日本臨床免疫学会会誌
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34 巻, 1 号
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総説
  • 天野 浩文
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする全身性の自己免疫疾患では,IgGクラスの自己抗体の産生及び免疫複合体形成に伴う組織障害がその病態形成に重要である.IgG型Fcγレセプター(FcγR)は,IgGのFc部分を認識し,沈着する免疫複合体に対する免疫応答にとって重要な役割を担っている.さらにFcγRは,抗原と複合体を形成したIgGと結合したのち,活性型FcγRと抑制型FcγRであるFcγRIIBとがバランスを取りながら免疫応答を調節している.BXSBマウスで生じる末梢血での単球増加とともにSLE様の自己免疫疾患の発現は,これらの正と負のFcRに依存している.またヒトSLEにおいても,FcγRIIBの発現の低下がメモリーB細胞で報告され,さらに遺伝子多型とコピー数多型の関連についても多くの報告がある.今後はこれらの活性型や抑制型のFcγRをターゲットとした自己免疫疾患の新規治療の開発が望まれる.
  • 川田 暁
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      皮膚科領域のアレルギーの中に「光アレルギー」という概念がある.これは日光が関与するアレルギーで,内因性と外因性に分類される.内因性疾患として日光蕁麻疹,多形日光疹,慢性光線過敏性皮膚炎などが,外因性疾患として薬剤性光線過敏症,光接触皮膚炎などがある.特に薬剤性光線過敏症と光接触皮膚炎は,皮膚科医以外の医師も日常診療でしばしば遭遇する疾患である.したがってこれらの2つの疾患の概念・原因薬剤・臨床症状・治療と予防について理解しておく必要がある.薬剤性光線過敏症の原因薬剤としては,ニューキノロン系抗菌剤,ピロキシカムとそのプロドラッグであるアンピロキシカムが圧倒的に多い.最近塩酸チリソロール,シンバスタチン,ダカルバジンなどが増加傾向にある.光接触皮膚炎の原因薬剤としては,ケトプロフェン(ゲル剤,テープ剤,貼付剤)の頻度が増加傾向にある.
  • 鑑 慎司
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      IL-23は樹状細胞などの抗原提示細胞が産生する.そしてIL-23はTh17細胞への分化を誘導し,Th17細胞の増殖,維持に必要である.Th17細胞は好中球を遊走するケモカイン,抗菌ペプチド,および他の炎症性サイトカインの発現を増強する.IL-23とTh17細胞が正常に機能する状態では宿主はカンジダ,黄色ブドウ球菌,溶連菌等の微生物を駆除できるが,Th17細胞が欠損した状態では易感染性となる.その一方で乾癬等の自己免疫疾患ではTh17細胞が過剰な状態になっていることが報告されている.また,様々な検体を用いた解析で,乾癬患者は健常人よりもこれらの微生物感染が多いことも報告されており,乾癬発病におけるスーパー抗原の関与も示唆されている.IL-23やTh17細胞の機能を理解することは,宿主の微生物に対する防御反応と乾癬などの自己免疫疾患をみるうえで重要な洞察をもたらし,感染症や自己免疫疾患の効果的な治療法の開発へとつながることが期待される.
  • 斎藤 潤
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      炎症反応は生体防御において極めて重要な反応であるが,過剰な炎症性応答は組織障害を引き起こす.IL-1βは主要な炎症性サイトカインの一つであり,様々な疾患がIL-1βによって惹起されることが知られている.IL-1βは前駆型のproIL-1βがインフラマソーム(inflammasome)と呼ばれるタンパク複合体により活性型に変換され,細胞外へ分泌される.インフラマソームは刺激を認識するNOD-LRRs containing family (NLR)タンパクとアダプタータンパク及びカスパーゼ1から構成されており,刺激の種類に応じて様々なNLRタンパクがインフラマソームを構成することにより,個別の刺激に対応してIL-1βを産生することができる.
      インフラマソーム-IL-1β系の遺伝的な異常によって自己炎症性疾患と呼ばれる疾患群が発症することが知られている.代表的な疾患として,クリオピリン関連周期熱症候群,家族制地中海熱,IL-1受容体拮抗体欠損症,PAPA症候群などが知られている.本稿では,インフラマソーム及び,これの異常によって発症する疾患の最近の知見について概説する.
  • 海田 賢一, 楠 進
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      ガングリオシドはシアル酸をもつ神経系に豊富なスフィンゴ糖脂質であり,細胞膜上でクラスターを形成しマイクロドメインを構成している.ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome, GBS)において抗ガングリオシド抗体は発症および神経症状を規定する因子として作用している.GM1, GD1a, GalNAc-GD1aに対する抗体は純粋運動GBSに相関し軸索障害優位の電気生理所見を示す.抗GM1抗体はRanvier絞輪軸索膜上でNaチャンネルクラスターを補体介在性に障害し,抗GD1a抗体,抗GQ1b抗体は補体介在性に運動神経遠位および終末部軸索を障害することが実験的に示されている.古典的経路優位の補体活性化が推測され,これらの障害は補体活性化阻害剤で抑制される.一部の抗ガングリオシド抗体は補体非介在性にCaチャンネル機能障害をきたす.近年2種の異なるガングリオシドからなるガングリオシド複合体(GSC)に対する抗体がGBSの一部に見いだされ,抗GD1a/GD1b抗体陽性GBSは重症度の高さと相関している.またGQ1bやGT1aに対する抗体が90%以上に認められるフィッシャー症候群でも,約半数ではGQ1bまたはGT1aを含むGSCにより特異性の高い抗体が陽性である.抗ガングリオシド抗体の標的部位への到達性,結合活性は標的部位の糖脂質環境が影響し,同抗体の病的作用の発現を規定する可能性がある.本稿では抗ガングリオシド抗体,抗GSC抗体の病的作用について最新の知見を概説した.
  • 梶山 浩
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      ポドサイト(腎糸球体臓側上皮細胞)は,一次突起,足突起(二次突起),足突起間のスリット膜からなる高次構造を保ち,血中からの高分子蛋白漏出を防ぐ分子篩として機能する.ポドサイト高次構造異常は,病的蛋白尿の原因となり,糸球体係蹄壁からの脱落や細胞死によるポドサイト数の低下は,不可逆的腎機能低下の原因となる.自己免疫性疾患に併発する腎症には,ループス腎炎,顕微鏡的多発血管炎に伴う毛細血管炎(半月体形成性腎炎,腎間質毛細血管炎),シェーグレン症候群の間質性腎炎,IgG4関連間質性腎炎,AA腎アミロイドーシス,強皮症腎等があり,各々,不可逆的な腎機能低下を来すが,ポドサイト障害の関与については不明な点が多い.
      近年,培養ポドサイト細胞株,ポドサイト特異的遺伝子発現制御トランスジェニックマウス,ポドサイト関連バイオマーカー,新糸球体分離法,laser capture microdissection法,multiphoton imaging, extracellular flux analyzerの登場により,ポドサイト障害機序の解析手法が飛躍的に進歩した.これらの手法により,今後,原発性腎炎におけるポドサイト障害は固より,リウマチ性疾患に於けるポドサイト障害も明らかになり,腎糸球体障害分子機序,ポドサイト障害分子機序の新知見が期待される.
症例報告
  • Yuki NANKE, Naoko ISHIGURO, Toru YAGO, Tsuyoshi KOBASHIGAWA, Michiko K ...
    原稿種別: Case report
    2011 年 34 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      Weber-Christian disease (WCD) is a syndrome characterized by recurrent subcutaneous nodules, fever, occasional lipoatrophy, fatigue, arthralgia, and myalgia. We report a case of WCD associated with rheumatoid arthritis. A 65-year-old woman consulted our outpatient clinic because of bilateral hand swelling. The patient had presented with fever and subcutaneous nodules in her trunk and upper and lower extremities in 1983. At that time, the dermatology department diagnosed this patient as having WCD after biopsy of the nodules demonstrated lobular panniculitis. She has been treated with corticosteroid (5-15 mg/day) since then. The patient continued to have recurrent episodes of transient inflammatory arthritis in the small joints of the fingers and fever, and was initially assessed at our institution in October 2007. Finally, in November 2007, she was diagnosed as having both WCD and rheumatoid arthritis (RA) and treated with corticosteroid (5 mg/day) and methotrexate (MTX) (7.5 mg/week). Thereafter, her clinical symptoms gradually improved. This is the second case of WCD showing the subsequent development of RA, successfully treated with MTX, in the English literature. This case may provide clinical insight into WCD and RA.
  • 東 直人, 西岡 亜紀, 飯塚 政弘, 松井 聖, 藤田 計行, 日野 拓耶, 岡部 みか, 森本 麻衣, 関口 昌弘, 北野 将康, 橋本 ...
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 34 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
      57才,女性.2000年より近医で関節リウマチに対して各種抗リウマチ薬で加療を受けていたが,症状持続.併存する間質性肺炎(IP)の増悪のため2009年5月当科入院.入院時,手指腫脹,手指から前腕,顔面,前胸部の皮膚硬化,レイノー現象,指尖部潰瘍,舌小帯短縮,食道拡張などを認め,アメリカリウマチ学会分類予備基準(1980年)に基づき全身性強皮症(SSc)と診断.ステロイドパルス療法でIPは改善したが,腹満感,嘔気が出現.腹部CTで小腸・大腸の著しい拡張,腸管壁内空気と腹腔内free airを認め,SScに伴う偽性腸閉塞,腸壁嚢状気腫症およびpneumoperitoneumと診断.絶飲食,イレウス管挿入による減圧で改善し,各種消化管機能調整薬とエリスロマイシン(EM)を開始したが,経口摂食再開後再燃した.EMを中止し,メトロニダゾールを開始したところ4日目には腹部X線写真上腸管ガスの減少を認め,腹部症状も改善した.その後も再燃徴候は認めていない.メトロニダゾールの嫌気性菌抑制効果は知られているが,SScに伴う偽性腸閉塞に対して著効したという報告はほとんどされていない.メトロニダゾールは根本的治療法ではないが,有用な治療法の一つと考えられた.
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