日本臨床免疫学会会誌
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18 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 盛岡 元一郎, 山中 祐治, 今 充
    1995 年 18 巻 5 号 p. 521-528
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    著者らは遊離有茎皮下埋没脾臓を移植経路とすることにより,非侵襲性に肝転移モデル(実験動物: BALB/cマウス,移植腫瘍: COLON-26)を作製する方法を考案し,手術侵襲の肝転移に及ぼす影響について検討したところ,以下の結果を得た.
    1. 20分間の開腹手術侵襲により,明らかに肝転移が促進した.また,その程度は腫瘍移植同日に手術侵襲を加えた群が最も強く,次いで移植後7日目侵襲群, 3日目侵襲群の順であった.
    2. NK活性を特異的に抑制するASGM 1を前投与することにより,手術侵襲と同様に肝転移を促進せしめることが可能であった.
    3. 手術侵襲およびASGM 1による肝転移の促進はOK-432の前投与によって抑制された.
    4. さらにOK-432の前投与により生存期間も有意に延長することから, OK-432による術前免疫賦活療法の有用性が示唆された.
  • II. 粘膜障害時の検索
    坂 洋一, 古川 裕夫, 大熊 稔
    1995 年 18 巻 5 号 p. 529-537
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    大腸粘膜における局所の免疫反応時のmucus release (粘液放出)について検討した.先に著者らは,経直腸的にBSA (bovine serum albumin)による免疫を繰り返した後,免疫対応または非対応抗原で経直腸的challengeを行った場合,ラットの正常大腸の免疫反応に際して,大腸goblet cellmucus (杯細胞粘液)の放出の増加はみられず,正常粘膜では小腸と大腸の局所的抗原抗体反応に差異があることを報告した.今回は,免疫前に経直腸的にホルマリン注入による粘膜障害を行い,腸管粘膜の破綻を来した場合の大腸の局所免疫反応に際して,粘液放出現象の動態について検討を行った.その結果,大腸の粘膜障害時には,大腸局所で抗原抗体反応に依存してmucus releaseの増加がみられ, mucosal barrierを破る機序さえ働けば,局所免疫反応によるmucus releaseが増加することが判明した.
  • 川野 豊, 吉沢 いづみ, 野間 剛
    1995 年 18 巻 5 号 p. 538-544
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    小児気管支喘息患児末梢血リンパ球をダニ(Dermatophagoides farinae; Df)抗原で刺激すると添加したDf抗原の濃度依存性にinterferon-γ (IFN-γ)産生能の低下が認められた.これに対してDf抗原に感作されていない健康児末梢血リンパ球をDf抗原で刺激してもIFN-γ産生能の有意な変化は認められなかった.健康者リンパ球にリコンビナントinterleukin-10 (IL-10)を添加するとIFN-γ産生能は有意に抑制された.さらに患児リンパ球のDf抗原刺激により低下したIFN-γ産生能は抗IL-10抗体処理にて有意に回復した.以上よりDf抗原刺激の際のIFN-γ産生に関してIL-10が調節因子の一つとして作用することが示唆された.
  • 明石 好弘, 大嶋 智, 竹内 昭彦, 久保田 孝雄, 清水 潤, 清水 栄一, 石田 亜希, 中林 巌, 西山 純一郎, 田沢 慶次, 吉 ...
    1995 年 18 巻 5 号 p. 545-551
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    腎生検を施行した全身性エリテマトーデス(SLE)患者38例につき,糸球体および間質の浸潤細胞を染色し,組織型,検査値との関係を検討した.糸球体の浸潤細胞は, T cellはほとんど認められず, macrophage/manocyteがわずかに見られるのみで,組織型,検査値および組織学的,臨床的パラメーターとの相関は認められなかった.間質では, minor glomerular abnormalityに比して, diffuse proliferative lupusnephritis (DPLN)のsuppressor/cytotoxic T cell, macrophage/monocyteと, mesangial LNのmacrophage/monocyteが有意な増加(p<0.05)を認めた.また,血清クレアチニン値と,間質のsuppressor/cytotoxic T cell, macrophage/monocyte (p<0.01), pan T cell, total leucocyte (p<0.05)が有意な正相関を,臨床的活動性とsuppressor/cytotoxic T cell (p<0.001), pan T cell, macrophage/monocyte (p<0.05)が有意な正相関関係を示した.以上の結果より, SLEの進展増悪に関して,間質のsuppressor/cytotoxic T cell, macrophage/monocyteが関与していることが示唆された.
  • 小澤 義典, 黒坂 大太郎, 橋本 信也
    1995 年 18 巻 5 号 p. 552-558
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    急速に進行した難治性間質性肺炎を合併した皮膚筋炎の1剖検例を報告する.症例は48歳,女性.顔面の浮腫性紅斑および筋力低下の精査加療目的にて入院となった.入院時血清CK値は正常であったが, GOT, LDH,ミオグロビンの上昇を認めた.筋電図では筋原性変化を示し,典型的な皮膚症状も認め皮膚筋炎と診断した.胸部X線上間質性肺炎の合併も確認された.プレドニゾロン60mg/日の投与を開始したところ皮膚症状は著明に改善したが,間質性肺炎の増悪を認め,二度にわたりパルス療法を施行した.しかし効果を認めず間質性肺炎は急速に進行し死亡した. CKは末期まで正常範囲で推移した.剖検では全身横紋筋線維の著しい変性壊死と崩壊を認めた.肺病変については,通常間質性肺炎とびまん性肺胞障害の所見の混在を認めた.また血管炎および線維素性胸膜炎も認めた.悪性腫瘍は認められなかった.
  • 西成田 真, 太田 修二, 上里 雅史, 岡 裕爾, 鴨志田 敏郎, 高橋 敦
    1995 年 18 巻 5 号 p. 559-565
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の女性. 1990年3月ごろより多関節痛の出没あり. 92年冬よりレイノー現象を認めた. 93年8月肝障害を指摘,また,嗄声を自覚するようになり精査目的で入院.白血球数3,900/mm3と減少. GOT 96IU/l, GPT 79IU/lと上昇.総蛋白は9.8g/dl, γ-グロブリンは39.5%, IgGは4,556mg/dlと上昇していた. HBs抗原は陰性, HCV抗体は陽性であったがHCV-RNAは陰性であった.抗核抗体は1,280倍(speckled),抗平滑筋抗体陽性.その他の自己抗体はすべて陰性であった.喉頭鏡所見では,両声帯膜様部中央部で黄白色で帯状の竹の節を思わせる病変が認められた.また,肝生検では自己免疫性肝炎を支持する所見であった. Prednisolone 30mg/日を投与したところ肝障害は軽快し,嗄声,喉頭鏡所見ともに改善した.本症例は,全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に最も近いUCTS (undifferentiated comective tissue syndromes)と考えられたが,自己免疫性肝炎に加え,喉頭病変を伴った点で貴重な症例と思われた.
  • 猪尾 昌之, 垂水 禧直, 越智 達正, 尾崎 光泰, 倉田 典之
    1995 年 18 巻 5 号 p. 566-572
    発行日: 1995/10/31
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【症例】39歳,女性.【主訴】腎障害精査【現病歴】平成4年10月全身倦怠感出現し近医受診.蛋白尿を認め某病院を受診.腎不全にて通院中,悪化のため平成5年11月6日本院紹介. 12月霧視が出現.眼科にて虹彩炎と診断.平成6年1月9日腎生検目的にて入院.【検査】尿蛋白(±),尿潜血(〓),胸部Xp:異常なし,貧血なし,肝機能異常なし. BUN 38.7mg/dl, Cr 3.2mg/dl, Ca 2.5mEq/l. ACE 17.6IU/l,リゾチーム49.5μg/ml.【腎生検結果】間質の肉芽性変化とラングハンス型巨細胞を認めた.【Gaシンチ】眼球,耳下腺,腎,大腿に集積が認められサルコイドーシス(サ症)と診断. PSL 40mg/dayの投与を開始し腎機能の改善傾向が認められた.【考察】サ症の腎疾患の合併頻度は必ずしも稀ではなく,サ症を診る際に腎臓の合併を考慮に入れることは重要であり,続発性腎疾患の鑑別にもサ症による腎症を十分に考慮すべきである.
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