目的:胎児期水頭症の確実な出生前診断やカウンセリングのために必要なことを明らかにする.方法:1992〜2010年5月までに当科で治療を行った胎児期水頭症117例について長期予後を分析した.結果:疾患の内訳は,広義のisolated ventriculomegaly(IVM)は38%,他の先天性疾患に合併するもの51%,胎児期続発性水頭症11%であった.診断時期は17〜40週(平均27週)で,22週未満が17%,22〜28週未満が30%,28週以降は53%であった.2歳以降の予後は,死亡15%,重度の発達遅滞が23%,中等度発達遅滞17%,軽度発達遅滞が26%で,後遺症なく健康は19%であった.予後には基礎疾患が最も影響を与え,クモ膜嚢胞,脳梁欠損,モンロー孔閉塞症,胎児期頭蓋内出血に伴う水頭症は予後良好群で,予後不良群は,全前脳胞症,脳瘤,各種症候群,胎内感染に伴う水頭症であった.診断の時期は予後に影響を与えなかった.結論:胎児超音波エコー検査,胎児MRI検査などによる基礎疾患や合併症の検索に加え,感染症検査,染色体検査や,時には遺伝子解析などを含めた,胎児期水頭症のさらに綿密な診断と治療プロトコールの確立が望まれる.
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