クモ膜下出血で発症した52歳, 女性.初回脳血管写では脳動脈瘤(AN)を確診するには至らなかったが, 2週後の脳血管写で内頸動脈上壁動脈瘤が増大し, AN前後の血管が狭窄を呈しているのが確認できた.本動脈瘤はわが国に多くみられ, 非常に壁が薄く脆弱性に富み, クリッピング術後でも頻繁に再出血することがすでに報告されている.このため, 素材も含めた手術手技の改善, parallel clippingやGoretex^(○!R)でつぶすように巻きclippingで止める方法, さらにはANをtrapして頭蓋外動脈のbypassをおくなどが行われてきた.本症例ではすでに止血剤(アドナ, トランサミン)を投与していることからANとクモ膜の癒着はかなり強く, ANを剥離する過程で再出血が起こることが予想された.さらに, 動脈解離を病因と捉える報告もあるため, われわれはむしろ上記止血剤を継続することにより動脈解離を血栓化することが可能ではないかと考えた.患者は保存療法のみにより半年後の脳血管写でANの自然消失を認め, 20カ月後の3D-CT angio-graphyでも再発生を認めない.自然消失したANの報告は文献上本例を含めて8例あるが, 他はすべてvertebro-basilar系の解離性動脈瘤であり, anterior circulationの自然消失は本例が最初である.上記の事実は, 速断は慎重を要するが内頸動脈上壁動脈瘤の自然経過の一つを示したものかもしれない.これはまた, 本動脈瘤の特異な病因とも関連するものであるかもしれない.
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