脳神経外科ジャーナル
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26 巻, 6 号
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特集 良性脳腫瘍
  • 吉本 幸司, 迎 伸孝, 空閑 太亮, 飯原 弘二
    2017 年 26 巻 6 号 p. 404-411
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     下垂体腺腫, 頭蓋咽頭腫, 鞍結節部髄膜腫に対する経鼻内視鏡手術の適応と限界について概説した. 下垂体腺腫に関しては, 巨大腫瘍の場合に顕微鏡手術と比べて内視鏡手術の有用性が高い. 頭蓋咽頭腫に対しても視神経の下方に局在する症例を中心に経鼻内視鏡手術の適応が拡大しているが, 第三脳室内腫瘍に対しての経鼻内視鏡手術はまだ完全には確立されていない. 鞍結節部髄膜腫に対する経鼻内視鏡手術は, 正中部に位置する比較的小さめの腫瘍が適応になると考えられる. 一方で著明な鞍上部進展, 側方進展, 血管構造のencasementなどが認められる腫瘍に対しての経鼻内視鏡手術は合併症のリスクが大きく, 適応は慎重に判断するべきである.

  • 鰐渕 昌彦
    2017 年 26 巻 6 号 p. 412-418
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     傍鞍部髄膜腫は大きく2つ, 前床突起部髄膜腫と鞍結節部髄膜腫に分けられる. 両者とも視機能障害で発症することが多く, 治療としては主に開頭術が選択される. 前床突起部髄膜腫に対しては, 前床突起削除とtranssylvian approachを基本とした開頭術が選択され, 海綿静脈洞進展の有無が摘出率に大きく影響を及ぼす. 術前の視機能障害は54~92%にみられ, 手術後の視機能改善は23.3~40%, 高いものでは63~85%と報告されている. 鞍結節部髄膜腫に対する開頭術ではanterior interhemispheric approachまたはtranssylvianまたはsubfrontal approachが選択され, 90.3~96%の症例でgross total resectionされている. 81~100%の症例で視機能障害が認められ, 術後の視機能改善例は51~70%となっている. 視機能を悪化させないためには, 視神経の栄養血管を温存することが重要であり, 傍鞍部髄膜腫は最大限の摘出と視機能の温存を両立させるように詳細に手術計画を立てる必要がある.

  • 長谷川 光広
    2017 年 26 巻 6 号 p. 419-429
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     眼窩内腫瘍はまれな疾患でありながら, 多種多様な病理学的特徴を含み, 病変の性質により治療方針は大きく異なる. 炎症性疾患やリンパ増殖性疾患 (特に最近注目されるIgG4関連疾患, MALTリンパ腫など) の鑑別と悪性度判定に生検は必須であり, その他の腫瘍性疾患には腫瘍摘出のみならず眼窩内容廓清術に至るまで多岐にわたる手術法がある. 経眼窩的, 経頭蓋的アプローチに加えて, 近年, 進歩の目覚ましい神経内視鏡下手術や頭蓋底手術を含めた各手術法の利点, 欠点を十分理解することが重要である. 全摘出を目指すべき疾患には, 病理学的には血管病変 (血管腫, 静脈瘤など), 良性 (髄膜腫, 神経鞘腫など) ならびに悪性腫瘍 (癌腫, 肉腫, 転移など) が挙げられる. また, 頭蓋内から眼窩に伸展するもの, 副鼻腔・鼻腔, 側頭窩, 下窩などから眼窩に伸展するものなど, 眼窩内外に主座を置く腫瘍では, 他科との協力が重要となる. 経頭蓋法では, 眼窩縁, 眼窩壁の骨形成的除去, 上眼窩裂, 視神経管の開放などの頭蓋底手術手技に加え, 機能的および美容的な手技も多々含まれる. 本稿では, 筆者の111例の眼窩ならびに眼窩伸展腫瘍性疾患の経験から代表的手術症例を提示し, 実際の眼窩内腫瘍の診断と摘出術における留意点を述べる.

  • —手術を中心に—
    河野 道宏
    2017 年 26 巻 6 号 p. 430-435
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     聴神経腫瘍を代表とする小脳橋角部腫瘍の手術は最難関の分野の1つであり, 近年では経過観察・手術・放射線治療の3つの治療方針の使い分けや組み合わせが検証される時代に入っている. 聴神経腫瘍の手術において, 腫瘍の最大摘出と神経機能温存という相反する命題を両立させるためには, 持続顔面神経モニタリングを主体とする術中脳神経モニタリング, 解剖に基づいた剝離のテクニックと十分な手術経験が必要である. 本稿では, 三叉神経鞘腫, 頚静脈孔神経鞘腫, 小脳橋角部・頭蓋底髄膜腫, 小脳橋角部類上皮腫の手術のポイントについても概説した.

  • 寺坂 俊介, 山口 秀
    2017 年 26 巻 6 号 p. 436-443
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     第四脳室 (近傍) 腫瘍は良性か悪性か, または小児か成人か, という観点で分類されることが多いが, 手術という側面からは真の第四脳室発生か否か, という観点が重要である. 第四脳室 (近傍) 腫瘍で真の第四脳室発生は上衣腫や血管芽腫, 脈絡叢乳頭腫であり, 第四脳室周囲の小脳や脳幹から発生する腫瘍として髄芽腫や毛様細胞性星細胞腫が挙げられる. 真の第四脳室腫瘍の手術では小脳延髄裂を外側陥凹まで切開する小脳延髄裂到達法が有用である. 一方, 髄芽腫の手術では虫部垂と小脳扁桃の間のuvulo-tonsillar spaceが腫瘍摘出ルートとして適していることがある. 第四脳室腫瘍の手術で重要な解剖学的な指標は下髄帆とそれに連続する脈絡膜であり, 腫瘍が本組織よりも脳室側にあるか, 小脳側にあるかで手術のリスクや腫瘍摘出の手順が異なってくる.

     本論文では鑑別すべき第四脳室 (近傍) 腫瘍のMRI所見, そして実際に当施設で行っている手術の手順とピットフォールに関して詳述する.

原著
  • —多孔質媒体モデルを用いた数値流体力学 (CFD) による検討—
    辻 正範, 石田 藤麿, 古川 和博, 三浦 洋一, 佐野 貴則, 芝 真人, 種村 浩, 梅田 靖之, 安田 竜太, 当麻 直樹, 霜坂 ...
    2017 年 26 巻 6 号 p. 444-451
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     ステント留置による脳動脈瘤内の血行力学的変化を, より短時間で数値流体力学を用いて解析するため, ステント領域を多孔質媒体でシミュレーションし, ステントセルの変化を多孔質媒体の密度変化に置換する手法を試みた. その結果, 動脈瘤の大きさにかかわらずステントセルが縮小するほど, 瘤内の血流低下とうっ滞が生じることが明らかになった. 一方, 血流の複雑性を示すパラメータはステントセルの縮小に伴い小型や中型動脈瘤ではいったん増加した後に減少したが, 大型動脈瘤ではさらにステントセルが縮小すると再増加した. Flow diverterの適応となる大型動脈瘤では, 小型や中型瘤と比べ, ステント留置後の血行力学的変化はより複雑であることが示唆された.

症例報告
  • 神崎 由起, 小林 広昌, 青木 光希子, 安部 洋, 野中 将, 平戸 純子, 鍋島 一樹, 井上 亨
    2017 年 26 巻 6 号 p. 452-458
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/25
    ジャーナル フリー

     頭痛, 視野異常で発症した28歳女性. 右側頭葉に不均一に増強される腫瘍を認めた. 組織学的に, 大部分で異型な星細胞の増殖, 多数の核分裂像, 壊死を呈するglioblastoma様所見を認め, 連続して一部では双極性細胞が2相性パターンを呈し, Rosenthal fiberやeosinophilic granular bodyを伴うpilocytic astrocytomaの所見を認めた. 両者が連続し, BRAF V600Eの変異を含めた共通の遺伝子変異を認めたことからanaplastic featureを伴ったpilocytic astrocytomaと診断した. 術後後療法として, 局所照射 (60Gy, 2Gy/day) を行いtemozolomideとbevacizumabによる化学療法を追加し, 術後1年間再発なく経過している. 組織所見, BRAF V600Eの変異について文献的考察を含め報告する.

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