日本口腔腫瘍学会誌
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33 巻, 2 号
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原著
  • 山村 佳子, 真野 隆充, 鎌田 久美子, 横田 美保, 福田 直志, 髙丸 菜都美, 工藤 景子, 栗尾 奈愛, 宮本 洋二
    2021 年 33 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    2008年から2018年までの11年間に当科で口腔領域に発症した悪性リンパ腫の18例について臨床的特徴を調べた。患者は,平均年齢が70.2歳の男性10例,女性8例であった。原発部位の10例(55.6%)は上顎歯肉で,初期症状は15例(83.3%)で腫瘤と腫脹であった。7例(38.9%)が初診時に臨床的に悪性リンパ腫と診断されたが,その他の11例は正しく診断することが困難であった。腫瘤形成や潰瘍のような様々な臨床症状が診断を困難にしており,1回の生検では確定診断が得られなかった。そこで,血液検査値が診断の指標であるかどうかを検討した。われわれの結果は,17例中8例のLDH(47.1%)と16例中11例のsIL-2R(68.8%)が高い値を示していた。さらに,われわれはリンパ球/単球数比(LMR)が診断に役立つかどうかを調べた。LMRの値は,17例中13例(76.5%)が有意に低く,非ML患者と比較しても有意差を認めた。以上のことより,LMRの血液検査も診断の補助的なマーカーであると考えられた。
症例報告
  • 西口 雄祐, 宮嵜 亮, 髙橋 望, 木本 奈津子, 木本 栄司, 中井 康博, 山﨑 悠馬, 森田 展雄, 大亦 哲司
    2021 年 33 巻 2 号 p. 41-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    紡錘形細胞脂肪腫は脂肪腫の一型であり,成熟した脂肪組織に紡錘形細胞の混在,および膠原線維の増殖を伴うのが特徴である。紡錘形細胞脂肪腫の口腔領域での発生は比較的稀である。われわれは69歳女性の口底に発生した紡錘形細胞脂肪腫の1例を経験したので報告する。患者は口底の腫脹の精査依頼で当科を紹介来院した。T1,T2強調像にて舌下隙に30×25×27mmの境界明瞭な高信号を示す腫瘤を認めた。全身麻酔下に口底腫瘍摘出術を行ったところ,摘出物の病理組織学的診断は紡錘形細胞脂肪腫であった。術後3年が経過するが再発は認めていない。
  • 加藤 晃一郎, 堀江 彰久, 大橋 祥浩, 増田 千恵子, 岸 悠太, 熊谷 賢一, 濱田 良樹
    2021 年 33 巻 2 号 p. 47-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    ニボルマブを含む集学的治療が著効した右側下顎歯肉扁平上皮癌を経験したので,その臨床経過の概要を報告する。患者は86歳の男性で,初診時に右側下顎に90×30mm大の弾性硬の疼痛を伴う腫瘤と下唇の知覚異常を認めた。生検によって扁平上皮癌の病理組織学的診断が得られ,化学療法としてセツキシマブとパクリタキセルの併用療法を行った。化学療法によって腫瘍は縮小したが,患者が救済手術を拒否したため,セツキシマブの単独療法を行った。残念ながら,セツキシマブの治療効果はみられず,セツキシマブとパクリタキセルの併用療法を再度行ったが,腫瘍の増大を制御できなかった。そこで,30Gyの緩和的放射線療法に続いてニボルマブ投与を開始した。しかしながら,ニボルマブを3回投与した後に肺野の一部に間質性変化が認められ,間質性肺炎の発症リスクが高くニボルマブの継続投与を断念した。ところが,ニボルマブ中止後4か月で下顎骨腫瘍の完全奏効が得られた。現在,完全奏効を得てから1年8か月が経過しているが,腫瘍の再燃はみられていない。
  • 石戸 克尚, 針谷 靖史, 石坂 理紗, 沖田 美千子, 原田 雅史, 中山 英二
    2021 年 33 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    エプーリスは慢性的な刺激や炎症によって歯肉に発生する反応性の増殖物である。右側上顎歯肉部に発生した巨大なエプーリスの1例を経験したので報告する。患者は42歳男性で,右側上顎歯肉の腫脹を主訴に当科を受診した。当科受診の約4か月前より右側上顎歯肉部の腫瘤を自覚した。その後数回にわたり腫瘤からの出血を認めたため近医にて止血処置を受けていた。口腔内所見では右側上顎に境界明瞭な弾性やや硬の,有茎性の腫瘤を認めた。CT所見では内部に骨様のX線不透過像を有し,右側上顎歯肉から増生する腫瘤を認めた。全身麻酔下に腫瘍切除術を施行した。摘出標本は70×50×28mm大であった。病理組織学的診断は骨形成性エプーリスであった。術後3年3か月を経過した現在,再発の兆候はなく経過は良好である。
  • 森 啓輔, 岩本 脩平, 蒲原 麻菜, 合島 怜央奈, 檀上 敦, 山下 佳雄
    2021 年 33 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    悪性黒色腫はメラノサイトに由来する悪性腫瘍で主に皮膚に発生し,口腔に発生する粘膜悪性黒色腫はまれで悪性黒色腫の約0.5%とされている。また,粘膜悪性黒色腫の2%程度にメラニン色素を欠乏した無色素性悪性黒色腫が存在するとされている。今回,われわれは上顎歯肉に生じた無色素性悪性黒色腫患者の治療を経験したので報告する。
    症例は64歳女性,右側上顎歯肉腫瘤性病変の精査目的に2018年2月に当科を紹介受診した。右側上顎歯肉から口蓋に及ぶ60×45mmの腫瘤性病変を認め,組織生検を施行し,無色素性悪性黒色腫と診断した。術前スクリーニングにてcT4aN0M0であり,右側上顎部分切除術を施行した。リンパ管および静脈浸潤を認めたため術後補助療法を計画したが,患者の経済的な理由にて同意を得られず施行できなかった。術後1年で小腸に転移し,その半年後に逝去された。
  • 森口 智史, 喜久田 翔伍, 轟 圭太, 篠﨑 勝美, 中村 守厳, 楠川 仁悟
    2021 年 33 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,慢性甲状腺炎に伴う甲状腺肥大が頸部から縦隔内まで至った舌扁平上皮癌両側頸部リンパ節転移の1例を経験したのでその概要を報告する。症例;54歳,女性。現病歴;2017年11月中旬頃より右側舌縁部に違和感と腫瘤の形成を認めていたため,2018年1月に当センターを紹介により受診した。現症;右側舌縁部に硬結を伴う潰瘍および腫瘤形成を認め,両側顎下に大豆大のリンパ節を触知した。既往;精神発達遅滞,慢性甲状腺炎。画像所見;CTにて外舌筋や口腔底に浸潤なく,両側頸部に転移を疑うリンパ節を認めた。甲状腺は中咽頭から縦隔まで大きく腫大しており,気管は左方に圧排されていた。舌エコー検査にてDOI:7.8mmであった。処置および経過;右舌扁平上皮癌T2N2cM0の診断にて,右側舌部分切除および両側頸部郭清術を施行した。腫大した甲状腺を認めたため,気管切開は困難であった。気道管理のため術後5日間,抜管せず鎮静および人工呼吸管理とした。術後,両側頸部および舌に対して放射線治療を61Gy施行した。術後2年10か月経過した現在,再発は認めていない。
  • 篠﨑 勝美, 喜久田 翔伍, 轟 圭太, 安陪 由思, 関 直子, 楠川 仁悟
    2021 年 33 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    PD-1免疫チェックポイント阻害薬(以下ICIs)は,再発・転移頭頸部扁平上皮癌(以下R/M-SCCHN)に対し有効性が示されている。一方,これらの阻害剤が奏功しない患者も存在しており,ICIs後の救済化学療法の有効性が示されているが,それに続く薬物療法の選択についてはほとんど報告されていない。
    今回,われわれは,再発口腔癌に対してニボルマブと化学療法薬を複数回,交互に使用し,著明な効果を認めた症例を経験したので報告する。症例;76歳,女性。再発口腔癌に対しEXTREMEレジメン(セツキシマブ,5-FU,シスプラチン併用療法)を施行していた。臨床的に病変進行を認めたため,二次治療としてニボルマブを使用した。ニボルマブ使用後,腫瘍増大を認め,三次治療の救済化学療法としてWeeklyパクリタキセル療法を行った。その後もニボルマブと化学療法薬を複数回,交互に使用することにより部分奏効を得た。再発口腔癌に対する化学療法開始から33か月後,舌に新規病変の出現を認めたため,患者の希望もあり,緩和ケア療法へ移行した。その1か月後,患者は再発口腔癌の病状進行によって死亡した。
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