今回我々は,難治性下痢と尿細管機能障害を合併した分類不能型免疫不全症(common variable immunodificiency, CVID)の31歳の女性例を経験した. 6歳時の麻疹罹患を契機に低γグロブリン血症を来たした.また, 7歳時にはループス様症候群を合併したが,ステロイド療法にて完全寛解した. 11歳時からのγグロブリン定期的補充療法後は長年にわたって状態は安定していたが, 29歳時より下痢が始まり,電解質異常,尿細管機能障害が著明となったので精査入院となった.入院後,絶食,高カロリー輸液療法にて下痢,尿細管障害は一過性に軽減したが,経口栄養開始により再び症状は悪化した.生検の結果は,消化管は非特異的炎症,腎臓は尿細管間質性腎炎の所見.腸粘膜固有層,腎間質ともにCD8優位のTリンパ球浸潤がみられたことから,免疫抑制および抗炎症作用を期待してステロイド療法を開始したところ,症状,検査所見は直ちに軽快した.本症例のように腸粘膜および腎にCD8優位Tリンパ球が浸潤し,難治性下痢と尿細管機能障害を合併したCVID症例は極めて稀と思われるので報告する.
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