日本臨床免疫学会会誌
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32 巻, 6 号
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総説
  • 船内 正憲, 岸本 和也, 木下 浩二
    2009 年 32 巻 6 号 p. 457-465
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      肺高血圧症(PH)の予後は極めて悪いが,膠原病性PH(CTD-PH)は特発性PHに比べて一層悪い.CTD-PHは肺動脈性PH単一ではなく,間質性肺炎,低酸素血症,慢性血栓塞栓症あるいは左心系病変による修飾を受け易い.近年,PHの診断法が進歩し,また,優れた血管拡張薬の開発によってPHの予後が改善したが,早期に診断が行われないと更なる改善は期待できない.これまで早期診断の試みがなされてきたが,肺拡散能(DLco)の低下は早期から出現する事が知られ,また,血清LDH値の上昇も比較的早期から出現する事を認めている.一方,安静時心エコー検査は非侵襲性であり,PHの存在を推測するのに優れているが,必ずしも早期に異常を把握できない事があり,肺動脈圧の閾値の設定によっては右心カテーテル検査と相関しない場合もある.最近,当科では運動負荷心エコー検査を行い,PHの予測に有用である可能性を認めている.以上,DLcoやLDHの異常が見られる場合,臨床所見とともに,血液検査(KL-6,NT-proBNP,D-ダイマー),生理学的検査(心エコー),画像検査(HRCT)を定期的に観察する事が重要と考えられた.
  • 小竹 茂, 八子 徹, 川本 学, 南家 由紀
    2009 年 32 巻 6 号 p. 466-471
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)患者滑膜組織はRANKL, TNF-α, IL-6, IL-17,そしてIFN-γのような骨吸収を制御しているサイトカインが認められる.これらのサイトカインの他に,滑膜組織に発現している新規分子が骨吸収において重要な役割を果たしているかもしれない.1996年から私たちは,ヒト破骨細胞分化を制御している新規タンパクを同定することを目的に,RA患者滑膜から,ゲル濾過クロマトグラフィー,逆相HPLCそして質量分析をもちいタンパクを精製,同定した.最終的に私たちはT-cell leukemia-translocation associated gene (TCTA, T細胞性白血病転座関連遺伝子)タンパク由来のペプチドがRANKLによるヒトの単球からの破骨細胞形成を抑制すること,およびヒト成熟破骨細胞の大型化と骨吸収活性を抑制すること,を見いだした.本稿では,TCTAタンパクに関するこれまでの報告を概説したのち,私たちのTCTAタンパク由来ペプチドに関するヒトおよびサルの破骨細胞分化およびヒト癌細胞への効果を解説する.
  • 西江 渉, 清水 宏
    2009 年 32 巻 6 号 p. 472-477
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      自己免疫性水疱症の中で患者数が最も多い疾患である水疱性類天疱瘡は,表皮基底膜ヘミデスモゾームに存在するXVII型コラーゲン(COL17)に対する自己抗体により発症する.疾患モデル動物は,病態機序解明と新規治療法開発等に有用であるが,水疱性類天疱瘡ではCOL17に存在する抗原エピトープのアミノ酸配列がヒトとマウス間で大きく異なるため,患者自己抗体を用いたモデル動物の作成は困難だった.近年,筆者らは遺伝子改変技術によってCOL17を“ヒト化”したマウスを作成し,“自己抗原のヒト化”という新しい研究手法を確立した.そして,患者の自己抗体を投与することで発症する水疱性類天疱瘡モデルを作成し,更に母マウスから移行した抗体により発症する新たなシステムも確立した.今後,新しい自己免疫疾患モデル動物作成を試みる上で非常に有用と思われる“自己抗原のヒト化”について,2つの新しいモデルマウスを用いて紹介したい.
  • 正木 康史, 梅原 久範
    2009 年 32 巻 6 号 p. 478-483
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      IgG4関連疾患は,2001年にHamanoらにより硬化性膵炎における高IgG4血症が報告されてから,全身の多彩な病変におけるIgG4の関与が報告され,全身性疾患であるとの観点から様々な呼称が提案されている.傷害される臓器は類似しているが,Sjögren症候群とIgG4関連Mikulicz病とは異なった疾患概念である.一方,IgG4関連Mikulicz病とKüttner腫瘍とは連続性の病態であり厳密な区別は困難である.本邦の自己免疫性膵炎は多くの症例がIgG4関連硬化性膵炎の病像を呈しており,欧米型のものとは区別して理解する必要がある.かつてCastleman病と診断され,ステロイド治療の反応性が良好であった症例は,IgG4関連のリンパ節症であった可能性も大きい.IgG4関連疾患の診断は,1) 高IgG4血症(135 mg/dl以上)と,2) 組織のIgG4陽性形質細胞浸潤(強拡大5視野でIgG4+/IgG+が50%以上)に基づくが,ステロイド治療の反応性や臨床経過の異なるCastleman病,Wegener肉芽腫,Sarcoidosis,悪性リンパ腫,がん,その他既知の疾患を除外鑑別する必要がある.今後,疾患概念の確立のために,より一層の症例の集積と解析,および病因に迫る研究が必要である.
  • 大村 浩一郎
    2009 年 32 巻 6 号 p. 484-491
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      近年,抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)によって関節リウマチ(RA)は2つのサブセットに分かれると報告されている.臨床的にACPA陽性RAのほうがACPA陰性RAよりも重症化しやすいだけでなく,遺伝的にもこれまで報告されてきた遺伝子の多く(PTPN22, TRAF1/C5, CTLA4など)がHLAを含めてACPA陽性RAとは関連するが,ACPA陰性RAとは関連しないことがわかってきた.またRAの発症に関連するとされたHLA-DRB1*04などは実はACPA産生に関わっているのであり,RA発症のprimaryなリスクファクターはHLAではなくACPAであることが示されてきている.そこで,ACPA陽性RAの発症機序は感受性HLAと感受性遺伝子をもつ患者が喫煙などの影響でシトルリン化蛋白が出現し,ACPAが産生され,抗体依存性に関節炎がおこるというひとつのシナリオができている.一方,ACPA陰性RAと関連する遺伝子の報告はまだ少なく,HLAにおいては白人でHLA-DRB1*03,日本人でHLA-DRB1*0901が,HLA以外ではIRF5, STAT4が報告されているにすぎない.今後,RAの病態を理解する上でACPA陽性RAと陰性RAを分けて検討する必要がある.
症例報告
  • 内藤 崇史, 山本 元久, 川上 賢太郎, 鈴木 知佐子, 苗代 康可, 山本 博幸, 高橋 裕樹, 篠村 恭久
    2009 年 32 巻 6 号 p. 492-498
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は23歳女性.2007年5月にループス腎炎と診断され,プレドニゾロン(PSL)30 mg/日の治療が開始された.PSL 20 mg/日に減量後,肺膿瘍を合併したため,2008年3月当科転院となり,抗生剤投与にて軽快した.ニューモシスチス肺炎予防のためST合剤投与を開始したが,その1週間後に高フェリチン血症を伴う発熱・肝機能障害・血小板減少傾向を認めた.血球貪食症候群への移行を懸念し,ステロイドパルス療法および後療法として,PSL 50 mg/日の投与を開始した.速やかに改善を認めたが,中止していたST合剤を再開したところ,同日に発熱,頭痛,顔面紅潮,血圧低下を呈した.抗生剤投与とともに,循環動態の維持治療を実施し3日後に回復を認めた.しかし1週間後にST合剤の再投与を試みたところ,同様の症状と意識障害を呈した.髄液検査から,無菌性髄膜炎と診断した.入院後の3回の発作はいずれもST合剤によるアレルギー反応であると判断した.ST合剤は,免疫抑制療法中の感染予防のため近年汎用されているが,稀に無菌性髄膜炎やアナフィラキシーを惹起することが報告されており,予防投与に際しては念頭に置くべきであると考えられた.
  • 澤田 仁, 木本 理, 鈴木 大介, 下山 久美子, 小川 法良
    2009 年 32 巻 6 号 p. 499-505
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      【目的】難治RAに対するLCAPの臨床的有用性を検討した.【対象および方法】対象は,1) DMARDsや生物学的製剤に治療抵抗性を示した,または2) 副作用及び合併症のため薬剤継続が困難であったRA13例(男性5例,女性8例,平均年齢60.8±11.4歳).LCAPは週1回(平均処理量4.58±1.00 L),計5回を1クールとし,その前後でDAS28(CRP)にて病勢を評価し,また有害事象について検討した.【結果】開始前のDAS28(CRP)は5.70±1.12,1クール終了後は4.57±1.19,終了時から約4週後では4.83±1.35であった.また,一過性の貧血は見られたが,4週後には改善しており,重篤な有害事象は見られなかった.【結論】LCAPは難治性のRAに対し有効な選択肢であることが示唆された.今後どのような症例に適用すべきか更なる検討が必要である.
  • 寶來 吉朗, 宮村 知也, 園本 格士朗, 中村 真隆, 高濱 宗一郎, 安藤 仁, 南 留美, 山本 政弘, 末松 栄一
    2009 年 32 巻 6 号 p. 506-510
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は62歳男性.2006年11月に急性の意識障害が出現し近医入院.頭部CT, MRIでは明らかな原因を認めず,血液検査でBUN 160 mg/dl, Cr 25 mg/dlと著明な腎機能障害を認めており,急性腎不全に伴う意識障害と診断された.持続的血液濾過透析を施行され全身状態は改善したが腎機能障害は持続し,同年12月より維持透析導入となった.MPO-ANCAは陰性であり,腎生検は皮髄境界不明瞭であった為実施されず,腎機能障害の原因は不明であった.2008年1月喀血出現.炎症反応の上昇,MPO-ANCA 408.0 EUを指摘され,また気管支鏡検査で肺胞出血を認め,顕微鏡的多発血管炎(MPA)と診断された.プレドニゾロン経口投与及びシクロフォスファミドパルス療法が開始された.以後臨床症状は著明に改善し,MPO-ANCAも陰性化した.本症例は腎病変が先行し,肺出血症状,MPO-ANCAの上昇を認めMPAと診断された稀な症例と考えられ,文献的考察を含めて報告する.
  • Yuki NANKE, Tsuyoshi KOBASHIGAWA, Toru YAGO, Naomi ICHIKAWA, Naoyuki K ...
    2009 年 32 巻 6 号 p. 511-514
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/31
    ジャーナル フリー
      We report a case of Chlamydia-associated arthritis in a 40-year-old man. The patient experienced four episodes of Chlamydia trachomatis urtethritis within a few years. During the present episode, polyarthritis developed a few days after Chlamydia trachomatis urethritis was noted. The patient was diagnosed as having Chlamydia-associated arthritis. Loxoprofen sodium and azithromycin were started. Antibiotics induced clinical improvement of urethritis, although arthritis persisted for 3 months. HLA-B27 was negative, but both HLA-B35 and B40 were positive. Thus, we speculate that positivity for both HLA-B35 and HLA-B40 contributed to the persistence of arthritis in this case. During the course, the levels of Th1, Th17 and regulatory T cells in the peripheral blood were increased on flowcytometry. Thus, we speculate that Th17 may play, at least in part, an important role of the pathogenesis in this case.
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