当院に搬送された.右外傷性血気胸,右肺内異物,右肺挫傷(穿通傷)の診断にて緊急手術を施行.
    6.5cm長の右腋窩切開下に右第4肋間で開胸し,胸腔鏡補助下に手術を行った.多量の血腫を認め,最終的には右胸腔内血腫および血液を1,600g除去した.右鎖骨下第2肋間から右胸腔に穿通し,右肺上葉内を貫通した金属片を肺裂傷の出口にあたる部位で確認した.穿通傷を全て含む形を意図しながら右肺上葉の部分切除を行った.輸血なし.術後3日目に胸腔ドレーンを抜去し,特に合併症なく11日目に退院.
    破裂した金属片が胸壁から肺を穿通した稀な1例に対し,緊急手術を施行し良好な経過を経た.
  • 小林 敦夫, 上向 伸幸, 齋藤 健人, 渡邉 昌俊, 長堀 優
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2480-2487
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で心窩部痛を主訴に来院.胃体上部の腫瘤性病変,限局性腹膜炎と診断された.上部消化管内視鏡検査で噴門直下に粘膜下腫瘍様の3cm大の隆起を認め,粘膜面に変化を認めなかった.超音波内視鏡検査で第4層に連続した腫瘤を認め,腹部CT検査で多発肝転移を認めた.その内視鏡形態からgastrointestinal stromal tumor(GIST)を疑い,噴門側胃切除術を施行した.腫瘍は筋層から漿膜下に腫瘤を形成し,異型の強い細胞が浸潤増殖し分化傾向を認めなかった.免疫組織化学的にGISTを含めた間葉系腫瘍,悪性黒色種,悪性リンパ腫,胚細胞腫瘍は否定され,上皮系マーカーが陽性であった.他臓器からの転移は否定的で,詳細な除外診断を行った結果,胃未分化癌と診断した.粘膜面に病変の露出を認めない粘膜下腫瘍様の形態を呈した胃未分化癌の報告例はなく,極めて稀である.本邦報告例の検討を含め報告する.
  • 水井 崇浩, 臼田 昌広, 村上 和重, 井上 宰, 宮田 剛, 望月 泉, 小野 貞英
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2488-2493
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.2012年9月に心窩部不快感を主訴に近医を受診した.上部内視鏡検査にて噴門部から胃体部小彎側を中心とした2型病変を認め,生検の結果,扁平上皮癌と診断した.CTでは明らかな遠隔転移や他臓器癌からの転移を疑わせる所見は認めなかった.胃原発扁平上皮癌の診断にて同年10月に胃全摘(D2郭清,ρ-Roux-en Y再建),胆嚢摘出術を施行した.病理組織学的検査にて腺癌成分は認めず,腫瘍と食道重層扁平上皮との間に連続性を認めなかったことより,胃原発扁平上皮癌と最終診断(100×80mm,pT3(SS),int,INFb,ly1,v1,pN0,M0,pStage IIA)した.術後補助化学療法としてS-1療法を1年間施行した.術後3年6カ月が経過した現在も再発なく生存している.胃原発扁平上皮癌は極めて稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 室谷 研, 堤 裕史, 星野 弘毅, 橋本 直樹, 岩崎 茂
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2494-2498
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.アルコール性肝硬変の既往あり.上部消化管内視鏡検査で胃食道静脈瘤および胃角部に腫瘍を認め紹介.生検で低分化腺癌と診断し,EUSでSM浸潤があり手術の方針とした.CTではリンパ節転移を認めず,胃腎シャントを認めた.胃静脈瘤の破裂のリスクが高いため,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon occluded retrograde transvenous obliteration:BRTO)を先行して行った.胃静脈瘤の消失を確認後,幽門側胃切除を行った.病理組織診断はpT1b2,por2,int,INFB,ly3,v2,pN2,pPM0,pDM0,fStage IIAで現在まで癌および胃静脈瘤の再発を認めない.アルコール性肝硬変を有する胃静脈瘤併存胃癌症例に対し,BRTO後に幽門側胃切除術を施行した1例を経験したので報告する.
  • 栗原 唯生, 岸本 裕, 佐野 貴之, 浅沼 晃三, 市川 辰夫
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2499-2503
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は16歳の男性で,突然の激しい腹痛のため当院に救急搬送された.腹部CTで上行結腸内に重積した小腸を認め,回腸-結腸型腸重積症と診断した.ガストロ注腸による非観血的整復を試みたが困難であったため,緊急手術を施行した.Hutchinson法で重積を解除したところ,回盲弁から口側30cm付近の回腸に憩室様に突出する構造物を認めた.腸重積の原因と考えられたため同部を含めて小腸部分切除を行った.切除標本では小腸腸間膜側壁内に,粘膜を有する孤立した嚢胞性腫瘤を認めた.腫瘤は組織学的に正常小腸粘膜と固有筋層を有しており,小腸重複症と診断された.
    消化管重複症は小児の器質的疾患を有する腸重積症の主な原因の一つであるが,成人での報告は少ない.当院で経験した回腸重複腸管による腸重積症の1成人例を報告するとともに,成人の消化管重複症と腸重積症の本邦報告例の検討を行った.
  • 織田 福一郎, 佐藤 雄哉, 馬場 裕信, 杉本 斉, 星野 直明, 西岡 良薫
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2504-2508
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    61歳,女性.低血糖による意識障害を認め救急搬送された.腹部巨大腫瘤を触知し,腹部腫瘤によるnon-islet-cell tumor hypoglycemia (以下NICTH)と考え,ブドウ糖の持続投与を開始した.第3病日,低K血症による心室細動(以下VF)を発症し除細動で心拍再開した.その後も厳重な血糖および電解質管理を継続し,第20病日腫瘍摘出術を施行した.術後低血糖および低K血症は改善し,低下していた血中Cペプチドとインスリン値は正常化した.病理所見で紡錘形細胞がpatternlessに増殖する像を認め,免疫染色でCD34(+),bcl-2(+),SMA(-),c-kit(-)であり,孤立性線維性腫瘍と診断した.腸間膜原発孤立性線維性腫瘍によるNICTHの報告は散見されるが,急激な低K血症によりVFをきたした症例は初めてである.貴重な症例と考え,ここに報告する.
  • 大西 宙, 渡邉 純, 矢後 彰一, 諏訪 雄亮, 舛井 秀宣, 長堀 薫
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2509-2514
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.横行結腸laterally spreading tumor (LST)のendoscopic mucosal resection (EMR)後追加切除を目的とし,腹腔鏡下結腸部分切除術を施行した.術後7日目に下痢を認め,clostridium difficile(CD)毒素陽性であり,CD腸炎と診断し,保存的治療を開始した.CT検査で右側結腸の著明な浮腫と拡張を認め,中毒性巨大結腸と診断し,緊急手術を施行した.
    腹腔鏡下結腸右半切除術,回腸人工肛門・横行結腸粘液瘻造設術を施行した.結腸粘膜には広範に偽膜の形成を認めた.術後,粘液瘻からバンコマイシンの注腸投与を開始した.術後経過は良好であり,術後35日目にリハビリ目的に転院した.
    劇症型CD腸炎では早期の外科手術が推奨されるが,その予後は不良である.今回,集学的治療により救命しえた1例を経験したので報告する.
  • 福田 明子, 野中 隆, 永吉 茂樹, 徳永 隆幸, 谷口 堅
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2515-2518
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で,下腹部痛を主訴に近医を受診した.腹部CTでS状結腸に全周性壁肥厚と近傍の腸間膜内にfree airを認めたため,当院紹介となった.精査の結果,腸間膜穿通を伴うS状結腸癌と診断した.腹痛は限局し全身状態も良好であったため,待機的に腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.直腸右壁剥離の途中で2本の索状物を認め,内側の1本は腫瘤に巻き込まれていたため切離した.離断された断端を頭側へ追うと右尿管と考えていた索状物と並走しており重複尿管を疑った.術中膀胱鏡検査で右尿管開口部が2カ所確認され,造影にて切離した索状物は下腎杯由来の尿管と判断した.右下腹部傍腹直筋切開で開腹し,腫瘍摘出および尿路再建を行った.術後経過は良好で術後11日目に自宅退院し,本人の希望で術後補助化学療法は行わず,術後1年6カ月の現在,無再発生存中である.重複尿管は比較的頻度が高く,大腸手術時に念頭に置くべき尿路奇形である.
  • 田島 弘, 隈元 雄介, 西山 亮, 海津 貴史, 大部 誠, 渡邊 昌彦
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2519-2524
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性で,人間ドックの超音波検査で肝腫瘤を指摘され当院へ紹介受診となった.腹部造影CT検査で,肝S5に辺縁に造影効果を認める径12mm大の低吸収腫瘤像を認めた.非典型的な肝腫瘤のため経過観察としたが,半年後のCT検査で20mm大に増大した.EOB-MRI検査ではT1で低信号T2でやや高信号領域を示し,辺縁に造影効果を認めた.炎症性偽腫瘍などの良性腫瘍を第一に考えたが,増大傾向を示しており転移性肝腫瘍などの悪性疾患を完全に否定できず,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.病理検査により肝炎症性偽腫瘍と診断した.腫瘍内部に虫卵の存在を認め,原因と考えられた.本症例のように悪性を否定できない症例に対しては,診断を兼ねた腹腔鏡下手術は低侵襲で有効な選択枝であると考えられた.
  • 牧田 直樹, 高井 優輝, 山崎 圭介, 鎌田 徹, 神野 正博
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2525-2530
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.心窩部痛と腹痛を主訴に受診し,胆石性胆嚢炎の診断にて当科へ紹介された.総合的に判断し入院のうえ待機手術とした.手術は定型通り腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.術後69時間目よりドレーン挿入部周囲の発赤を認め,発赤は急激に臍周囲から右側腰背部にまで拡大した.術後72時間目にプレショック状態となり腹部CT検査を行うと,発赤部位に一致して皮下軟部組織濃度上昇と液体貯留を認めた.出血や感染を念頭に抗生剤投与や呼吸・循環管理等の治療を施すも,敗血症に合併したDICへと重症化し術後4日目に死亡した.発赤部皮下の滲出液培養検査からは後日Aeromonas hydrophilaが検出された.本菌により軟部組織感染を発症すると,重篤な経過を辿り致死率が高いことが報告されている.腹腔鏡下胆嚢摘出術後に急激な経過を辿ったAeromonas hydrophila感染の1例を経験したので報告する.
  • 佐藤 龍一郎, 林 洋毅, 元井 冬彦, 古川 徹, 海野 倫明
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2531-2537
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.62歳時,肝門部領域胆管癌に対し,左肝切除+尾状葉切除,肝外胆管切除術を施行した.術前ERCPでは膵・胆管合流異常は認めていない.腫瘍は肝門部領域に主座を置く2cm大の結節浸潤型の腫瘤で,組織学的には中分化型管状腺癌,切除断端は陰性,T2bN0M0 Stage IIであった.術後は無再発で経過していたが,6年後のCTで膵頭部に直径3cmの腫瘤を認めた.膵頭十二指腸切除術を施行.腫瘍は遠位膵内胆管に主座を置き,膵実質内に浸潤していた.膵後面リンパ節に転移を認め,遠位膵内胆管原発の粘液癌,T3N1M0 Stage IIBであった.免疫染色では,初回標本はSMAD4-,MUC1+/MUC2-/MUC5AC+,2回目はSMAD4+,MUC1+/MUC2+/MUC5AC-であった.初回手術から6年が経過し,両者の組織型が大きく異なることから,肝外胆管癌の異時性重複癌と診断した.
  • 小原井 朋成, 小川 尚洋, 藤井 圭, 成富 元, 河野 真司, 江口 徹
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2538-2541
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.60歳時,右乳癌に対し,FEC,タキサンによる術前化学療法を行った後,右乳房切除,腋窩郭清を施行した.病理診断はInvasive ductal carcinoma,ER(+),PgR(+),HER2(-),pStage IIIAであった.
    術後3年目,黄疸と肝障害を認め,腹部造影CTにて膵頭部に造影効果を有する腫瘤を認めた.画像上は原発性膵頭部癌と乳癌膵転移との鑑別が困難であった.膵頭十二指腸切除術後の病理所見はadenocarcinoma,ER(+)であり,原発巣と類似しており,乳癌の膵頭部転移と診断した.現在術後3年半を経過するが,化学療法中である.
    乳癌の再発・転移は集学的治療が基本であり,転移に対する外科的切除の有効性は不明である.しかしながら,手術によりQOLの改善が見込まれる場合は,外科的切除も検討すべきと思われた.
  • 井岡 笑子, 大坂 雅史, 奥川 郁, 中野 且敬, 秋岡 清一, 土屋 邦之
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2542-2546
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.45年前に子宮頸癌に対して子宮全摘術と術後放射線治療の既往がある.当院泌尿器科にて膀胱直腸膣瘻による腎盂腎炎と診断され,経皮的腎瘻造設術と抗菌薬投与が行われた.全身状態改善後も膣からの消化液排泄がみられ,会陰部潰瘍による著明な疼痛のため歩行困難であった.経口摂取再開とADL改善を目的とし当科紹介となった.上部消化管造影後CTで小腸膀胱瘻も認め,小腸膀胱直腸膣瘻と診断し開腹術を施行した.骨盤腔内に複数のループを伴う強固な腸管癒着と放射性腸炎を認め,癒着腸管の剥離は損傷の危険が高いと判断し,腸管内容が瘻孔部を通過しないよう小腸by-pass術および横行結腸双孔式人工肛門造設術を施行した.消化管膣瘻は比較的稀な疾患であるが,その中でも小腸膣瘻は報告が少ない.難治性であることが多く外科的な治療が選択されることが多い.本症例について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 下平 健太郎, 石橋 敏光, 青木 裕一, 笹原 正清, 濱島 丈
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2547-2551
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性.前日からの発熱が持続し当院を受診した.来院時は39.5度の発熱,下腹部の膨隆を認め,圧痛を伴う腫瘤を触知した.腹部CT検査では,骨盤腔内にガス,液体貯留,5cm大の棒状高吸収像を伴う嚢胞状腫瘤を認め,卵巣奇形腫によるS状結腸穿通が疑われた.全身状態を考慮し,緊急で局所麻酔での嚢胞内ドレナージ術を施行した.術中所見では嚢胞内容物は便汁だった.後日,全身麻酔での開腹手術を施行した.術中所見では,左卵巣の嚢胞性腫瘍とS状結腸が穿通し強固に癒着していた.左卵巣腫瘍摘出,S状結腸切除,人工肛門造設術を行った.病理組織学的には卵巣成熟嚢胞性奇形腫の診断で,悪性所見は認めなかった.卵巣腫瘍の消化管穿通は稀であるが,重篤な全身状態に進展する可能性があり,早急な診断と治療を行う必要があると考えられた.
  • 望月 理玄, 飯野 弥, 原 倫生, 柴 修吾, 須藤 誠, 大石 直輝, 近藤 哲夫
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2552-2557
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性,健康診断の腹部超音波検査で腹腔内腫瘤を指摘され,当院を受診した.造影CT・MRIで膀胱腹側に50mm大の腫瘤を認め,腹腔内あるいは腹膜外腔に位置する奇形腫が疑われた.悪性も否定できないため手術の方針とした.開腹手術にて骨盤内を検索したが,明らかな腫瘤は確認できなかった.しかし,術直後の腹部X線写真で左側腹部に移動した石灰化腫瘤を認めたため,直ちに再手術にて大きさ50mm大の腹腔内遊離体を摘出した.
    50mm大を超える腹腔内遊離体は稀であり,術前に診断がついたものは少ない.典型的な画像所見と移動が確認されれば診断は可能であり,症状を呈さなければ不要な手術を避けることが可能である.腹腔内腫瘤の鑑別として近年腹腔鏡の有用性が報告されてきているが,いずれにしても本疾患の存在を念頭に置くことが第一である.
  • 若林 大雅, 石田 隆, 小林 健二, 尾形 佳郎, 江本 桂, 篠崎 浩治
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2558-2563
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.血尿を主訴に受診し,左腎結石の再発を認めた.精査のCTで偶発的に左骨盤内腹膜外腔に4cm大の腫瘤を指摘された.悪性腫瘍も否定できないため,腹腔鏡下に手術を施行した.腫瘤は弾性硬で褐色被膜に覆われており,病理学的検査で慢性拡張型血腫(chronic expanding hematoma;以下,CEH)と診断された.CEHは,手術や外傷を契機に生じた血腫が自然吸収されずに緩徐に増大するものと定義される.自験例は,左骨盤内にCEHを発生し得る手術・外傷歴はなく,難治性左腎・尿管結石に対し複数回施行された体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が原因となった可能性が考えられた.今回われわれは,腹腔鏡下手術を施行した極めて稀なCEHの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 宗勝, 古田 一裕, 国府田 博之
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2564-2569
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.右下腹部の痛みと腫瘤を主訴に来院.受診2週間前に腹部の鈍的外傷と外傷後の血尿を自覚していた.腹部USとCT画像にて,右側下腹部後腹膜に18cm大の嚢胞性病変を認め,腫瘤による右尿管の圧排と屈曲,さらに右水腎症も合併していた.術前検査と経過から外傷後の仮性嚢胞を疑い,右水腎症も保存的には改善困難と判断し,腹腔鏡下に後腹膜嚢胞を全摘出した.病理組織学的検査でも,上皮性成分を認めず仮性嚢胞と診断した.腹部の鈍的外傷以外明らかな異常なく,経過・術前検査・術中所見・病理所見から最終的に外傷後の後腹膜仮性嚢胞と診断した.外傷後と考えられる後腹膜仮性嚢胞の報告は少なく,まれな症例と考え,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 横尾 貴史, 吉川 周作, 増田 勉, 内田 秀樹, 稲次 直樹, 宮沢 善夫
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2570-2576
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    平滑筋腫瘍の骨盤腔外の軟部発生例は稀であるとされ,良悪の鑑別も困難である.坐骨直腸窩に発生した平滑筋腫瘍を経験したので報告する.患者は60歳台,女性.6年前から自覚していた右臀部の腫脹が増強したため当科を受診.CTで右坐骨直腸窩を占拠する径8cmの嚢胞性腫瘤を認め,内部に充実性領域を認めた.MRIではT1WIで低信号,T2WIで高信号に描出され,周囲臓器との境界は保たれていた.後方アプローチで腫瘤を切除した.組織学的には平滑筋への分化が窺われる腫瘍細胞の交錯性増生を認め,中心部は壊死に陥っていた.Desmin陽性,CD34・c-kit・DOG1・S-100蛋白 陰性,Ki-67<5%であり,平滑筋腫と診断した.本病変は,その局在から発生臓器について議論の余地があり興味深い症例である.現時点では平滑筋腫の診断だが,文献的には再発後に平滑筋肉腫と診断が改められた症例も存在し,今後注意深い経過観察が必要である.
  • 武内 泰司郎, 松田 明敏, 信岡 祐, 湯淺 浩行, 谷川 寛自, 奥田 康之, 横井 一
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2577-2581
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.46歳時に胆嚢結石症に対し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた.受診前日の夕食後より心窩部痛が出現.翌日近医を受診,急性腹症の診断で当科へ紹介.腹部単純X線で横行結腸肝弯曲部より頭側に小腸ガス像がみられ,腹部CTでは肝の腹側に小腸の拡張を認め,その正中側でclosed loopを形成し,絞扼性腸閉塞と診断.肝円索がclosed loopに接して左背側に偏在しており,原因として肝鎌状間膜裂孔ヘルニアを疑い,緊急手術を施行.開腹すると,腹腔鏡下胆嚢摘出術時の上腹部正中トロッカー挿入瘢痕の直下で回腸末端より150cmの回腸が肝鎌状間膜を右側から左側へ貫通して絞扼され,壊死に陥っており,絞扼腸管40cmの小腸部分切除を施行した.本症例では原因として腹腔鏡下手術時のトロッカーによる肝鎌状間膜の損傷が強く示唆され,手術操作で鎌状間膜を穿通した場合には修復するか解放する必要があると考えられた.
  • 高原 善博, 小笠原 猛, 野村 悟, 宇野 秀彦, 川原 健治
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2582-2586
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は45歳の男性で,右下腹部痛を主訴に当院総合診療部を受診し,腸閉塞の診断となり緊急入院となった.既往歴として両側小児ヘルニアの手術歴があったが開腹歴はなく,身体所見で鼠径部に膨隆は認めなかった.イレウス管挿入により腸閉塞は改善し退院となるも,退院8日後に腸閉塞再発の診断にて緊急入院,精査加療目的に外科へ紹介となった.CT上,回腸末端部に絞扼を疑わせる所見を認めたが,全身状態良好のためイレウス管にて小腸減圧および腸閉塞改善させた後に,診断加療目的の腹腔鏡手術を施行した.腹腔鏡所見では全小腸に閉塞起点は認めず,右鼠径部に内膀胱上窩ヘルニアを認めたためにメッシュ補強による腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.術前内膀胱上ヘルニアは念頭になく,内ヘルニアの原因精査として腹腔鏡にて観察することが確実な診断および治療に結びついたと考えられた.
  • 浦野 尚美, 塚尾 祐貴子, 田守 登茂治, 三方 彰喜, 水谷 伸
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2587-2591
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.約2年前に左鼠径部の膨隆を自覚し,当院を受診.左鼠径ヘルニアと診断され,手術を勧められていたが放置していた.徐々に増大し来院.腹部CT検査では左鼠径ヘルニアを認め,腹腔内脂肪と膀胱の一部の脱出を疑う所見を認めた.膀胱脱出を伴った左鼠径ヘルニア(膀胱ヘルニア)の疑いにてTAPP(transabdominal preperitoneal repair)法による根治手術を施行した.膀胱がヘルニア嚢とともに脱出したタイプII-3の鼠径ヘルニアと診断した.経過は良好で,術後6日目に退院となった.
    膀胱ヘルニアにおいては,術中膀胱損傷を回避するために術前診断が重要であり,CT検査が有用と考えられる.今回われわれは,術前にCT検査にて診断し,TAPP法にて安全に修復しえた鼠径部の膀胱ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 山本 晃, 尾嶋 英紀, 野口 智史, 渡部 秀樹, 池田 哲也, 登内 仁
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2592-2597
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,男性.膀胱癌に対し膀胱全摘術,回腸導管造設術施行後である.術後1年が経過した頃から回腸導管周囲の膨隆および腹痛を自覚するようになり,症状出現から1年の経過で当科受診となった.CTにて回腸導管周囲の筋層の欠損を認め,回腸導管傍ストーマヘルニアと診断し,腹腔鏡下修復術を施行した.手術はカメラポートを含め3ポートで施行し,その修復はcomposite meshを用いたSugarbaker法を選択した.術後7日で軽快退院となり,その後seromaを認めたが改善し,以降2年以上再発を認めていない.回腸導管傍ストーマヘルニアに対し腹腔鏡下修復術を施行した症例を経験したため,その手技につき報告する.
  • 野々山 敬介, 北上 英彦, 藤幡 士郎, 安田 顕, 山本 稔, 田中 守嗣
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2598-2602
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.直腸癌に対する腹腔鏡下直腸切断術後に傍ストーマヘルニアを認め,keyhole法で腹腔鏡下修復術を施行した.そのヘルニア修復術から23カ月後にストーマ周囲の疼痛を主訴に当院を受診し,腹部CTで傍ストーマヘルニア嵌頓と診断した.用手的に整復できたため,待期的に腹腔鏡下修復術を施行した.前回のkeyholeメッシュと挙上結腸との間にヘルニア門を認め,前回のメッシュに重ねてParitexTM Parastomal meshを用いたSugarbaker法を追加し修復した.近年,傍ストーマヘルニアに対しても腹腔鏡下手術の報告が散見されるが,その再発症例に対する治療報告は少ない.
    今回われわれは,腹腔鏡下修復術後の再発傍ストーマヘルニアに対して腹腔鏡下に修復した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 外舘 幸敏, 本多 通孝, 鈴木 伸康, 高野 祥直, 阿部 幹, 佐久間 秀夫, 寺西 寧
    2016 年 77 巻 10 号 p. 2603-2608
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor(GIST)は稀に消化管外からの発生例が報告されているが,膀胱からの発生例は極めて稀である.今回,神経線維腫症1型に膀胱と小腸に夫々,径30cmと7.5cmのGISTを合併した1例を経験した.症例は58歳,男性.腹部膨満を主訴に受診した.CTで骨盤から腹腔内に内部に充実成分を有する径30cmの嚢胞性腫瘍を認め,PET-CTで充実成分に一致し異常集積を認めた.同時に,体幹部のカフェ・オ・レ斑と手背の神経鞘腫を認め,神経線維腫症1型と診断された.腹部膨満と進行性貧血を認め,外科切除を行った.下腹部の主腫瘍は膀胱と連続性を認め,膀胱壁の一部と合併切除し,また,空腸にも腫瘍を認め,切除した.病理組織学的に二つの腫瘍はc-kit陽性でありGISTと診断された.下腹部の主腫瘍は膀胱固有筋層から連続した腫瘍細胞の増殖を認め,膀胱由来と診断した.
国内外科研修報告
支部・集談会記事
編集後記
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