日本臨床免疫学会会誌
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35 巻, 5 号
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訂正記事
  • 庄田 宏文, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2012 年 35 巻 5 号 p. 387
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    訂正:[日本臨床免疫学会会誌 2007年10月号 Vol. 30(5): 398-403]
    総論「関節リウマチとInterleukin-32」に関して,先行して出版された総論“Rheumatoid Arthritis and Interleukin-32 (Shoda H. et al., Cell. Mol. Life Sci. 64, 2671-2679, 2007)”と内容的な類似があり,さらに図1,3,4は同じ図3枚を使用したにも関わらず,誠に遺憾ながら予め転載許可を得る義務を怠り,かつ適切な引用がされていなかった.著者らは,今後本論文の引用がなされる際には,必ず先行論文を引用されることをお願いするものである.
特集:免疫疾患の病理解明と診断の進歩
総説
  • 戸倉 新樹
    2012 年 35 巻 5 号 p. 388-392
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      Th17細胞は感染防御などに重要なリンパ球であり,その制御異常は種々の自己免疫疾患や炎症性疾患を導く.Th17細胞はIL-17とIL-22を産生し,上皮系細胞に働きかけ,サイトカイン,ケモカイン,抗菌ペプチド産生を促す.Th17細胞は種々の皮膚疾患の病態に関与し,乾癬,アトピー性皮膚炎,薬疹が代表的である.乾癬では,ある種の樹状細胞がオートクライン的にTNF-αで活性化され,IL-23を産生し,Th17細胞を維持・活性化し,産生されたIL-17とIL-22がケラチノサイトに働きかけ,STAT3を介して肥厚した表皮の病変を形成する.アトピー性皮膚炎では,Th17あるいは他のIL-17またはIL-22産生細胞が,急性病変から慢性病変への移行を図ると考えられる.薬疹では,Stevens-Johnson症候群,中毒性表皮融解壊死症,acute generalized exanthematous pustulosisでは末梢血でのTh17細胞が増加している.
  • 三宅 幸子
    2012 年 35 巻 5 号 p. 393-398
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      Mucosal associated invariant T (MAIT)細胞は,MR1分子に拘束されT細胞受容体にインバリアントα鎖(マウスVα19 Jα33,ヒトVα7.2 Jα33)を発現するT細胞である.粘膜組織に多く存在し,自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする自然リンパ球として機能すると考えられている.ヒトでは,末梢血αβT細胞の数%を占める大きな細胞集団であり,CD8陽性もしくはCD4陰性CD8陰性の細胞が大部分である.細菌や真菌に反応し,感染症病態に関与することが報告されている.自己免疫病態との関連については,動物モデルを用いた研究で多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎では制御性に働くが,関節炎モデルでは病態悪化に関与する.多発性硬化症患者末梢血では,その頻度が低下し,疾患活動性に相関することがわかった.また,他の自己免疫疾患においても末梢血での頻度の低下がみられ,自己免疫病態への関与が示唆された.
  • 筋野 智久, 金井 隆典
    2012 年 35 巻 5 号 p. 399-411
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      潰瘍性大腸炎およびクローン病に代表される炎症性腸疾患は,近年までCD4+ Tリンパ球における‘Th1/Th2サイトカインバランス'仮説に基づいて疾患が考えられてきた.近年,炎症を抑制する能力を持つ制御性T細胞,Th17細胞集団が登場し,最近ではIBDやIBDモデルを含むさまざまなヒト免疫疾患および動物モデルにおいて制御性T細胞の異常やTh17細胞の増加こそが真の病因ではないかと議論が広まっている.これまで,T細胞は最終的なeffector細胞になるとほかの細胞には変化しないとされていたが,T細胞間でも環境により表現型が変わることがわかり可塑性(Plasticity)という概念が構築されつつある.腸内細菌を含めた周辺の環境によりT細胞が誘導され,それぞれT細胞同士も周囲の環境によりPhenotypeを変えていることが判明しつつある.このような状況の中,炎症性腸疾患の原因が一つの因子でなく,多因子であり,T細胞の関与も複雑であることが判明してきている.これまで得られた結果をもとに炎症性腸疾患におけるT細胞の病態への関与についてT細胞の分化を踏まえて検討する.
  • 西村 孝司
    2012 年 35 巻 5 号 p. 412-423
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      CTLの活性化に焦点をあてた癌ワクチン治療で,癌患者の生存日数は延長したが,未だ期待されたほどの成果は得られていない.この敗因の主な原因として(i)担癌生体における強い免疫抑制,(ii)ヘルパーT細胞活性化を無視した,こと等があげられる.我々は,これまで,担癌生体の免疫抑制,癌エスケープ機構を打破して,癌特異的なCTLを誘導するためには,Th1主導免疫の導入が重要であることを提唱してきた.この基盤研究を臨床研究に結びつけるために,ヒト癌抗原(MAGE-A4とSurvivin)の新たなヘルパーエピトープを同定した.さらに,ヘルパーT細胞とキラーT細胞の両者を活性化できるHelper/killer-hybrid epitope long peptide (H/K-HELP)を開発して,H/K-HELP癌ワクチン治療の第一相臨床研究を開始した.従来のショートペプチドに比べて,ワクチン開始早期に癌特異的抗体(Th1依存的IgG1やIgG3)の上昇や癌特異的Th1, Tc1の活性化が多くの患者で確認された.臨床効果としては,大腸癌の増殖抑制やトリプルネガティブの転移性乳癌の消失が確認された.従ってH/K-HELPロングペプチド癌ワクチンは,革新的次世代癌ワクチンとして期待される.
  • 齋藤 滋, 島 友子, 中島 彰俊
    2012 年 35 巻 5 号 p. 424-428
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      Semiallograftである胎児を許容するために,妊娠時には父親抗原に対するトレランスが存在することが知られていたが,その詳細な免疫学的機構は明らかではなかった.最近の研究により,妊娠時には父親抗原特異的もしくは男性抗原であるHY抗原特異的制御性T細胞が増加していること,精漿のプライミングが父親抗原特異的制御性T細胞の誘導に重要であることが判明している.またヒトならびにマウスの流産や,ヒトでの妊娠高血圧腎症では末梢血ならびに,妊娠子宮での制御性T細胞の減少が報告されている.妊娠初期子宮内膜では,特殊なNK細胞がリンパ球の主要な成分(約80%)を占める.我々は,マウス妊娠子宮ではCD25+ NK細胞が増加すること,CD25+ NK細胞はIL-10やTGF-βを産生すること,本NK細胞は樹状細胞上のMHC class II抗原発現を抑制させ,細胞傷害性T細胞の誘導を抑制し,制御性NK細胞と呼べる性状を有することを見い出した.
      このように妊娠初期において,制御性T細胞と制御性NK細胞は協同的に作用し,胎児を母体免疫系の攻撃から守っている.
症例報告
  • 南家 由紀, 小橋川 剛, 八子 徹, 山中 寿, 小竹 茂
    2012 年 35 巻 5 号 p. 429-432
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      症例は68歳女性.1963年に多関節痛出現し関節リウマチの診断で他医にて加療されていた.2001年にシェーグレン症候群疑い合併と診断された.その後,外転神経麻痺,三叉神経障害出現.さらにぶどう膜炎と多彩な症状を呈した.シェーグレン症候群の神経症状を考えるうえで示唆に富む症例と考え文献的考察を加え報告する.
  • 和田 琢, 秋山 雄次, 横田 和浩, 佐藤 浩二郎, 舟久保 ゆう, 三村 俊英
    2012 年 35 巻 5 号 p. 433-438
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      アバタセプト(ABT)を投与後に肺間質影の増悪がみられた関節リウマチ(RA)の1例について報告する.55歳時にRAおよび間質性肺炎を発症した.間質性肺炎は副腎皮質ステロイド大量療法で改善した.RAは多種の疾患修飾性抗リウマチ薬およびインフリキシマブに対して抵抗性であった.タクロリムス(TAC)が有効であったが難治性の掻痒感と下痢のため中止となった.2ヶ月後,関節炎が増悪したためABTの国内第III相試験に参加した.ABT投与2日目から白色痰が出現.痰培養は陰性であり投与13日後に胸部CTを施行した.2ヶ月前に比して間質影の増悪がみられたため,臨床試験は中止された.関節炎に対しABT投与27日後にプレドニゾロンを2 mg/日から10 mg/日に増量した.ABT投与44日後に胸部CTを再検した結果,間質影は改善傾向を示した.本例の発症機序については,ABTによる間質性肺炎の増悪以外に,TAC中止による間質性肺炎の増悪,RA増悪による間質性肺炎の悪化,ウイルス感染の関与なども考えられた.新規抗リウマチ生物学的製剤であるABT投与後に間質性肺炎が増悪した症例は未だ報告されておらず,これが最初の症例報告である.ABTと間質性肺炎増悪の因果関係は不明であり,このような症例の蓄積が必要であると考える.
  • 栗原 夕子, 奥 佳代, 鈴木 厚, 大曽根 康夫, 岡野 裕
    2012 年 35 巻 5 号 p. 439-445
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
      症例は79歳男性.2009年12月に両膝関節の疼痛・腫脹で発症し,その後,朝のこわばり,両手関節,手指の関節,両肘関節の疼痛,腫脹,両肩関節痛,頚部痛,腰痛,運動制限が出現し歩行困難となり,2010年1月当科受診した.対称性多関節炎,CRP高値を認めたが,リウマトイド因子と抗CCP抗体は陰性であった.非ステロイド抗炎症薬の投与を行ったが関節痛の改善は得られなかった.食欲不振と貧血の精査のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,幽門部に胃癌を認めた.胃癌切除後速やかに多関節炎は軽快しCRP値も低下した.Carcinomatous polyarthritisは,関節リウマチと類似した多関節炎を呈し,しばしば潜在性悪性腫瘍に先行して発症し,悪性腫瘍の治療により軽快する「腫瘍随伴症候群」の一つであり,まれではあるが見逃さないことが重要な疾患であると考え,報告する.
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