Bacto-phytohemagglutinin P (PHA-P)は,すくなくとも, 5種類の生物学的活性,すなわち,赤血球凝集活性(hemagglutinating activity, HA),白血球凝集活性(leukoagglutinating activity, LA),沈降活性(precipitating activity, PA),リンパ球幼若化活性(mitogenic activity, MA)ならびに細胞障害活性(cytotoxic actity, CA)を保有している.現在までに,これらの活性の相互の関係については,文献上矛盾したものが多い.本研究では,市販のPHA-Pを種々のイオン交換樹脂によるクロマトグラフィーで分画し,さらに熱処理,還元アルキル化,ニワトリ血球による吸収操作などを加えて,これらの活性の相互関係と, mitogen induced cell-mediated cytotoxicity (MICC)活性の推移に及ぼす影響を観察した.
今回の結果から, PHAの示すMICC活性は,他の活性を示す因子と異なり,独持の性格,すなわち, 95°Cの加熱にも耐えうる強い耐熱性を有することが明らかとなった.さらに白血球凝集活性(LA)は, LAを完全に除くと, MICCが大なり小なり減少することから一部MICCに関与している可能性が考えられた.また, MICCあるいはリンパ球幼若化活性(MA)はたんにPHA-P分子の同一部分あるいはsubunitが別々の機能を発揮するものを表現しているのにすぎない可能性も,今回の成績では考えられた.このことは,短時間で測定するMICCでは, MAが十分発揮されず,十分なincubation時間をとると, MICCに加えて,同一の因子が,リンパ球の刺激効果を発揮する可能性も考えられ,この2つの活性は,実際には変動はするが,相互に平行関係にあった.
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