日本臨床免疫学会会誌
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20 巻, 1 号
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  • 仮説の提唱とその後の展開
    竹原 和彦
    1997 年 20 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
  • 辻村 道将, 戸叶 嘉明, 高崎 芳成, 橋本 博史
    1997 年 20 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    44例の急性期の全身性エリテマトーデス(SLE)のIgGサブクラスを測定した.急性期SLE患者のIgGサブクラスは正常人に比し, IgG 1-4全てが有意に増加していたが,症例により特にIgG 1, IgG 2の比率に差異を認め,増加の度合が一様でないことが示された.病像および自己抗体との関連では腎症のある症例でIgG 1の比率が有意に高く,低補体血症のある症例でIgG 3が有意に高かった.これらの結果より特定のサブクラス,特に補体結合性の高いIgG 1, IgG 3が病態に関与している可能性が示唆された.
  • 吉田 美代子, 市川 幸延
    1997 年 20 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    私達はflow cytometry法でアポトーシス制御因子である細胞内bcl-2蛋白の末梢リンパ球での発現を定量的に測定し,検体採取後の経時的な変化を含めて,いくつかの基礎的な検討を行うとともに,活性化刺激に伴うbcl-2量の変化や,その変動がアポトーシスにおよぼす効果などについて検討を加えた.
    6時間以上4°Cで検体を保存した場合には,大部分のリンパ球サブセットのbcl-2の平均蛍光強度(MFI)が低下を示した.一方,検体採取後,直ちに細胞表面抗原を一次抗体で染色し, paraformaldehydeで固定操作を行った後に4°Cで検体を保存した場合には,細胞表面抗原や細胞内bcl-2のMFIのいずれにも変動をきたさないことを見いだした.
    末梢血単核球にCon-Aを添加培養した場合にはCD 4+, CD 8+, CD 19+, 特にFas+細胞サブセットの百分率と,それらのbcl-2のMFIは共に有意の高値を示した.
    末梢リンパ球にrIL-2 (100U/ml)を添加培養し, propidium iodideによる核染色を行ってアポトーシスをflow cytometryで測定するとともに,細胞内bcl-2の経時的変化を測定した. rIL-2非添加群とくらべて,添加群ではbcl-2のMFIの低下は有意に抑制され,同時にこれらリンパ球のアポトーシスが抑制される傾向を示した.
  • 鈴木 厚, 大曾根 康夫, 美田 誠二, 小花 光夫, 松岡 康夫, 入交 昭一郎
    1997 年 20 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    膠原病,感染症,悪性腫瘍など様々な疾患が不明熱の原因として知られているが,不明熱の中には最後まで診断が不明のままである症例を経験することはけっして希ではない.不明熱における診断不明例,つまり様々な検査をおこなっても最終診断がつかない症例は不明熱患者全体の7~35%を占めるとされ,過去30年の医学の進歩にも関わらず減少していない.今回,われわれは1991年9月より3年間に当院内科に入院した4596例を調査し,ステロイド剤が著効を示した診断不明の不明熱例について検討した.まず4596例の中でPetersdorfの不明熱の定義を満たした症例は25例(0.5%)であった.この25例の中には膠原病6例,感染症5例,悪性新生物2例,その他2例が含まれており,最終診断不明例は10例であった. 10例にはウイルス感染を思わせる自然寛解例が3例,原因不明のまま死亡した例が1例含まれており,残り6例が診断に難渋しながら平均30.8病日目にステロイド剤を投与し発熱の改善を認めた診断不明の不明熱例(steroid responsive undiagnosed fever of unknown origin: SR-FUO)であった. SR-FUOは高熱とともに重症感を認めること,著明な炎症所見を示し各種検査にても原病不明であること,成人発症スチル病やリウマチ性多発筋痛症など既知の疾患を示唆する所見がないこと,発症年齢が58歳から77歳(平均67歳)と高齢であること,抗生剤,抗結核剤,抗真菌剤の投与にて改善がみられないこと,臨床的に非ステロイド性消炎鎮痛剤が無効であること,薬剤によるものを否定し得た症例であること,ステロイド剤の投与により自他覚所見の著明な改善を認めること,ステロイド剤の減量,中止により再発を認めず比較的予後良好であること,などの特徴を有していた.不明熱の診断には医師の診断能力に差があること,安易なステロイド剤の投与は診断をさらに困難にしてしまうこと,感染症が原因である場合症状の悪化をきたすことなどよりステロイド剤の投与は慎重でなければいけない.しかし,不明熱の診断および治療に難渋する症例の中には,既知の疾患では説明のつかないステロイドが著効を呈する疾患群SR-FUOがあると考えられた.
  • 狩野 有作, 大谷 英樹, 小柴 健
    1997 年 20 巻 1 号 p. 30-43
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    血清α2 macroglobulin (α2M)濃度が約40mg/dl以下の著減を示す5症例が見い出され,それらは全て骨転移を伴う前立腺癌であり, DICの合併は認めなかった.
    臨床経過においてα2M値は,経尿導的前立腺切除術および抗男性ホルモン療法により基準範囲内に復し,臨床像に伴って変動した.また,前立腺特異抗原(PSA)および前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)値とほぼ逆相関の経日的変動を示した.これらより,血清α2M濃度は癌転移を伴う前立腺癌の病勢を反映し,血中α2Mの著減は癌転移の指標の1つとして有用であると考えられた.
    癌転移の存在にもかかわらずα2Mが約20mg/dl以下では, CRPおよびSAAは陰性ないしは異常高値を示さず,それらの変動にα2Mが関与することが示唆された.
    免疫組織学的検索では,前立腺癌組織にPSAおよびウロキナーゼ(u-PA)が多量に認められた.一方, PSAおよびu-PAなどのproteaseはα2Mとcomplexを形成した.したがって, α2M欠乏症は前立腺癌組織から血中へ多量に放出されるPSAおよびu-PAなどのproteaseとα2Mのcomplexの形成に伴う異化の亢進によると考えられた.
  • 戸田 佳孝, 竹村 清介, 森本 忠信, 小川 亮恵
    1997 年 20 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ(以下, RA)患者に対する経口II型コラーゲン(以下, C II)の効果をHLA-DRB 1*0405遺伝子を有する群(0405群)とそれを有しない群(非0405群)に分類して評価した. 38例のRA患者を1日32mgのC IIを含む鶏軟骨スープを3カ月間投与した群(C II群)と,プラセボスープを投与した群(placebo群)に分類した. 0405/C II群は11例, 0405/placebo群は11例,非0405/C II群は9例,非0405/placebo群は9例であった. C II群では, placebo群に比べて,有意に抗ヒトC II IgG抗体値が低下し(p<0.0001),抗ヒトC II IgA抗体値が有意に増加した(p=0.003).腫脹および疼痛関節数の変化は, 0405/C II群と0405/placebo群間(腫脹関節数p=0.03,疼痛p=0.03), 0405/C II群と非0405群/C II群間(腫脹p=0.006,疼痛p=0.01)に有意差があっため, HLA-DRB 1*0405遺伝子陽性の症例では経口C II療法が有効であると結論した.
  • 加納 顯一, 秋元 智博, 小林 茂人, 富田 倫代, 田村 直人, 川野 照長, 田中 光彦, 高崎 芳成, 橋本 博史
    1997 年 20 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性. Relapsing Polychonitis (RP)の診断後6年,気道軟骨炎のみが憎悪し,喉頭狭窄,気管・気管支の炎症を伴う変形と気管支の呼気時虚脱により呼吸不全を呈した.気管・気管支軟骨炎はhydrocortisoneおよびcyclophosphamideの投与が有効であった. RP発症当初には多発性関節炎,鼻や耳介の軟骨炎など強い炎症反応を示し, Type II collagenに対する抗体価が高値を示したが,今回,炎症反応も軽く,抗Type II collagen抗体価の上昇も示さず,呼吸不全の憎悪がみられた.呼吸不全の原因は肺実質にはなく喉頭炎による喉頭狭窄,気管・気管支軟骨炎による気管支虚脱にあり,気管支鏡などの検査所見は気管・気管支軟化症に合致した.今回,喉頭から気管支におよぶ軟骨炎をきたすRPおよびリウマチ性疾患・膠原病の呼吸器病変について文献的考察を加えた.
  • 諏訪 昭, 平形 道人, 浜 信昭, 石山 香恵, 天野 宏一, 田中 廣壽, 藤巻 純子, 三森 経世, 稲田 進一, 秋月 正史
    1997 年 20 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    62歳女性の皮膚筋炎で,経過中に回腸潰瘍穿孔,皮下硬結,皮下石灰化,皮膚潰瘍がみられ,病理組織検査で皮膚脂肪織炎を認めた症例を経験した.皮膚筋炎と診断し,ステロイド療法中に皮疹,筋症状の再燃とともに回腸穿孔を併発した.回腸摘出術後免疫抑制剤を併用し,筋炎の再燃,潰瘍の再発なく経過良好であった.約5年後,両腋下,左上腕,腹部,右大腿に紅斑,一部は潰瘍形成を伴った皮下硬結が出現した.同部のX線検査で皮下石灰化がみられ,病理組織検査で一部に膜嚢胞性構造を伴う脂肪織炎を証明した.
    本例の消化管穿孔,皮膚脂肪織炎は血管病変を基盤として発症した可能性が考えられた.血管病変は小児の皮膚筋炎においてはしばしばみられるが,成人においては稀であり,貴重な症例と考えられた.
  • 山本 訓代, 前島 悦子, 山田 陽一, 湯川 進, 前田 孝夫
    1997 年 20 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は26歳の女性.平成5年に2回の自然流産歴あり.産婦人科的異常はみられなかったが抗リン脂質抗体陽性を指摘され,海南市民病院内科受診となった.臨床症状,血液学的検査より, SLEは否定的であった.梅毒反応の生物学的偽陽性はみられず,ループスアンチコアグラント陰性,抗カルジオリピン抗体-IgGが陽性であった.自然流産歴と抗カルジオリピン抗体陽性より抗リン脂質抗体症候群が疑われた.平成5年10月5日,同院へ入院し, prednisolone (PSL)とaspirinの併用療法で抗リン脂質抗体は陰性化した.以後PSL 7.5 mg/日とaspirin 40 mg/日の内服を続け妊娠.平成7年4月より和歌山県立医科大学へ転院し, 8月に無事出産. 2回の流産後, PSLとaspirin併用療法を行い,母児ともに異常を認めず,安全に生児を得ることができ,抗リン脂質抗体陽性妊婦において本治療が有効であった.
  • 青木 昭子, 出口 治子, 瀬沼 昭子, 中村 満行, 長岡 章平, 羽尾 邦彦, 薄田 康広
    1997 年 20 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性.下痢,発熱,肝障害を主訴に当科に入院した. A型肝炎IgM抗体, HCV抗体, B型肝炎マーカーは陰性であった.便培養で病原菌は検出されなかった.第9病日の大腸内視鏡で直腸から左側結腸の粘膜は連続性びまん性に浮腫状で多発性のびらんと小潰瘍が認められた.大腸粘膜生検組織と第10病日の血液からPCR法でサイトメガロウイルス(CMV) DNAが検出された.血清CMV-IgG抗体が低力価, IgM抗体が高力価であった.抗ウイルス療法なしで症状は徐々に改善した.第24病日の大腸内視鏡は正常粘膜を呈し,入院1カ月後には無症状となった.臓器,骨髄移植後, AIDS, 悪性腫瘍患者などの免疫不全患者ではCMV腸炎は頻度が高く,死亡率も高いことから見逃されることは少ない.免疫機能正常の患者のCMV腸炎の報告は少ないが,基礎疾患のない成人女性においてself-limittingなCMV腸炎を経験した.免疫機能正常患者においても(亜)急性大腸炎の鑑別診断にCMV腸炎をあげる必要があると考えた.
  • 前川 勝英, 藤本 隆, 上村 史朗, 金内 雅夫, 土肥 和紘
    1997 年 20 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 1997/02/28
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    本症例は,肺高血圧症を合併した44歳女性の混合性結合組織病(MCTD)患者である.本例は,レイノー現象,手指の腫脹,および抗U1RNP抗体の陽性から, MCTDと診断された. MCTDと診断された1年後に,呼吸困難と浮腫が出現したために当科に入院した.本例は,右心カテーテル検査所見から,肺高血圧症による右心不全と診断された. prednoisolone 60mg/日とfurosemide 20mg/日が投与され,浮腫と右心不全症状は改善したが,肺高血圧症は持続した.肺動脈圧は, enarapril 10mg/日の併用によって徐々に低下し, 3カ月後には正常範囲内に改善した.肺高血圧症は, MCTDの予後を決定する主要な因子であるが,治療法がまだ確立されていない.本例は, angiotensin 1変換酵素阻害薬であるenaraprilがMCTDに合併した肺高血圧症に有効であったことが確認されたので, MCTDの合併症の治療を考えるのに貴重と考えられた.
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